
”自己嫌悪”から一夜「のんびりドライブ?…そんなわけない!」ご機嫌ノリス、魅せたレース巧者の真骨頂
予選後の様子とは打って変わり、10番手から4位まで巻き返した2025年F1サウジアラビアGP決勝レース後のランド・ノリス(マクラーレン)の表情は満足感に満ち溢れ、口調は軽やか、まさに上機嫌だった。
前日の予選Q3でノリスは、縁石に乗り上げてターン5でクラッシュ。事故直後のチーム無線では自身を「クソ馬鹿野郎」と罵った。決勝に向けては「ここでのオーバーテイクはほとんど不可能に近い」と悲観的な見通しを示していただけに、この日の快進撃は本人にとって確かな自信に繋がった。
果敢な追撃、狙い通りのロングスティント戦略
決勝レースでは、角田裕毅とピエール・ガスリーのリタイアにより、オープニングラップで早くも2ポジションアップ。その後も持ち前の巧みなレース運びで、カルロス・サインツ、ルイス・ハミルトンを次々に攻略していった。
ハードタイヤでのロングスティントを活かして30周目にトップに立つと、ピットストップを経てアンドレア・キミ・アントネッリをオーバーカット。残り10周でジョージ・ラッセルを交わすとシャルル・ルクレールに迫ったが、表彰台にはわずかに及ばず、4位でチェッカーフラッグを受けた。
Courtesy Of McLaren
アレックス・アルボン(ウィリアムズ)とサイド・バイ・サイドを繰り広げるランド・ノリス(マクラーレン)、2025年4月20日(日) F1サウジアラビアGP決勝(ジェッダ市街地コース)
疲労を吹き飛ばす、達成感と高揚感
レース後のインタビューに答えるノリスは終始、満足げな笑顔を見せた。「ホント最高だね。のんびり日曜ドライブって感じ…まあ、そんなわけないけどね(笑)」と振り返る。
「コース的にも、気温的にも厳しいし、ずっと全開だから大変なんだ。スタートからフィニッシュまで、タイヤをセーブしたりしないからね、ここは」
灼熱のなか、一瞬の気の緩みも許されない超高速市街地サーキットでの”80分間全力予選ラップ”を終え、誰もが疲労困憊の表情を浮かべる中、汗だくのノリスは「…タフだったよ。フィジカル的に、ってことじゃなく、自分が狙ってた分だけ追い上げるために必要なだけの十分なアドバンテージを作るのがね」と笑顔で続ける。
「まぁ、シャルルを捕まえて表彰台に乗れたらなって思ったよ。そしたら今ごろシャンパンをガブ飲みしてたかもしれない。いや、りんごジュースのほうがいいかな(笑)」
「今はそんな夢見心地の気分なわけだけど、今日は、できる限りのベストの結果を残せたと思う。僕らが他より圧倒的に速いわけじゃないっていうのは、オスカーのレースを見ても分かるし、実際、楽なレースじゃなかった。ペナルティがなければ、おそらくマックスが勝ってたと思うし、そういう課題はまだある」
Courtesy Of McLaren
優勝記念祝賀会で談笑するマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2025年4月20日(日) F1サウジアラビアGP決勝(ジェッダ市街地コース)
改善すべきは予選、レースには絶対の自信
今季はレースでの安定感が光る一方、予選では苦戦が続く。「ホント、楽なレースじゃなかった。つまりね、昨日みたいに自分でミスをすると、すごく難しい展開になっちゃうってこと。自分で自分の首を絞める感じだね」とノリスは認める。
「それでも満足。満足だよ。今日の追い上げは、自分としては最高の出来だった。休みが楽しみだよ」
ダーティーエアーの中で前方車とのギャップを詰め続ける厳しい展開だったにもかかわらず、ノリスはトップでフィニッシュしたチームメイト、オスカー・ピアストリからわずか9.196秒差の4位でレースを終えた。
「正直、今年のレースはどれもこれも、まぁ何と言うか、かなり自信を持って走れてるんだ」とノリスは語る。
「問題は予選。今のところ、土曜日がダメ。1ラップペースでちょっと苦しんでて、それは前から言ってるように、まだクルマに手こずってるからで。いや、昨日の結果はクルマのせいじゃなくて、自分がリスクを取りすぎたせい。それだけだよ」
「兎に角、流れってものを掴むしかないと思うんだ。ペースはあるんだよ、ちゃんと。全部あるんだ。ただ、時々それを引き出しすぎようとして、ちょっと…欲張っちゃうんだよね。完璧なラップを出したくてつい力んじゃう。だから、もう少し肩の力を抜くことが大事なんだと思う」
「まぁ、ちょっとばかり休んで、また次のレースで頑張るよ」
怒涛の3連戦を経てF1サーカスは1週間のオフを挟む。次戦マイアミGPでは、予選と決勝の両面での完璧な週末を期待したい。
2025年F1第5戦サウジアラビアGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が2番グリッドからの逆転勝利を飾った。2位はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にはシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
マイアミ・インターナショナル・オートドロームを舞台とする次戦マイアミGPは、現地時間5月2日のフリー走行1で幕を開ける。