ザントフォールト・サーキット
サーキット名 | ザントフォールト・サーキット |
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所在国 | オランダ |
住所 | Burgemeester van Alphenstraat 108, 2041 KP Zandvoort, Netherlands |
設立年 | 1948年 |
全長 / コーナー数 | 4,307m / 14 |
周回数 | 72 |
ピット長 / 損失時間 | 235m / 14秒 |
ターン1までの距離*1 | 247m |
平均速度 | 204km/h |
最高速度 | 328km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 63% |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
変速回数 | 47回/周 |
WEBサイト | www.circuitzandvoort.nl |
SNS |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
ザントフォールト・サーキット(Circuit Zandvoort)は、オランダ王国北ホラントの北海の海岸線に面する有数のビーチリゾート地に位置する常設サーキット。F1オランダGPの舞台であり、2017年まではサーキット・パーク・ザントフォールトと呼ばれていた。
オランダGPが2020年のF1カレンダーに復帰(最終的に1年延期)するに際して大掛かりな改修工事が行われたが、それでもなお、コース幅が狭くグラベルが周りを囲むという点で古き良き雰囲気が残る。
サーキットの設計には1927年のル・マン24時間レースの優勝者である英国出身のサミー・デイビスが関わったが、正式な設計者は明らかではない。なお、日本の鈴鹿サーキットやベルギーのゾルダーの設計などで知られるザントフォールトの初代ディレクター、ジョン・フーゲンホルツの名前を取って、ターン3は「フーゲンホルツ・コーナー」と呼ばれている。
コースレイアウト
様々な速度域の流れるようなコーナー、起伏、グラベルトラップ、バンクターンを備えるため、ドライバーのみならずマシンにとってもチャレンジングなコースと言える。
F1オランダGPで使用されるのは、全14コーナーからなる1周4.307kmのレイアウト。ホームストレートは678m、2本のバックストレートはそれぞれ517mと257mで、比較的短い3本の直線区間を持つ。なおスピードトラップはターン1の95m手前の地点で計測される。
最も有名なターン1は「ターザンコーナー」と呼ばれ親しまれており、これまでに数々のドラマを演出してきた。
砂丘に建設されたサーキット故に、コースサイドにはアスファルトのランオフエリアが存在せず、全て無慈悲な砂利で囲まれている。僅かなミスが致命的な代償に繋がるという意味でも鈴鹿に似ている。
DSRゾーン
36年ぶりのF1復帰となる2021年大会では、ターン10~11及びメインストレートの2箇所にDRS区間が設定された。
ただ、2022年にはオーバーテイクの促進を目的に、メインストレートに限定されていた第2DRS区間が最終ターン14まで拡張された。
DRSゾーン | 検知地点 | DRS開始地点 |
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DRS1 | ターン10のエントリー | ターン10の50m先 |
DRS2 | ターン12の20m先 | ターン13の40m先 |
特徴
ロングストレートが限られている事から、パワーエフェクトやエンジンへの負荷は低く、パワーユニット的には楽な部類のコースで、タイヤに対する負荷もカレンダーの中では平均以下だ。
空力的に言うとハイ・ダウンフォース・サーキットで、ザントフォールトより高いダウンフォースが要求されるのはハンガロリンクとモナコの2箇所しかない。
ピットレーンの長さは235mと、カレンダーの中で最も短い(2022年)。ただ幅が狭く、制限速度が通常の80km/h対して60km/hと抑えられている。
名物の18度バンクコーナー
最も印象的なセクションは、高速で急なバンク角が設けられているターン13及び14だ。インディ500の舞台、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)の約2倍となる18度ものバンクはマシンとドライバーに垂直方向の負荷をかける。
シミュレーションによると現行のグランドエフェクトカーの場合、ターン13を5速195km/h(前季型は5速295km/h)、ターン14を6速220km/hで走り抜ける事が予想される。
同じくバンクが設けられたターン3もチャレンジングだ。ここで上手くトラクションをかける事が、その後に続く高速の連続コーナーでのタイムに大きな影響を与える事になるため、ドライバーはここで高めのラインを採る傾向がある。
追い抜きとアクシデント
メインストレートとバックストレートを除けば、流れるようにコーナーが続くためオーバーテイクは困難だ。そのため予選パフォーマンスが極めて重要となる。
ターン1での追い抜きのためには最終ターン13・14へのアプローチが決定的に重要だ。180度コーナーのターン1はハンガロリンクの第1コーナーに似た形状をしている一方、バンクが設けられているため、追い抜きを仕掛けたり、様々な走行ラインを試す余地がある。
また、第1DRS区間の先に位置するタイトでツイスティなターン11及び、ラップの中で最も速度域が遅い(100km/h)ターン12もまた、限られたオーバーテイクチャンスとなる可能性がある。
