
元F1ダニエル・リカルド、現役引退を発表―フォード・レーシングのアンバサダーとして第二の人生へ
元F1ドライバーのダニエル・リカルドが現役引退を正式に表明した。F1でのラストランとなった2024年のシンガポールGPからおよそ1年、36歳のオーストラリア人グランプリウィナーは、フォード・レーシング(旧フォード・パフォーマンス)のグローバル・アンバサダーに就任する。
「僕にとってレースの日々は過去のものになったけど、クルマをはじめ車輪の付いたものへの愛情は変わらない。だからこそ、フォードと組んでグローバル・アンバサダーになれることを誇りに思う」とリカルドは述べた。
さらに「引退を決意して以降、モータースポーツ界とつながり続ける最も良い方法を見つけるために長い時間をかけて考えた。僕にとってレースは常に“楽しむこと”だった。それは僕を幸せにし、一生心に残る思い出をつくってくれた」と心境を語った。
華やかなキャリアの軌跡
リカルドは2011年、レッドブルの支援を受けてHRTからF1デビュー。その後トロ・ロッソを経て2014年にレッドブルに昇格し、初年度から3勝を挙げて4度の王者セバスチャン・ベッテルを凌ぐ活躍を見せた。
その後も複数の勝利を重ねたが、2018年にはチームメイトのマックス・フェルスタッペンの台頭を背景にルノーへ移籍。2021年にはマクラーレンに移り、モンツァでチームに8年ぶりの勝利をもたらした。
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表彰台の上でガッツポーズをとるマクラーレンのダニエル・リカルド、2021年9月12日F1イタリアGP決勝レースにて
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ダニエル・リカルド
転機と苦難のシーズン
だがマクラーレンではランド・ノリスに対して苦戦を強いられ、契約は短縮されることになった。その後リカルドはレッドブルにテストドライバーとして復帰し、アルファタウリ(現レーシング・ブルズ)で再びF1シートを得た。
だが復帰3戦目のオランダGPで手首を骨折。復帰後もチームメイトの角田裕毅を安定して上回ることはできず、2024年のシンガポールGPを最後にシートを失った。以降はファッションブランド「Enchante」など、ビジネス活動に注力していた。
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ピットレーンを歩く予選11番手のダニエル・リカルド(RBフォーミュラ1)、2024年6月29日(土) F1オーストリアGP(レッドブル・リンク)
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ファンステージ上で自撮りするRBの角田裕毅とダニエル・リカルド、2024年5月24日(金) F1モナコGP(モンテカルロ市街地コース)
フォードと共に迎える新章
リカルドは新たな舞台としてフォードを選んだ。同社は2026年にレッドブルと共同でF1に復帰する予定だが、リカルドの役割はF1プロジェクトに直接関わるものではなく、特にフォード・ラプターを含む市販車のマーケティングやブランド活動に重点を置くものと見られる。
8度のグランプリ優勝を誇り、ファンから最も愛されたドライバーの一人であるリカルドのレーシングキャリアは幕を閉じた。だが、その存在感は今後もモータースポーツの世界に色濃く残り続けるだろう。
リカルドはF1キャリアを通じて通算257戦に出場し、ポールポジション3回、優勝8回、表彰台32回、ファステストラップ17回、そして1,329ポイントを獲得した。
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2018年のF1モナコGPで悲願の優勝を成し遂げたレッドブル・レーシングのダニエル・リカルド