2020年F1ロシアGPのFIA金曜記者会見に出席したホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクター
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ホンダF1、フェルスタッペンのPUトラブルの根本原因を特定「2度と起こしてはならない問題」

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ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは、ムジェロのオープニングラップでマックス・フェルスタッペンを襲ったパワーユニット(PU)のトラブルの根本原因を特定した事を明かした。

フェルスタッペンはPUトラブルためにモンツァで行われたイタリアGPでのリタイヤを余儀なくされ、続くムジェロでのトスカーナGPでもスタート直後にまたも不具合に見舞われた。

フィニッシュラインを駆け抜ける事なく終わった失意のレースから2週間が経ち、ロシアGPのFIA金曜公式会見に出席した田辺TDは、トラブルの根本原因を突き止めた事を明かした。

「あまり詳しくは申し上げませんが、非常に複雑な問題であり、多くのパラメータが絡むものでした。レースを終えて、データを分析して何が起こったのか理解しようと努めました」と田辺TDは説明する。

「我々は問題の根本原因を特定し、今回のレースに向けて問題を解決するための対策を講じました。2度と起こしてはならない問題です」

なおこれは「非常にレアな状況」において発生した特異的なトラブルとの事で、田辺TDは、同様の問題はアルファタウリ・ホンダの2台には発生しておらず、また、2015年のF1復帰後初めて遭遇した問題だと明かした。

これとは別件ながらもムジェロでの予選では、同じホンダ製PU「RA620H」を搭載するアルファタウリのピエール・ガスリーが、フィニッシュラインに至る前の段階でERS(回生エネルギー)を使い果たしたとしてパワーロスを訴えていたが、遡ること2週間前のスパでの予選においても、フェルスタッペンが同様の不満を訴えていた。

田辺TDはこの件について問われると次のように返し、これはハードウェアやソフトウェアの問題ではなく、スロットルワークが想定とは異なったために発生したものだと説明した。

「それはスロットルの操作の仕方が若干異なっていたために起きたものです。我々はラップで使用できるエネルギー量を最大限に確保します。フィニッシュラインを過ぎてなおエネルギーが残っているとするならば、それはパフォーマンスに伸び代があるという事を意味します」

「そのため我々は如何にしてエネルギーを使い切るかを考えるわけですが、ラップのコンディションが(想定とは)少し違っていたために(ドライバーのスロットルワークが変わり)、そうした自体が起きたわけです」

なおホンダF1は、年間のパワーユニット(PU)運用計画に基づいてソチでの週末に、アレックス・アルボン以外の3台に今季3基目となる新たなICE(内燃エンジン)、ターボチャージャー、MGU-K、MGU-Hを投入しているが、これは前戦ムジェロでのフェルスタッペンのPUトラブルに関連するものではなく、あくまでもスケジュール通りの交換だとしている。

ネガティブなニュースでかき消され気味となったが、モンツァでのガスリーの劇的勝利はホンダに「V6ハイブリッドターボ時代において、複数チームで優勝を果たした唯一のPUサプライヤー」という誉れ高い称号を与えるものだった。

「ガズリーのモンツァでの勝利は本当に嬉しいものでした。我々は日本のスーパーフォーミュラでガスリーとの仕事を始め、その後、共にイタリアへと渡りトロロッソと新しい旅をスタートさせました」と田辺TDは振り返る。

「彼は非常に力強いレースを披露し、レースディスタンスの半分でラップをリードしました。それは我々の胸の内の情熱を強く揺さぶるものでした。日本のファンは彼の優勝と表彰台を目にして本当に喜んでいました」

「我々はパフォーマンスを向上させるべく両チームと共に懸命に作業に取り組みプレッシャーをかけ続けていきます」

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