感情溢れるリカルド、涙ぐみ明かす胸の内「F1ラストラン覚悟」で臨んだシンガポール…コックピットから離れられず
F1シンガポールGPを終えたダニエル・リカルド(RBフォーミュラ1)は、マリーナベイ市街地コースでのレースが自身にとってのF1ラストランになる可能性を認め、涙ぐみながらインタビューに応じ、感情的な胸の内を明かした。
Q1敗退を喫したことでリカルドは、セーフティーカー(SC)導入を頼りに、逆転のポイント獲得を狙ってソフトタイヤを履き、16番グリッドに着いた。だが、2008年の初開催以来、毎年SCが導入されてきたシンガポールは、今年初めてSCなしに62周を消化した。
ポイント獲得の望みが潰えた最終盤、RBはリカルドに再びソフトタイヤを履かせた。リカルドはキャリア通算17回目のファステストラップを記録し、18位でフィニッシュした。
これにより、優勝を飾ったマクラーレン時代のチームメイト、ランド・ノリスはボーナスポイントを奪われたが、リカルドのファステストラップは、かつてレッドブルで3年間を共にしたマックス・フェルスタッペンにとって、4連覇に向けた援護射撃となった。
レースを振り返るよう求められたリカルドは、目にうっすらと涙を浮かべながら、「そうだね…Q1でノックアウトした以上、長く厳しいレースになることは分かってた」と口を開いた。その声はかすれていた。
「戦略面で何かを試さなきゃならなかった。セーフティカーが入れば有利になるかもしれない。でもそうはならず、僕らが採った戦略は上手くいかなかった」
チームメイトの角田裕毅は4ポジションダウンの12位でフィニッシュした。リカルドはシンガポールでポイントを獲得できる可能性はなかったと考えている。
「結局のところ、十分な速さがなかったんだと思う。ユーキのレースの全容は分からないけど、彼もポイント圏外だったから、僕らにはレーススティントで全体的なペースがなかったのかもしれない」
ファステストラップを狙った最後の変則ピットストップについては、フェルスタッペンの援護を念頭に置いたものだと思うとしつつも、「もしこれが最後だとしたら、最後にもう一度、ファステストを狙ってみようと思ったんだ」と説明した。
「ひょっとすると、マックスにとってのクリスマスプレゼントになるかもね!アブダビで彼が1ポイント差で勝ち取ればだけど」
リカルドのファステストラップについて、チーム代表を務めるローラン・メキーズは、F1でのラストレースになる可能性を考慮し、花道を飾るチャンスを与えたい、との想いによるものだったと説明した。
シンガポールがF1でのラストレースになる可能性について問われたリカルドは、「その可能性はある。認めざるを得ない。レース毎に状況は変わっているけど。当然、今週末が上手くいくことを願ってた。でもそれは叶わなかった。…だから、これが最後かもしれないと覚悟しなきゃならない」と語った。
「ある意味、納得してる。誰にとってもいつかは終わりが来る。レッドブルに復帰しようと思ったけど、上手くいかなかった」
「だからこそ、自分はここで最終的に何を達成しようとしているのか?と自問しなきゃならない。おとぎ話のような結末にはならなかったのかもしれないけど、これまでの14年間を振り返って、誇りに思っている」
「一旦、勝つ喜びを経験すると、その後、ずっとトップ10のために戦い続けるのは難しいものがある。あの感覚に代わるものはない。それがもうできないのであれば、その可能性が乏しくなってきているのなら、つまりはそういうことだ」
「今シーズンは時に何度か、素晴らしい瞬間を経験できたけど、毎週それをやるのは厳しかった。それが年齢のせいなのか、競争が激化しているせいなのかは、誰にもわからない」
チェッカーを受け、パルクフェルメにクルマを停めた後、リカルドはしばらくの間、クルマから降りてこなかった。
「色んな感情がこみ上げてきてね。これが最後かもしれないって自覚していたから。レース後の疲れもあると思うけど、いろんな感情や思いが一気に押し寄せてきた」とリカルドは説明した。
キャリア通算257回目のレースを終えた35歳のベテランドライバーは声をつまらせ、「コックピットは僕にとって、、長年に渡って慣れ親しんだ場所だった…ただその瞬間を味わいたかったんだ」と締め括った。
レッドブルは次戦アメリカGPまでのオフを利用してドライバーラインナップを検討する計画で、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)以降のレースはリカルドに代わってリアム・ローソンがVCARB 01をドライブする可能性がある。
世界中のF1ファンはこの日のDriver of the Dayにリカルドを選出した。
2024年F1第18戦シンガポールGPでは、ランド・ノリスがマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に20.945秒差をつけ圧勝した。僚友オスカー・ピアストリが3位表彰台に上がり、マクラーレンが再び大量ポイントを獲得した。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは、10月18日のフリー走行1で幕を開ける。