2023年F1ポーパシング制限ルール、チームの反発経て妥協承認…ロールフープ規定も変更
エアロダイナミック・ポーパシング及びバウンシング低減を目的とした2023年のF1レギュレーション変更案が承認された。当初提示されていた案はF1チーム側の反発を経て一部が修正された。
2022年に導入されたグランドエフェクトカーが技術的な理由で空力的な上下動に見舞われた事を受け、ドライバーの健康侵害への懸念から国際自動車連盟(FIA)が介入。技術諮問委員会での議論を通して来季規定の変更が進められてきた。
これに対してレッドブルやフェラーリを筆頭に、ポーパシングが軽微であった一部のチームが変更の必要性に対して異議を唱え、パドックで論争が巻き起こった。10チーム中、6チームが反対の立場を示したと見られている。
8月16日(火)の世界モータースポーツ評議会(WMSC)では、2026年のエンジンレギュレーションに加え、2022年と2023年の技術規定の変更が承認された。
今季の技術ルールに関する改訂は、サマーブレイク明けのベルギーGPからシーズン閉幕のアブダビGPまでを対象にプランク及びスキッドの剛性要件を再定義するもので、来季規定に関しては以下の変更が加えられる。
- フロア・エッジ高を15mm引き上げ
- ディフューザー・スロート高を引き上げ
- ディフューザー・エッジの剛性強化
- より正確な振動測定のために新センサーを追加
上記4項目の内の3つは草案通りだが、フロア・エッジの高さについてはチーム側の反発を経て当初の25mmから15mmへと引き下げられた。FIAが妥協した形と言える。
モハメド・ベン・スレイエムFIA会長はWMSCでの会合を経て「もちろん、競争上の立場の違いによる意見の相違はあるが、この現象によってドライバーが過度の危険にさらされないようにする義務がFIAにあることは明らかだ」と語った。
「25mm」という数字についてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は以前、マシンの「大幅な再設計」が要求される程に大規模で、2023年型F1マシンの空力コンセプト全体に影響を及ぼすと主張。純粋に安全性を追求した結果とは思えない、と疑いの目を向けていた。
今回の変更は安全上の懸念を理由とするものであるため、チームによる投票は行われずFIAが単独で決定したものと思われる。目下進められている2023年型のマシン開発に影響が出るのは必至だ。
WMSCではロールフープに関するルールも変更された。
2023年に向けては、上部形状を丸くする事で横転した際にロールフープが地面に食い込むリスクを下げると共に剛性を引き上げる。
また2024年に向けては、より厳しい負荷に耐えられるよう、ホモロゲーションの際のロールフープ検査の「大幅な見直し」を進めていく。
これは今年のイギリスGPで発生した周冠宇(アルファロメオ)の横転事故に関する技術諮問委員会での調査と検討を経て行われたものだ。
スタート直後、周冠宇のドライブするC42はジョージ・ラッセル駆るメルセデスW13との衝突によって宙に浮き、仰向けになって地面に激突。コースを滑走してグラベルを乗り越え、タイヤバリアとフェンスの間に挟まる形で停止した。
幸いにも周冠宇に怪我はなかったが、このクラッシュでロールフープが破損した。