
F1:V8エンジン復活案が棚上げ―ホンダとアウディの反対で2030年以前の導入は困難か、ロンドン会合が急遽中止に
国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長が主導していたF1へのV8自然吸気エンジンの復活案は、一時棚上げとなった。複数の報道によると、9月11日にロンドンで予定されていたメーカーやチーム代表者との会合は、合意形成の見込みが立たないとして中止された。
V8エンジン案の内容、導入時期を巡る対立
V10復活案が却下されたバーレーンGPでの会合以降、議論されていたのは、2.4リッターV8エンジンをベースに、持続可能燃料を使用しつつハイブリッドコンポーネントを組み込む新方式だ。ハイブリッドの出力やターボの有無などで各メーカーの意見は割れていたが、一部では今回の会合で具体化が進むとの期待もあった。
導入時期は2029年または2030年が候補とされていた。ベン・スレイエム会長は「現行ハイブリッドは複雑かつ高コスト」として2029年からの早期導入を推進していたが、全てのメーカーが同調したわけではなく、妥協案として2030年が現実的と見られていた。
ホンダとアウディが反対
報道によると、最終的に会合が中止された背景には、ホンダとアウディが早期導入に断固反対したことがあるという。両社は、2026年規則に向けた巨額投資の回収を優先すべく「最低でも5年間は現行規則を維持すべき」と主張し、2031年までの先送りを求める意向とも伝えられていた。
F1の「パワーユニット統治協定」では、エンジン規定の根本的変更にはFIA、フォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)、そしてPUメーカー5社中4社の賛成が必要とされる。2社が反対に回った時点で、2029年や2030年からの導入は不可能となった。
この状況では投票を行っても意味がなく、成果なく終わる可能性が高い。英公共放送『BBC』によると、F1イタリアGPの初日を迎えた9月5日、失態を避けるべくベン・スレイエム会長が自ら会議の中止を決断した。メーカーにさらなる時間を与え、合意形成の余地を探る構えと見られる。
なお、早期移行に前向きなのはレッドブル・パワートレインズとキャデラックの新興組のみとされる。
2031年以降の展望とFIAの構想
合意に至らなければ、2026年導入の次世代PUに続く新たなエンジン規則は、早くとも2031年の施行となる。その場合、FIAにはメーカーの同意なしに独自の規則を導入できる余地がある。現行協定は2030年までを対象としており、2031年以降の枠組みは未定であるためだ。
とはいえ、急進的な変革はメーカー撤退のリスクも孕む。FIAとしては今後もFOMやメーカーと協調しつつ、2031年以降のレギュレーションを模索していく方針だ。