年 | 追い抜き | リタイヤ | ピット総数 | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | ||
2023年 | 4回 | 40回 | 2台 | 0台 | 101回 |
2022年 | 5回 | 14回 | 0台 | 2台 | 72回 |
2021年 | 4回 | 24回 | 1台 | 2台 | 29回 |
コースレコード
ラップレコード | 1:11.097(ハミルトン/Mercedes、2021年) |
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コースレコード | 1:08.885(フェルスタッペン/Red Bull、2021年) |
歴史
19世紀から観光産業が盛んだったザントフォールトが、新たな発展のために目をつけたのが自動車レースだった。
1939年6月3日、愛好家たちによって仮設の市街地コースでレースが開催された。オランダ史上初となったこの自動車レースの成功を受け、当時の市長が常設サーキットの建設を決断。街の北にある砂丘がその場所として選ばれたが、第二次世界大戦の勃発により計画は遅れた。
旗振り役だった当時のヘンリ・ファン・アルフェン市長はドイツ軍によって罷免されたが、それでも秘密裏にプロジェクトを進めた。
サーキットはドイツ軍が使用していた通信路を利用して建設され、1948年に完成を迎えた。そして同年の8月7日に最初のレースが開催された。勝者はアジア人初のF1ドライバー、タイ親王のプリンス・ビラだった。
F1世界選手権を初開催したのは1952年だった。その後、延べ4年を除いて、ニキ・ラウダが優勝した1985年まで毎年グランプリレースを開催したが、騒音等の問題からこの年を最後にカレンダーから消滅。復活には36年を要することとなった。
© LAT Photographic/Williams F1 、1985年のF1オランダGPでウィリアムズ・ホンダFW10を駆り6位入賞を果たしたナイジェル・マンセル
36年ぶりの復活
地元出身のマックス・フェルスタッペンの活躍の後押しを受け、2020年より、35年ぶりにF1オランダGPが復活する事が発表された。ただし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で復帰は1年延期となった。
フェルスタッペンが史上最年少でF1デビューを果たした2015年以降、同国に程近いオーストリアGPやベルギーGPに、オレンジ色のユニフォームに身を包んだフェルスタッペン応援団が大挙して押し寄せるなど、オランダ国内におけるF1熱は急速に高まっていった。
2017年、2018年、2019年にフェルスタッペンが参加した「ユンボ・レース・ダーゲン」には10万人ものレースファンが詰めかけた。この成功とフェルスタッペン人気の高まりがフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)の注目を集め、オランダGPの復活に関する話し合いが開始された。
復帰に向けた改修工事
2020年のF1オランダGP開催決定に伴いサーキットは、F1開催要件であるFIAグレード1規格を取得するため、現地市議会等の協力を得て1500万ユーロの予算を確保。トラックと周辺施設を改修した。ターン3とターン14には18度ものバンクが設けられた。
入札を勝ち取ったドローモ社の創業者兼デザイナーで、プロジェクトで再設計を担当したヤルノ・ザッフェーリは、鈴鹿を通してフーゲンホルツの設計哲学を学ぶため、何度か日本に足を運んだこともある人物だった。
フーゲンホルツ・コーナー(ターン3)はフィボナッチ数列に基づく複雑なモデリングを使って再設計された。
F1オランダGP歴代ウィナーとポールシッター
ザントフォールト・サーキットで開催されたF1世界選手権オランダGPの歴代勝者とポールシッター。
開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
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2024 | 優勝 | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 1:30:45.519 |
ポール | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 1:09.673 | |
2023 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダRBPT | 2:24:04.411 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダRBPT | 1:10.567 | |
2022 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブルRBPT | 1:36:42.773 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブルRBPT | 1:10.342 | |
2021 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:30:05.395 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:08.8857 |