シンガポール最速計時、リカルドに”花”を持たせたRB「チャンスを与えたかった」とメキーズ…F1引退レースの可能性を考慮
9月22日(日)のF1シンガポールGPでのダニエル・リカルドのファステストラップは、F1でのラストレースになる可能性を考慮し、花道を飾るチャンスを与えたい、とのチームからの心遣いによってもたらされたようだ。
残り4周、RBのピットウォールは18番手を走行していたリカルドをピットに呼び、ソフトタイヤを履かせてコースに送り出した。
リカルドは残り2周で1分34秒486をマークし、62周のレースで誰よりも速いラップを刻んだ。キャリア通算17回目のファステストラップとなった。
これはルイス・ハミルトン(メルセデス)が持つマリーナベイ市街地コースのラップレコードを1.4秒塗り替えるものでもあった。
その時点でファステストを記録していたランド・ノリス(マクラーレン)はボーナスポイントを奪われる格好となり、同時に、リカルドがかつて、レッドブルで3年間を共にしたマックス・フェルスタッペンにとっては、4連覇に向けた援護射撃となった。
チェッカーフラッグを経て、無線を通してレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表から「君の古い友人、ダニエルがファステストを記録したよ」と伝えられたフェルスタッペンは、「ありがとう、ダニエル」と答えた。
リカルドにソフトタイヤを履かせた決定について、チーム代表を務めるローラン・メキーズは、「ダニエルにとっての最後のレースになる可能性を考慮した。ラップを堪能し、ファステストを記録して良い形で締め括るチャンスを与えたかった」と説明した。
この想いはリカルドに届いた。リカルドは、「もしこれが最後だとしたら、最後にもう一度、ファステストを狙ってみようと思った」と説明した。
リカルドのレースについてメキーズは「後方からのスタートであっため、セーフティカーが出ない限り、ダニエルがポイント争いに加わるのは難しい状況だった」と振り返った。
「ダニエルはソフトタイヤでスタートするアグレッシブな戦略を採り、レース中盤には素晴らしいラップを刻んだが、後方からの追い上げでは上位に食い込むチャンスはほとんどなかった」
「それでも彼は諦めず、最後まで戦い抜いた」
レッドブルは次戦アメリカGPまでの長いオフを利用して、今後のドライバーラインナップについて検討する計画を明らかにしており、リザーブ・ドライバーを務めるリアム・ローソンとリカルドとの交代の可能性が取り沙汰されている。
シートを喪失した場合、シンガポールがリカルドにとってのF1引退レースとなる可能性は極めて高い。2025年に向けて残るシートはコンストラクター選手権最下位に沈むザウバー/アウディの1席のみだ。
トップ争いへの返り咲きを目指してRBからのF1復帰を決断したリカルドにとっては、仮に2025年に向けてオファーがあったとしても、それはキャリアを継続する選択肢にはなり得ないようだ。
イベントの開幕に先立ちリカルドは、「ポイント圏外にいると当然、楽しさは減るし、僕はもう35歳で、トップを争ったこともあるし、シャンパンも味わってきた。だから、もう二度と実現しないかもしれないものに固執したくないという気持ちもある。そのことについては頭の中で何度か考えてきた」と語った。
「だから来年、どんなチャンスにも飛びつく、とは言えない。そうはならないと思う。たぶん『バイバイ』って言うだろうね」
2024年F1第18戦シンガポールGPでは、ランド・ノリスがマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に20.945秒差をつけ圧勝した。僚友オスカー・ピアストリが3位表彰台に上がり、マクラーレンが再び大量ポイントを獲得した。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは、10月18日のフリー走行1で幕を開ける。