狂乱の87周…ペレスが190戦目で大逆転初優勝!失策と不運で勝利を奪われたラッセル / F1サクヒールGP《決勝》結果とダイジェスト

2020年F1サクヒールGPでトップチェッカーを受けるセルジオ・ペレスと歓喜するレーシングポイントのメンバーCourtesy Of Racing Point

オープニングラップでの優勝候補の脱落、王者ルイス・ハミルトン不在のメルセデスによる失策…狂乱の87周を制したのは、オープニングラップで後方転落を強いられながらも、怒涛の巻き返しを見せたキャリア通算出走190回目を迎えたセルジオ・ペレスだった。

2020シーズンFIA-F1世界選手権 第16戦サクヒールGP決勝レースが12月7日にバーレーン・インターナショナル・サーキットのアウタートラックで開催され、予選5番手のペレスが後続に10秒の差を付けてトップチェッカーを受け初優勝を飾り、F1史上110人目のウィナーとして歴史に名を刻んだ。

3位表彰台にはチームメイトのランス・ストロールが上がり、レーシング・ポイントF1チームとしては初のダブルポディウムを獲得。セレモニーではペドロ・ロドリゲスが勝利を飾った1970年のベルギーGP以来、50年ぶりにメキシコ国歌が鳴り響いた。

1周目の混乱、18番手からの大逆転

ウィニング・ランで涙したキャリア10年目のペレスはトップ3インタビューに応え「言葉がないよ。夢でなければいいんだけど。ずっとこの瞬間を夢見てきた。1周目でレースが終わったと思ったけど、今日のペースは素晴らしく、何を目指さなきゃならないのかは分かっていた。来年の事については今のところ自分の手の中にはないけど、これからもレースを続けていきたい」と語った。

彼処で接近戦が繰り広げられたオープニングラップでは、ストレートの先のターン4へのブレーキングの際にシャルル・ルクレール(フェラーリ)がタイヤスモークを上げ、ペレスの右脇腹に衝突。これを避けるべく回避行動を取ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が行き場を失いタイヤバリアに突っ込んだ。

ルクレールとフェルスタッペンの2列目組は足回りにダメージを負いリタイヤ。クルマを降りたフェルスタッペンはタイヤバリアを蹴り、怒りと悔しさを爆発させた。来季シートがないペレスはピットへと戻り、ミディアムタイヤに交換した。

一件はレース後に審議が行われ、スチュワードはルクレールに非があると判断。次戦最終アブダビGPでの3グリッド降格ペナルティ並びに、2点のペナルティポイントを科す裁定を下した

余計なピットインを強いられ、2周目の時点で18番手に沈んだペレスであったが、タイヤをケアしながら着々と順位を上げていき、メルセデス勢のまさかのドラマを経て64周目にトップに浮上。勝利を手にした。

2位はルノーのエステバン・オコン。こちらもキャリア初の表彰台に上がった。終始ストロールとポジションを争うも追い抜きあぐねていたオコンは、42周目にアンダーカットを狙ってピットイン。レーシングポイントも翌周にストロールをピットインさせオコンの鼻先ひとつ前でコースに送り出したが、1周分のタイヤの熱入れのアドバンテージを活かし、オコンがターン4でオーバーテイク。これが2位と3位を分ける結果となった。

ライバルのマクラーレン勢が、カルロス・サインツ4位、ランド・ノリス10位に留まったため、大量ポイントを稼ぎ出したレーシングポイントが総得点を計194に伸ばし、ウォーキングのチームからコンストラクター3位の座を奪還した。

エースを失ったホンダエンジン勢はアレックス・アルボンが6位、ダニール・クビアトが7位で入賞した一方、ピエール・ガスリーは残り2周というところでポイント圏外へと引きずり落とされ11位でフィニッシュした。

メルセデスがミス…涙を飲んだラッセル

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で王者ルイス・ハミルトン不在の中、チャンピオンチームのメルセデスは不運と失策、そしてミスによりジョージ・ラッセルの初優勝を奪う形となり、また、1-2フィニッシュのチャンスを自らドブに捨てる事となった。

2番グリッドのラッセルは、1周目にポールシッターのボッタスを交わしてトップに浮上。その後は2秒程度のギャップを保ち、一度も近寄らせる事なくレースを進めていたが、62周目にジャック・エイトケン(ウィリアムズ)が最終コーナーでクラッシュ。脱落したフロントウィングの回収のためにバーチャル・セーフティカーが導入されたのを機に、どん底に突き落とされた。

フリーストップが得られる位置につけていた1-2体制のメルセデスは、安牌を切って2台をピットインさせるも、ラッセルは無線トラブルの影響でボッタス用のフロントタイヤが取り付けられてしまい、再度のピットインを余儀なくされた。またボッタスはタイヤの装着に手間取ったことで27.4秒のタイムロス。更にこのタイヤは使い古したオールドセットであった。

タイヤ不正使用…メルセデス陣営で一体何が?

