レッドブル・ホンダ及ばずメルセデス完勝、最優秀賞は怒涛の追い抜き重ねたガスリー / F1ベルギーGP《決勝》結果とダイジェスト
2020シーズンFIA-F1世界選手権 第7戦ベルギーGP決勝レースが8月30日に行われ、メルセデスのルイス・ハミルトンが僚友バルテリ・ボッタスを8.448秒引き離して今季5勝目、通算89勝目を挙げた。
3位表彰台にはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが滑り込んだ。ハードタイヤに履き替えた第2スティントの序盤では、一時メルセデスに迫ろうかというペースを示したものの、全体としてはブラック・アローの2台と勝負出来るような速さはなく、3位が妥当といった展開であった。
トップ3に続いたのはルノーの2台だった。ダニエル・リカルドは終始、上位3台に次ぐペースを刻み、タイヤマネジメントの面でも実に印象的な仕事をやってのけた。ファイナルラップでは33周走り込んだハードタイヤで1分47秒483のファステストラップをマーク。4位でチェッカーフラッグを受けると共に、ボーナスの1ポイントを加算した。5位にはエステバン・オコンが続いた。
オープニングラップでは、リカルドとフェルスタッペンの激しい3番手争いがファンをエキサイトさせた。リカルドはエアロ効率の高い車体を活かしてケメルストレート・エンドでサイドバイサイドに持ち込んだものの、フェルスタッペンは意地のドライビングで防戦。オーバーテイクを許さず3番手をキープした。
5番グリッドからスタートしたアレックス・アルボンは、打倒リカルドに照準を合わせてレースに臨んだものの、これを脅かすような場面は一度も作れず、ファイナルラップのケメルストレートでオコンに抜かれ6位に後退した。
モンツァ、ムジェロへと続く高速3連戦の初戦は、日本時間30日(日)22時10分にブラックアウトを迎え、1周7,004mのコースを44周する事で争われた。降雨が懸念されたものの日曜の現地スパは晴れ、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温18℃、路面30.8℃、湿度58.3%、気圧962.4hPaのドライコンディションで開始された。
レース前のレコノサンスラップでは、自己最高位となるスパ7番グリッドからレースをスタートする予定であったカルロス・サインツ(マクラーレン)が、無線を通して「何かが壊れた」と報告。その後、ピットへと戻りヘルメットを脱いだ。チームはエキゾーストに問題が発生したとして、サインツの欠場を発表した。
国歌斉唱セレモニーの前には、昨年のFIA-F2選手権スパで事故死したアントワーヌ・ユベールを偲んで、1分間の黙祷が捧げられた。各マシンは、ユベールのイニシャルと車番をあしらった「#AH19」のロゴを付けてレースに臨んだ。車番19はF2で永久欠番として扱われる。
公式タイヤサプライヤーのピレリは中間レンジのC2からC4までのコンパウンドを投入。レースでは最低2種類のコンパウンドを使用する義務があり、大部分がハードタイヤを第二スティントに投入した。今季は新型コロナウイルスの影響で各ドライバーの手持ちタイヤは固定制となり、ハード2組、ミディアム3組、ソフト8組が配分されている。
Q3進出組は、フロントローのメルセデス勢と3番グリッドのフェルスタッペンがミディアムでスタートし、10番手以降のマシンとしては13番グリッドのシャルル・ルクレール(フェラーリ)がソフト、12番グリッドのピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が唯一ハードを履き、他はミディアムをスタートタイヤに選んだ。
大きなアクシデントは11周目の1回のみだった。ターン13を抜けた先の地点でアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)が単独クラッシュを喫し、車体から外れたホイールが後続のジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)に激突。幸いにも2人に怪我はなかったが、2台は早々に姿を消した。
事故処理のためにセーフティーカーが導入された。このタイミングでガスリーとセルジオ・ペレス(レーシングポイント)を除く全車がピットストップを実施。1ストップ狙いでハードタイヤに履き替えた。ハミルトン、ボッタス、フェルスタッペンのトップ3の並びは変わらず、4番手にガスリーが、5番手にペレスが続いた。
戦略が噛み合わなかったにも関わらず、この日のガスリーは誰よりも輝いていた。
ハードをスタートタイヤに選択したガスリーは第1スティントを引っ張る作戦であったため、序盤でのセーフティーカーは大きな痛手となった。隊列のギャップは整理され、フレッシュタイヤを履く後続のリカルドとアルボンに相次いでポジションを許したガスリーは、6番手を走行していた26周目にピットイン。ミディアムに履き替えてコースに戻ると、ポイント圏外の16番手にまで転落した。
