遊んでいただけ…バルテリ・ボッタス、メルセデスに反旗のファステスト?「少し図々しいが…」とウォルフ代表
「やるな」と言われてなお、バルテリ・ボッタスがF1第13戦オランダGPの最終盤にファステストラップを刻んだのは、メルセデスに対しての積もり積もったフラストレーションから来る反旗の表れだったのだろうか?
マックス・フェルスタッペンから勝利をもぎ取る事が不可能だと判断したメルセデスにとって、ルイス・ハミルトンのファステストラップはレース終盤の重要マターだった。
フェルスタッペンは後続とのギャップ管理に専念しながらも、60周目に1分13秒275の自己ベストを刻んだ。これはハミルトンが保持していたファステストラップと遜色ないタイムだった。
タイヤを使い潰す勢いでフェルスタッペンがプッシュすれば、ボーナスの1ポイントがライバルに奪われる恐れがある。そう考えたメルセデス陣営に残された手立ては、3回目のピットストップによってハミルトンに新品ソフトを与えて、再度タイムを狙いに行く事だった。
そのためには72周のレースの70周目にピットに入る必要があった。1周のウォームアップを経てファイナルラップで最速を刻む…それ以前に動いてしまうとその翌周にフェルスタッペンにピットストップの余地を与えてしまい、ファステストラップを更新される恐れがあった。
確実にファステストを刻むためにはピットストップ後にボッタスの前に出る必要がある。恐らくはそのためにメルセデスは先んじてボッタスをピットに入れたのだろう。レースエンジニアのトニー・ロスはピットの際、ボッタスに「最速を取るつもりはない」と伝えた。
これに対してボッタスは「なぜダメなんだ?どうしてピットに入れたんだ?」と聞き返した。ロスは「予防措置だ。タイヤのバイブレーションのためだ」「ルイスが最後にフリーストップを行う」とだけ答えた。
だがボッタスが第1・2セクターで全体ベストをマークした事から、チーフストラテジストのジェームズ・ヴァウルズが「止めろ」と無線で指示。ボッタスは最終セクターでアクセルを緩めたが、記録された1分12秒549はハミルトンのそれを塗り替えてしまった。
幸いにもその後、ハミルトンが予定通りにタイム更新のラップをスタートさせ、1.452秒上回る1分11秒097を刻んだ事から大きな問題にはならなかったものの、トラフィックに阻まれでもしたら目標を達成できなかった可能性もある。
チーム代表のトト・ウォルフはボッタスの行動について「少し図々しいが理解はできる」と寄り添った。
「チャンピオンシップ争いが非常にタイトであるため、バルテリは常に受け手側に回ってきたからね」
「だが最終セクターで彼は大きくアクセルを緩めた。ルイスが最速ラップを記録するであろう事は明らかだったし、バルテリはそれを理解していた」
「(トラフィックや黄旗等があれば)結果的にポイントを失う事になったかもしれないが、あの時点でバルテリがある程度のフラストレーションを感じていた事も理解しなければならない。何にせよ最終的には全てが上手く収まった」
なお2位フィニッシュとファステストラップポイントで計19点を得たハミルトンは、そうした事態になっていた事はレース後に初めて知ったとして「大した話じゃない」と軽視している。
当のボッタスはレース後、自分はただ「遊んでいた」だけであり、ハミルトンを危機的な状況に追いやろうとしたわけではないと主張した。
「最初の1周目はセクター1と2でプッシュしたけど、ラップの終盤になってスローダウンしろって言われたからそれに従ったんだ。ただ遊んでいただけだよ」
「1点のエキストラポイントが、僕よりもドライバーズチャンピオンシップでタイトルを目指して戦っているルイスにとって重要な事は理解しているし、僕らは一つのチームとして最大限のポイントを獲得する事を目指している」
ジョージ・ラッセルにシートを奪われるとの見方が強まっているボッタスに関しては、早ければ6日(月)にもアルファロメオへの移籍が発表されるのではとの噂も出ている。