インディ500セレモニーでスピーチするフェルナンド・アロンソ
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カンペ持参で式典登壇したアロンソ「次のインディ500では琢磨のエンジンをもらう」

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こんなにも険しく、緊張した面持ちのフェルナンド・アロンソを今までに見たことがあったであろうか?世界中が注目する中、壮絶なバトルが繰り広げられた第101回インディ500を終えた翌日の現地時間29日、インディアナポリス市内で行われたセレモニーイベントに全33人のドライバーが出席した。

“インディ500ビクトリー・バンケット”と呼ばれるお祝いイベントでは、33人のドライバー全員がそれぞれスピーチをするのが習わし。緊張しているのか、2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソは険しい顔つきで舞台に登壇、カンニング用のカンペを持参してスピーチに臨んだ。

冗談を交え会場の笑いを取るアロンソ

「こんにちは、カンペを持ってきたんだ。スピーチは今まで人生で1回か2回しかやったことないから、失敗しないためにカンペを用意しなきゃって思ってね」と語り、アロンソはのっけから会場の笑いを取ってみせた。

オーバルコース初体験となったアロンソは、5月3日にプライベートテスト行って以降、非常に慌ただしい日程をこなしてきた。インディアナポリス・モーター・スピードウェイはほぼ楕円形のサーキットであり、マシンのハンドルは常に左に切り続ける状態となる。右に左にステアリングを操作し続けるF1とは勝手が違う。

「インディ500に参戦すると決めてからの数週間は本当に素晴らしい日々だったし、全ての瞬間を楽しむことができたよ。マシンが止まった時はそうじゃなかったけど…。(会場笑)まぁ、コースのどちら側にマシンを止めれば良いのかは明らかだったけどさ。ここ3週間はずっとステアリングは左を向いていたからね」

一時はリードラップを刻んでいたアロンソだが、残り21周のところでエンジンブロー、優勝争いの可能性が高かっただけに非常に悔やまれるリタイヤとなってしまった。たまには顔を上げるのかと思いきや、カンペを読むためにほとんど下を向いたまま話し続けていたのが印象的であった。F1でのアロンソは常に自信に満ち溢れており、中々このような姿を見ることはない。

アロンソは、あるカテゴリの頂点を極めたドライバーは、他のモータースポーツカテゴリでも自身の能力を証明するべきだと考えており、これは自分がインディ500に参戦しようと思った理由の1つだと語る。参戦を決めたもう一つには、F1とインディカーという2つのモータースポーツ界を1つに繋げたいとの想いがあったという。

「僕らが(マクラーレン・ホンダとアロンソ)レースへの参戦を決めたのには、異なる2つのモータースポーツの世界をリンクさせるという目的があったからなんだ。僕はこのことを実現できたと信じてる」

「新しい家族ができた」

スピーチの終盤は、今回の参戦を実現させてくれたマクラーレン・ホンダやアンドレッティ、オーバル初挑戦を全力で支えてくれたチームの面々などに対する感謝の言葉で溢れていた。

「すべては、マクラーレン・ホンダとアンドレッティが僕にこの素晴らしいチャンスを与えてくれたことから始まった。マイケルは僕を本当に温かく迎えてくれたし、チームメイトのみんなのおかげで自宅にいるみたいな感じだった。僕はここで新しい家族ができたと言い切れる。素晴らしいチームだよ。ザクとマクラーレン・ホンダのみんなにもお礼を言うよ。彼らは多大な努力とエネルギーを費やしてくれた。今回のプロジェクトに全てをかけてくれたんだ」

「チームメイトのみんなにもお礼を言いたい。ライアン、マルコ、アレックス、ジャック、そしてタク、色んな種類の秘訣を教えてくれ僕の面倒を見てくれた。タク、今回の勝利ほんとうにおめでとう。でも次回は僕が君のエンジンをもらうよ。(会場爆笑)君はインディカーにおける僕のお気に入りの日本人ドライバーだよ。(会場大爆笑)」※今回のインディ500に参戦した日本人は琢磨のみ、琢磨も大笑いしていた。

「他のドライバー全員にも感謝してる。素晴らしい人々と出会えた事を本当に嬉しく思っている。みんなとんでもない才能の持ち主だよ。ここに来る前たくさんの映像をYoutubeで見たけど、実際に走ってみて、みんなから本当に多くの事を学んだんだ。この学びは、僕をドライバーとしてさらに成長させてくれた。オーバルでのレースってだけじゃなくてね。だから、みんな、本当にありがとう」

同式典での佐藤琢磨のスピーチについては、【琢磨セレモニースピーチ】インディ500優勝が決まった瞬間の”絶叫”を謝罪を参照されたい。琢磨はアロンソと違い、カンペなしで見事なスピーチを披露している。