
アルピーヌF1代表辞任劇、弟の逮捕・起訴で新展開―犯罪収益法違反容疑
アルピーヌF1チームの代表を務めていたオリバー・オークスの電撃辞任が、5歳年下の弟であるウィリアム・オークスの起訴直後に行われていたことが明らかになり、波紋が広がっている。
英紙『The Telegraph』などの報道によると、ウィリアム・オークスは2025年5月1日、イングランド中部のシルバーストン・パーク地区で「多額の現金」を所持していたところを警察に拘束された。
シルバーストン・パークはFIA-F2選手権などに参戦するレーシングチーム「ハイテックGP」の本拠地であり、ウィリアム・オークスは兄オリバーとともに、同チームの役員を務めている。
「犯罪収益法」違反容疑で捜査
ロンドン警視庁の発表によると、ウィリアム・オークスは2日、「犯罪収益の移転(transferring criminal property)」の容疑で起訴され、3日にはノーサンプトン治安判事裁判所に出廷後、勾留された。
2002年に制定されたイギリスの犯罪収益法(Proceeds of Crime Act)において、この「犯罪収益の移転」はマネーロンダリングの構成要件の一部またはその手段と見なされる行為とされている。
報道によると、オリバー・オークスは先週末のマイアミGP終了後にドバイへと渡航したものの、現在の所在は確認されていないという。
ロシア資本との関係性
オークス兄弟は共に、ジュニアカテゴリーの名門チーム、ハイテックGPの取締役を務めている。登記簿情報によれば、オリバーは同社の過半数以上の株式および議決権を保有しており、事実上の経営権を握っている。
2022年当時、同チームの75%の株式は、ロシアの大富豪ドミトリー・マゼピンが保有していた。マゼピンはロシア大統領ウラジーミル・プーチンとの親密な関係で知られており、息子のニキータ・マゼピンが2016年にF3に参戦する際、同チームへ出資した。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻のわずか9日前、オリバー・オークスはハイテックの全株式を取得。この際、自身が新たに設立した「ハイテック・グローバル・ホールディングス」を通じ、マゼピンが経営するキプロス法人「バートン・マネジメント社」から株式を引き継いだ。
侵攻後、マゼピンはEUおよびイギリスから制裁対象として指定されており、こうした資本移動が極めて繊細な時期に行われていたことが改めて注目されている。一方で、今回のウィリアムの逮捕が、この取引と関連しているかどうかは明らかにされていない。
辞任とドライバー人事の動き
アルピーヌはオークスの辞任理由について「個人的な事情」とのみ説明しており、具体的な背景には言及していない。ただし、辞任がウィリアムの起訴からわずか3日後に行われたことから、その関連性が取り沙汰されている。
なお、オークスの辞任発表直後に、ジャック・ドゥーハンの降格とフランコ・コラピントの5戦限定起用が発表されたことから、オークスの辞任はドライバー人事を巡る内部対立によるものとも見られていた。
だが、新たに実権を握ったエグゼクティブ・ディレクターのフラビオ・ブリアトーレは、声明の中で「辞任はチームとは無関係であり、個人的な理由による」と強調。一連の報道に対し、内部対立説を明確に否定している。