Sky Sportsのナタリー・ピンカムのインタビューを受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年5月24日(土) F1モナコGP予選(モンテカルロ市街地コース)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

フェルスタッペンが放った痛烈評「まるでマリオカート」F1モナコ新規定、構造的ミスマッチが露呈

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F1界の宝石と呼ばれる伝統のモナコGPで今年、前代未聞の試みが行われた。トップ10が予選順位そのままでフィニッシュした昨年大会を経て、F1とFIAが下した苦肉の策―それは、3セットのタイヤ使用を義務付ける事実上の「強制2ストップ規定」だった。

「マリオカート」と化したレース

「まるでマリオカートみたいだった。それだったら、クルマにアイテムを取り付けて、バナナでも投げたらいいんじゃないかな!路面が滑るようにね」

78周のレースを5位で終えたフェルスタッペンが、今回の試験的ルールに対する評価を問われて放った言葉には、冗談交じりの皮肉の中に、深い失望がにじんでいた。

新ルールの影響は顕著だった。レーシング・ブルズとウィリアムズは、チームメイト同士で戦略的な連携を取り、一方のマシンが意図的にペースを落として前方にギャップを作ることで、もう一方のマシンのピットストップを有利に進めるという“チームプレイ”を実行した。

その一方で、フェルスタッペンは異なるアプローチを採り、2回目のピットストップを最終ラップまで引き延ばすという大胆な戦略に打って出た。結果としては成果には結びつかなかったが、各陣営が試験的ルールを前提に大きく戦略を揺さぶったことを象徴する動きとなった。

赤旗を待った最終周ピットの賭け

「失うものは何もなかった」とフェルスタッペンは振り返る。その狙いは明確だった。

終盤に赤旗が出れば、タイムロスなしでタイヤ交換が可能となり、逆転のチャンスが生まれる。4位で堅実に終えるか、それとも勝利を狙ってリスクを取るか――世界王者は迷わず後者を選んだ。

「後ろとは大きな差があったし、どのみちポジションは変わらない状況だった。だからこそ、賭けてみる価値はあった。これがモナコなんだ。予選がすべてで、普通の展開なら順位なんて動かない」と語った。

露呈したレッドブルの弱点

今週末のフェルスタッペンとレッドブルは、明らかに苦戦していた。パンピーな路面とキャンバーのある低速コーナーが続くモンテカルロ市街地コースは、長年にわたって指摘されてきたレッドブルの弱点を改めて露呈させた。

予選では、ポールポジションを獲得したランド・ノリス(マクラーレン)から0.7秒以上も遅れた5番手。ルイス・ハミルトン(フェラーリ)が降格ペナルティを受けたことでスタート順位は4番手に繰り上がったが、上位陣との差は明白だった。

「そもそも、前の連中と戦えるようなペースが僕らにはなかった。ついていこうとすると、すぐにタイヤが摩耗してグレイニングも出始めたからね。4位という結果は、今日できた中では最大限だったと思う」

変わらぬモナコの本質

皮肉交じりの痛烈な評価を口にしたフェルスタッペンだが、それでも「3セットのタイヤ使用義務」ルールの意図自体は理解していた。

「ここじゃレースなんてできない。だから、1ストップでも10ストップでも変わらないんだよ。終盤、僕が先頭だった時にはタイヤが完全に終わってたけど、それでも誰も僕を抜けなかった」

このコメントは、F1とモナコGPの根本的な課題を突くものだった。現行のF1マシンは全長5メートルを超え、車重も約800kgと過去最大級に達している。このように大型化した車体に対し、モンテカルロ市街地コースには2台が並んで走行できるだけの十分な幅は存在しない。

たとえ新ルールが導入されようとも、テクニカルでタイトなこの市街地コースの幅が広がるわけではなく、またF1マシンが小型・軽量化されるわけでもない。

「今のF1マシンじゃ、ここではせいぜいF2マシンを抜ける程度だと思う」

新たなルールの導入と、それに対するフェルスタッペンの評価は、現行マシンと伝統的なモナコの舞台との間に横たわる構造的なミスマッチを改めて鮮明に浮かび上がらせるものだった。

しかしながら、よくよく考えてみれば――革新を追求し続けるF1と、伝統を重んじるモナコの間に距離が生まれていくのは、ある意味で必然なのかもしれない。

絶え間なくアップデートされるレギュレーション、巨大化・複雑化するマシン、そして世界中を舞台に拡大し続けるショービジネスとしてのF1。その進化のスピードに対し、モナコの市街地コースは、何十年も変わらぬ景観とレイアウトを守り続けてきた。

どちらが正しい、間違っているという問題ではない。ただ、両者の“理想と現実”のギャップが、少なくとも現段階では埋めきれなくなりつつあるというだけなのだ。


2025年F1第8戦モナコGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がモナコ初優勝を果たし、今季2勝目を飾った。2位はシャルル・ルクレール(フェラーリ)。3位表彰台にはオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が滑り込んだ。

カタロニア・サーキットを舞台とする次戦スペインGPは、5月30日のフリー走行1で幕を開ける。

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