
まるで我が子のように…ハミルトン父が明かす涙のハジャーを抱きしめた理由―その想い、贈った言葉
ルイス・ハミルトンの父アンソニーが、今にも崩れ落ちそうなアイザック・ハジャーを抱きしめ、温かい言葉を贈ったのは、自身の経験を通してその痛みが分かるからこそ、「父親のような気持ち」で寄り添いたいと感じたためだった。
2025年のF1オーストラリアGPでデビューを迎えたハジャーは、フリー走行では全ルーキー中最速のペースを記録し、予選でもQ3進出にあと一歩の11番手を獲得するなど、順調な滑り出しを見せていた。
だが、レース当日は雨に見舞われ、厳しいコンディションの中でフォーメーションラップに向かった際、ターン2でスピンを喫してバリアに衝突。その結果、正式な決勝出走記録が残らない「DNS(Did Not Start)」に終わった。
長年夢見てきたF1デビューの瞬間を目前に、どん底に突き落とされたハジャーは、涙を堪えきれずにパドックへと戻っていった。その姿に胸を打たれ、いち早く駆け寄って抱擁したのが7度のF1ワールドチャンピオンの父アンソニー・ハミルトンだった。
彼の痛みが分かるからこそ—アンソニーの想い
この感動的な瞬間について、ハミルトンはフランスのテレビ局Canal+に対し、次のように語っている。
「アイザックの事故を見た瞬間、心が張り裂けそうになり、ただただ彼が不憫でならなかったんだ。彼のような若いドライバーが、8歳の頃から夢見てきたF1デビュー戦で、こんな形になってしまうなんて。それがどれほど辛いことか、私にはよく分かるからね」
「F1にたどり着くまでには途方もないプレッシャーがある。そして、ついに迎えた初レースのグリッドに着くことすらできなかった。彼にとっては世界で最も辛い瞬間だったはずだ。だから、ただ彼を抱きしめたかった。自分の息子を慰めるようにね」
自身の経験からくる「親」としての共感
アンソニー・ハミルトンは、息子ルイスのレース活動を支えるために仕事を辞め、活動資金を捻出するために複数の職を掛け持ちし、さらにはマネージャーとしてジュニアカテゴリー時代からキャリアをサポートするなど、彼の成功のために人生を捧げてきた。
幼少期から夢を追い続ける若いドライバーが直面するプレッシャーや挫折の重さを誰よりも理解している彼にとって、ハジャーの失意は他人事ではなく、同じ親の立場として寄り添わずにはいられなかった。
creativeCommons Paul Williams
ルイス・ハミルトン(マクラーレン)とその父アンソニー・ハミルトン、2008年12月14日
イギリスの「Sky Sports」とのインタビューでアンソニー・ハミルトンは、ハジャーにどんな言葉をかけたのかを明かした。
「彼が気の毒で、とにかく会いに行って『頭を上げて堂々と歩け』って伝えたかったんだ。『次があるから』ってね。そう伝えなきゃって思ったんだ」
「彼は本当に素晴らしいドライバーだ。私はそう信じている。今回のレースだけで彼の全てが決まるわけじゃない。今後さらに素晴らしいものを見せてくれるはずだ」