
”親友同士討ち”の悲劇―角田裕毅とガスリーの事故見解、スチュワードの決定…F1サウジ開始早々に揃ってリタイヤ
2025年F1第5戦サウジアラビアGPのオープニングラップでは、親友同士である角田裕毅(レッドブル・レーシング)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)が接触。ともにポイント獲得が期待されたものの、両者揃ってリタイアした。
レース開始直後、ガスリーがターン4のアウト側から角田に仕掛けた際、その左リアが角田の右フロントと接触。両者はスピンを喫し、リアからターン5のバリアに衝突した。ガスリーはその場でリタイア。角田はピットに戻ったものの、車体へのダメージが大きく、レース続行は叶わなかった。
レース後のインタビューで双方は、都度、間を置きながら慎重に言葉を選び、自身に非がないことをにじませつつも、決して相手を非難しなかった。お互いへのリスペクトを忘れずに対応する姿勢が印象的だった。
角田:あれ以上は何もできなかった
一件について角田は、ガスリーが十分なスペースを残さなかったと感じているが、同時に、判断を下すのは難しい事故だったとしつつ、「レーシングアクシデント」との見解を示した。
「正直、あれ以上うまくやるのは無理だったと思います。接触を避けようと、できる限りのことはやりましたが、あのスペースでは、回避するのは本当に難しいです。あれ以上、他に何かできることがあったのか、僕にはわかりません」
「お互いに分かってたとは思いますが、あそこでアウト側から仕掛けるのであれば、最低でも車幅半分は白線の上に出ていないと、接触は避けられません。残念です」
「僕はサインツの後ろを走っていて、クルマを完全にコントロールしていました。カルロスのクルマに突っ込みそうになったとか、そういうこともありませんし…なので、何が正しくて何が間違ってるのか、あるいはもっと上手くやれたのかどうかという点については、よくわかりません」
また、プレスリリースを通しては「相手が誰であれ、接触するのはいつだって辛いことですが、それがピエールだっただけに、なおさらです。僕らは友人同士ですし、何よりお互いポイントや結果をかけて戦っていたわけで、どちらにとっても理想的な結果ではありませんでした」とコメントした。
レッドブル代表ホーナー、角田を非難せず
チーム代表のクリスチャン・ホーナーもレーシングアクシデントとの見解を示し、角田を非難することはなかった。
「ユーキにとっては本当に残念なレースになってしまった。スタートポジションを考えれば、チームにとっても貴重なポイントを獲得できる可能性が高かった。クルマに慣れるという点で走行時間を失ってしまったのも痛いが、今回ばかりは本当にどうしようもなかったと思う。このコースでは、この手の接触のリスクは常につきまとうからね」
ガスリー:詳細コメント拒否も「不運」
一方のガスリーは、角田に対して「可能な限りのスペースを残した」と主張。接触がレーシングインシデントに該当するか、また責任の所在がどちらにあるのかとの質問に対しては返答を拒否したものの、角田を非難する姿勢は見せなかった。
「ターン4では上手くやれたと思う。ブレーキングを上手く決めて彼の前に出ることができた。彼がイン側にいたのは分かっていたから、コーナーの出口ではできる限りスペースを空けた」
「実際、外側の2輪はコース外に出ていて、内側の2輪だけを白線に残していた。合法的にオーバーテイクするには、そうしなきゃならなかったからね。でも、残念ながら接触があって、クルマがスピンしてしまった」
今回の接触がペナルティに値するものだったのか、それともレーシングアクシデントに過ぎなかったのかという問いに対しては、「それについてはあまりコメントする気はない」と質問を遮った。
「ユーキのことはよく知っている。何を考えていたのかもね。故意だったわけじゃないし、結果的に不運だっただけさ。もちろん、こんなことは起きてほしくないけど、これがモータースポーツなんだ。こういう状況に巻き込まれたのも、すごく久しぶりだけど……やっぱり良い気分じゃないね」
スチュワードの見解
この接触について、FIAのスチュワードはレース後に角田とガスリーの両者を召喚し、聴聞を実施。その結果、一件は「1周目のレーシングアクシデント」であり、「いずれのドライバーにも主たる責任はない」とする認識で両者が一致した。
スチュワードは、事故が発生した現場が「コース幅の狭いエリア」であったこと、さらに「角田の直前にサインツが走行していた」ことの2点を指摘し、この一件をレーシングアクシデントとして処理する判断を下した。