だがガスリーはこの後、怒涛のオーバーテイクを重ねてポイント圏内へと上り詰めていく。
ますはニコラス・ラティフィ(ウィリアム)を料理すると、ケビン・マグヌッセンとロマン・グロージャンのハース勢と交わし、フェラーリのセバスチャン・ベッテルも難なくパス。34周目に、フェラーリエンジン勢最上位を走行していたキミ・ライコネン(アルファロメオ)を捉えた。
ピットはダニール・クビアトに対してガスリーを前に行かせるよう指示。最終シケインでクビアトの前に出て10番手にまで浮上したガスリーは、前を行くレーシングポイントに照準を合わせて狩りを開始。セルジオ・ペレスとランス・ストロールを刈り込んで見事8位でチェッカーフラッグを受けた。世界のF1ファンたちは、この日のDriver of the Dayにガスリーを選んだ。
イタリアの代表としてアルファタウリ・ホンダが光り輝いた一方、スクーデリア・フェラーリは悪夢のような1時間50分を過ごした。セーフティーカー明けの15周目、カスタマーチームのライコネンが、ケメルストレートエンドで本家フェラーリのセバスチャン・ベッテルを交わすという衝撃的な光景が広がった。
最終的に、ベッテルもルクレールもライコネンからポジションを奪う事は出来ず、フェラーリエンジン勢最上位はライコネンの12位という結果となった。16位のラティフィを除き、12位以下の完走車両は全てフェラーリエンジン勢であった。
2020年F1第7戦ベルギーGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
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1 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 44 | 1:24:08.761 | 25 |
2 | 77 | ボッタス | メルセデス | 44 | +8.448s | 18 |
3 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 44 | +15.455s | 15 |
4 | 3 | リカルド | ルノー | 44 | +18.877s | 13 |
5 | 31 | オコン | ルノー | 44 | +40.650s | 10 |
6 | 23 | アルボン | レッドブル | 44 | +42.712s | 8 |
7 | 4 | ノリス | マクラーレン | 44 | +43.774s | 6 |
8 | 10 | ガスリー | アルファタウリ | 44 | +47.371s | 4 |
9 | 18 | ストロール | レーシングポイント | 44 | +52.603s | 2 |
10 | 11 | ペレス | レーシングポイント | 44 | +53.179s | 1 |
11 | 26 | クビアト | アルファタウリ | 44 | +70.200s | 0 |
12 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 44 | +71.504s | 0 |
13 | 5 | ベッテル | フェラーリ | 44 | +72.894s | 0 |
14 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 44 | +74.920s | 0 |
15 | 8 | グロージャン | ハース | 44 | +76.793s | 0 |
16 | 6 | ラティフィ | ウィリアムズ | 44 | +77.795s | 0 |
17 | 20 | マグヌッセン | ハース | 44 | +85.540s | 0 |
NC | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 9 | DNF | 0 |
NC | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 9 | DNF | 0 |
NC | 55 | サインツ | マクラーレン | 0 | DNS | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
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気温 | 18℃ |
路面温度 | 30.8℃ |
セッション概要
グランプリ名 | F1ベルギーGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | スパ・フランコルシャン |
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設立 | 1921年 |
全長 | 7004m |
コーナー数 | 19 |
周回方向 | 時計回り |