
鈴鹿サーキット
サーキットデータ
名前 | 鈴鹿サーキット |
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所在国 | 日本 |
設立年 | 1962年 |
デザイン | ジョン・フーゲンホルツ、塩崎定夫 |
全長 | 5,807m | 18コーナー |
周回数 | 53周 | 時計回り |
ピットレーン長 | 413m| 22.620秒 |
ターン1までの距離*1 | 350m |
平均速度 | 211.358km/h |
最高速度 | 330km/h |
エンジン負荷*2 | | 全開率 : 65% |
ブレーキ負荷 | | 使用率 : 10% |
燃料消費量 | | 1.98kg/周 |
フューエル・エフェクト | | 0.40秒/10kg |
タイヤ負荷 | |
グリップ | |
エアロ重要度 | |
セーフティーカー出動率 | 60% |
ウェット確率 | 16% |
最大高低差 | 40m |
収容人数 | 161,000人 |
WEBサイト | www.suzukacircuit.jp |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
鈴鹿サーキットとは、三重県鈴鹿市にある国際レーシングコースのこと。F1日本GPやスーパーフォーミュラ、鈴鹿8時間耐久ロードレースなどの開催で知られる。レーシングコースの他に、遊園地やホテル等を備える複合レジャー施設で、日本の大手自動車メーカーであるホンダが運営している。
© Formula1-data
設立は1962年。ドイツ人のジョン・フーゲンホルツがデザインした8の字型のレイアウトは当時、先進的と高く評された。以来、小規模な改修を重ねて現在に至る。1980年代に実施された改修が最も大きく、最終コーナー手前にシケインが、そしてデグナーが2つのコーナー分割された。
コースレイアウト
ステアリングを動かさずに済むセクションが殆どなく、ドライバーの腕が試されるレイアウト。DRSゾーンはメインストレートの1箇所のみ。検出ポイントはターン16の50m手前、DRS開始地点はコントロールラインの100mに設定されている。コース前半はマシンの空力効率が、そして後半ではエンジン馬力が要求される。
区間 | 長さ |
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フルコース(2輪) | 5,821m |
フルコース(4輪) | 5,807m |
西コース(2輪) | 3,483m |
西コース(4輪) | 3,475m |
東コース | 2,243m |
メインストレート | 約800m |
西ストレート | 約1,000m |
S字 / Turn3,4,5
世界のトップドライバーがこぞって絶賛するのが、ダンロップコーナーまで続く第一セクターの連続コーナー区間であり、S字コーナーだ(ターン3・4・5)。上空から見るとアルファベットの「S」のような形状であるため、このように呼ばれている。ターン3=70R、ターン4=70R、ターン5=75R。
若干上りながらも左、右、左と続くS字では、適切な走行ラインを見出してリズミカルに曲がっていく事が重要だ。S時の最初のターン3の侵入をミスすると、ダンロップコーナーを抜けるまで立て直すことが出来ない。鈴鹿でのラップタイム向上最大の鍵はS字にあり、と言われる。
逆バンク / Turn6
コーナーは一般には、外側から内側に向けて傾斜(バンク)しているが、ターン6はほどんど勾配がなくフラットであるため、実際に走行すると傾斜が逆(内側から外側に向けて傾斜)であるかのように錯覚してしまう事から、親しみを込めて「逆バンク」と呼ばれている。
ダンロップコーナー / Turn7
7.8%と、鈴鹿の中で最も上り勾配がきついのがダンロップコーナー。130Rと200Rが続く複合コーナーで、F1マシンはアクセル全開でここを駆け抜ける。ダンロップからの脱出の際には、次のデグナーに備えてイン側に寄っておく必要がある。
デグナーカーブ / Turn8,9
8・9コーナーで構成されるデグナー・カーブは、鈴鹿初心ドライバーにとって悪名高いコーナーとなっている。旧東ドイツ出身のエルンスト・デグナーが、鈴鹿開業イベントして行われた1962年のレース中に、この場所で転倒した事から名付けられた。当時は単一コーナーであったが、1987年にRの異なる2つのコーナーを短い直線で繋いだ形状へと改修され、現在の形に至った。ここでクラッシュしたドライバーは数知れない。
“デグナー1つ目”(ターン8)はライン上にバンプがあるためブレーキングが難しい。多くの場合、1つ目の進入をミスして、”デグナー2つ目”(9コーナー)に到達できずにグラベルに突っ込むか、2つ目をうまく脱出できずにコースアウトするか、である。
2020年1月に、ターン8の100m手前の地点からターン9までの路面が再舗装されると共に、この区間の人工芝が取り除かれ、新たに二重縁石が設置された。
特徴
高いエンジン全開率
全18コーナーを要するにも関わらず、鈴鹿のエンジン全開率はF1サーキット全体の平均よりも約30%も高く、1周の内およそ66%はフルスロットル状態となる。時速100㎞以下で通過するものはヘアピン(11コーナー)のみ。とは言え、1周を通して全体的に高いわけではなく、スプーン出口から最終シケインまでの区間によるところが大きい。
300km/h以上の速度で通過する超高速コーナー”130R”を含むそのセクションは約1.5km、直線コースではないものの、F1マシンにとってはエンジン全開の事実上のストレートとなる。
