エイペックス通過義務なし…ハミルトンの動きは追い抜きに関するFIA内部指針に沿っていた、とメルセデス
メルセデスの最高技術責任者を務めるジェームズ・アリソンは、F1イギリスGPの1周目の事故の際のルイス・ハミルトンの動きは追い抜きに関するFIAのガイドラインに沿ったものであり、10秒という罰則は「厳し過ぎる」との考えを示した。
マックス・フェルスタッペンがDNFへと至ったシルバーストンでのインシデントについて、同グランプリでスチュワードを務めたエマニュエル・ピロを含む5名の審判団はハミルトンに「主な過失があった」との判断から、10秒ペナルティーと2点のペナルティポイントを科す裁定を下した。
その根拠としてスチュワードは、ハミルトンが「僅かに後方、かつイン側」でコーナーに進入し「コーナーのエイペックスに達しないラインを走行し、イン側にはスペースが空いていた」と指摘した。
アリソンはレース後恒例のビデオデブリーフィングの中で次のように述べ、FIAの内部指針においてはイン側からのオーバーテイクの際にエイペックスを通過する事は要求されておらず、コーナーに達した際に横に並んでさえいれば良いとして、ハミルトンがポジションを讓る必要はなかったと主張した。
「事故を経て再スタートを前に我々は、オーバーテイクの権利と非権利に関するスチュワード向けのFIA内部ガイダンスに着目し、実際にスチュワードがそれらを読み、それに従っているかどうかを確認しようとした」
「なぜなら我々としては、ルイスのドライビングは間違いなくFIAの追い越しガイダンスに沿ったものだと考えていたからだ」
「コーナーのイン側からのオーバーテイクについてガイダンスは、十分に横に並んでいることを要求しているのみで、(アウト側の車両より)先行する事は要求していない」
「ルイスはフェルスタッペンの車両の真ん中よりもかなり前方にフロントアクスルを出しており、その意味において十分に横に並ぶという要求を満たしていたのは確かだった」
アリソンは更に、追い抜きに際して「エイペックスに達しなければならないという義務」はなく「クルマ全体を相手のクルマよりも前に出す必要がない事を理解していない人達の気持ちも分かる」とした上で「スチュワードの文書を見れば、ルイスは何も間違っていなかったと思う」と付け加えた。
スチュワードは裁定の根拠に事故発生の際の速度を挙げていないが、アリソンは「コプス(ターン9)が高速コーナーであろうと低速コーナーであろうと違いはないと思う」とも語り、全員が自分の見解に賛同してくれるとは思っていないとした上で「個人的には厳しい判定だったと思う」と強調した。
なおアリソンの主張が事実かどうかについて我々は確認できていない。ドライバーのオーバーテイクに関する公開規則としてはFIA国際スポーツコード付則L(2021年7月12日改訂版)があるが、これには当該記載はなかった。内部向けという事で非公開と思われる。