不運であったとは言え、結果的には失策とも言えるこの致命的な一件により、ボッタスは4番手、ラッセルは5番手に後退するも悪夢は終わらない。

ペレスを先頭として69周目にリスタートを迎えると、鬼神と化したラッセルはターン8でボッタスをオーバーテイクして4番手に浮上。タイヤの履歴が全く異なるとは言え、脱帽の動きだった。

表彰台を射程圏内に捉えると、続いてターン1でストロールを交わし、その翌周には難なくオコンを攻略して2番手にまで挽回。トップを走るペレスにターゲットを切り替えたが、残り10周というところでスローパンクチャーに見舞われ再びピットに。15番手にまで転落した。

投げ出したい気持ちもあっただろうが、結局その後も手を緩める事はなく9位でフィニッシュ。悔し涙のキャリア初入賞を果たした。ボッタスは8位でクルマを降りた。

タイヤ不正に関しては審議が行われたものの、スチュワードは諸事情を考慮し失格処分とはせず、チームに2万ユーロの罰金を科す裁定を下した


第16戦の舞台は、国際レースシリーズ初登場となったバーレーン・インターナショナル・サーキットのアウタートラック。1995年にTIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)で開催されたパシフィックGPの83周を上回るF1史上最多周回となる87周で争われた。

決勝は、日本時間7日(月)2時10分にブラックアウトを迎え、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温21℃、路面24℃、湿度56.7%のドライコンディションで開始された。

なお決勝を前にしては、ノリスが今季4基目となるICE(内燃エンジン)及びターボチャージャーへと交換。ペナルティを受けて19番グリッドに着いた。また、予選を前に今季3基目のCE(コントロール・エレクトロニクス)及びES(バッテリー)の交換を受けたロマン・グロージャンの代役、ハースF1チームのピエトロ・フィッティパルディは予選20番手であったため、ポジション変わらず最後尾に着いた。

1周目のクラッシュによりリタイヤした2台に続き、ウィリアムズのニコラス・ラティフィも55周目にコース脇にクルマを停めた。車両回収のためにバーチャル・セーフティーカーが導入された。

2020年F1第16戦サクヒールGP決勝リザルト

Pos No Driver Team Laps Time PTS
1 11 セルジオ・ペレス レーシングポイント 87 1:31:15.114 25
2 31 エステバン・オコン ルノー 87 +10.518s 18
3 18 ランス・ストロール レーシングポイント 87 +11.869s 15
4 55 カルロス・サインツ マクラーレン・ルノー 87 +12.580s 12
5 3 ダニエル・リカルド ルノー 87 +13.330s 10
6 23 アレックス・アルボン レッドブル・ホンダ 87 +13.842s 8
7 26 ダニール・クビアト アルファタウリ・ホンダ 87 +14.534s 6
8 77 バルテリ・ボッタス メルセデス 87 +15.389s 4
9 63 ジョージ・ラッセル メルセデス 87 +18.556s 3
10 4 ランド・ノリス マクラーレン・ルノー 87 +19.541s 1
11 10 ピエール・ガスリー アルファタウリ・ホンダ 87 +20.527s 0
12 5 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 87 +22.611s 0
13 99 アントニオ・ジョビナッツィ アルファロメオ 87 +24.111s 0
14 7 キミ・ライコネン アルファロメオ 87 +26.153s 0
15 20 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 87 +32.370s 0
16 89 ジャック・エイトケン ウィリアムズ・メルセデス 87 +33.674s 0
17 51 ピエトロ・フィッティパルディ ハース・フェラーリ 87 +36.858s 0
NC 6 ニコラス・ラティフィ ウィリアムズ・メルセデス 52 DNF 0
NC 33 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 0 DNF 0
NC 16 シャルル・ルクレール フェラーリ 0 DNF 0

コンディション

天気晴れ
気温21℃
路面温度24℃
周回数87

セッション概要

グランプリ名 F1サクヒールGP
レース種別 決勝
レース開始日時

サーキット

名称 バーレーン・インターナショナル・サーキット
設立 2004年
全長 5412m
コーナー数 15
周回方向 時計回り

F1サクヒールGP特集

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