最高速を記録するのは最終シケイン手前。F1マシンは時速320㎞にまで達する。最長のスロットル全開時間は16秒。ブレーキを使う場面は一周の内たったの10%で、負荷はほとんど無い。高速サーキットだけに、高速走行時のマシンバランスが重要。タイムを上げるには、リアのスタビリティと応答性の良いフロントが必要となる。
鈴鹿はエンジンパワーと重量がラップタイムに与える影響が多いトラックであり、概ね10馬力あたり0.19秒/1周、10kgあたり0.20秒/1周の違いを生むとされる。
ドライバーから愛される鈴鹿
世界屈指のテクニカルコースであり、多くのドライバーに愛される。4度のF1ワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルは「神の作りしサーキット」と評し崇めたと伝えられるが、本人は発言した記憶はないとコメント。とは言え、世界で一番好きなサーキットだと断言する。
スーパーフォーミュラで日本滞在経験もあるピエール・ガスリーは、S字区間を含む鈴鹿のセクター1はF1サーキットの中でベストなセクションだと絶賛する。
タイヤへの高い負荷
鈴鹿サーキットはタイヤの摩耗レベルが高く、シーズンで最もタイヤに厳しいサーキットの1つとして知られる。タイヤ負荷が大きいことから、鈴鹿では例年、2ストップ戦略が主流となる傾向にある。
S字や130R等の高速コーナーでは、地面に対して水平方向の力がタイヤを襲う。これによってタイヤの温度は上昇し、発生した熱がゴムの組成を変化させる事で性能が低下。いわゆるサーマル・デグラデーションによってパフォーマンスが低下する。
勝利へのポイント – S字の攻略
鈴鹿での1周のおよそ3分の2は、コーナリングに費やされることになる。つまり、如何にコーナリングに合わせたセットアップができるかが勝利の鍵を握る。S字を制する者が鈴鹿を制す、というわけだ。
© HONDA 鈴鹿サーキットのS字区間
S字攻略の鍵を握るのはターン2。ここを高速で通過することがS字区間のラップタイムを大きく左右する。ターン1からターン9までの連続コーナーをいかにリズムよく駆け抜けられるかが肝。コーナーを一つミスすると、次のコーナーへのアプローチに影響が及ぶため、その後に続く全てのコーナリングが台無しになってしまう。
その昔、ルイス・ハミルトンがマクラーレンでF1デビューした2007年。鈴鹿初走行のハミルトンは、チームメイトであるジェンソン・バトンのタイムに遠く及ばなかった。そこでルイスはジェンソンに教えを請うたらしい。すると、ジェンソンのタイムにグッと肉薄できるようになったそうだ。
鈴鹿はドライバーズサーキットと呼ばれ、特に初心者には手厳しい。初めて走るドライバーにとっては、心優しきベテランドライバーがチームメイトにいることも勝利へのポイントと言えよう。
ピットとセーフティーカー
ピットレーンは413m、ピットストップでのタイムロスは約22秒となる。大雨が降るとコース上に川ができてしまう事、コース幅が狭くバリアが近い事などから、セーフティーカー出動率は60%(過去5年の統計データ)と高い。
オーバーテイク
コース幅が狭いため、オーバーテイクは簡単ではないものの、決して少ないわけでもない。2018年のF1日本GPでは、計55回のオーバーテイクが計測され、その内20回がDRSを使用した追い抜きだった。
主要なオーバーテイクポイントは全部で3箇所。DRS区間の終端であるホームストレート先のターン1と、西ストレートから130Rを経て最初にブレーキを踏む最終シケイン、そして小林可夢偉が開拓したデグナー先のヘアピンの3つだ。
サーキットの場所と航空写真
東に伊勢湾を望む小高い丘陵地帯に位置する。最寄り駅は伊勢鉄道線の鈴鹿サーキット稲生だが、海辺にある近鉄名古屋線の白子駅からバスも出ている。白子駅では、レースを終えたドライバーと遭遇できるチャンスも多い。
コースレコード
決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、2005年にMcLaren MP4-20を駆ったキミ・ライコネンが記録した1分31秒540。一方の”コース・レコード”は、2019年にフェラーリのセバスチャン・ベッテルが予選Q3で記録した1分27秒064となっている。
- ラップレコード
- 1:31.540(ライコネン/Mclaren、2005年)
- コースレコード
- 1:27.064(ベッテル/Ferrari、2019年)
設立の経緯
ホンダが二輪レースであるマン島TTレースへの挑戦を始めた1959年当時、国内には現代的なレース場がなかったためテスト開発に困難をきたしていた。本田宗一郎の「うちで作っちゃれ!」の鶴の一声で、鈴鹿サーキットの建設が始まった。
当初、容易に建設可能な水田地帯が候補地域として挙がっていたが、宗一郎の「田んぼをつぶしてはいかん、米は大事にしろ」との命で、わざわざ丘陵地帯の雑木林を切り開く事になった。本田宗一郎という人物は、思想と哲学を持ち合わせた経営者であった。
建設には現在の価値に換算して約255億円もの巨額の投資が必要だったが、専務である藤沢武夫が自宅を抵当に入れるなどして、推進に向けての意見をまとめたと言われる。
ピットウォーク写真
グランプリのフリー走行前日木曜日に開催されるピットウォーク。普段は間近で見ることの出来ないピットの中を歩き放題イベントとなっている。2010年までは抽選方式で当選者のみが参加できたが、2011年からは会場への先着順となった。
鈴鹿サーキットのピットレーン。多くのファンでごった返しとなる。
ピットで作業するメルセデスGPのクルー。ガレージの設営やマシン作業に従事するチームスタッフを見ることができる。
F1のセーフティーカーだってこの通り。準備万端でレース開始を待つ。
フェラーリのフロントノーズもこの距離で観察できる。ノーズ先端にあるSダクトも確認できる。
フェラーリのピットウォール・スタンド。レース中、チーム首脳陣はこの場所でドライバーやスタッフに指示を出す。