2026年F1パワーユニット規定、出力比率見直しか―「64:36案」を協議へ

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2026年に導入予定の次世代パワーユニット(PU)規定におけるICE(内燃エンジン)とモーターの出力比を50%対50%とする現行方針の一部が、見直される可能性が浮上した。

英専門メディア『The Race』によれば、次週開催予定のF1コミッション会議において、この修正案が正式に議題として取り上げられる見通しだ。

“バッテリー切れリスク”への懸念

現在開発が進められている次世代PUを巡っては、かねてより一部のチームおよびメーカーから、回生エネルギーが不足し、ストレートの途中で電力が枯渇するリスクがあるとの指摘が上がっていた。

特にモンツァのような高速サーキットでは、「加速途中でエネルギーが切れる」「早めのリフト・アンド・コースト(燃費走行)を強いられる」といった事態が生じ、レースの質が損なわれる恐れがあるとして問題視されてきた。

この課題に対して国際自動車連盟(FIA)は、「ランプレート制限」と呼ばれる技術的対策を導入するなどしてきた。これは、コーナー立ち上がりなどでのエネルギー使用を段階的にしか増加できないように制限するもので、ストレートでのバッテリー切れを防ぐ目的がある。しかし、こうした措置だけでは根本的な解決には至っていないのが現状だ。

新提案:レース中の出力を200kWに制限

こうした背景から、次週のF1コミッション会議では、レース中に限って(予選は除く)バッテリーの出力上限を現在の350kWから200kWへと削減する案が提示される予定だと報じられている。

この修正案が承認された場合、出力比はICEが64%、モーターが36%へと見直される。限られた電力量をより持続的に活用できるようになることから、ラップ全体を通じたパフォーマンスの安定化が見込まれる。なお、現行規定ではICEが85%、モーターが15%となっている。

一方、オーバーテイク時に使用される「オーバーテイク・モード」については、350kWの出力上限が維持される見通しだ。これにより、バッテリーの温存に成功したマシンとそうでないマシンとの間に明確な性能差が生まれるため、オーバーテイクシーンの増加が期待される。

賛否分かれるチーム首脳の見解

この案に対し、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは支持を表明。「来年の開幕を待ってから対応しても遅い。今なら8か月の猶予がある。FIAが懸念を抱き始めているのは明らかであり、早期に議論することが重要だ」と述べた。

一方、メルセデスのトト・ウォルフ代表は時期尚早との立場を取り、「現段階では裏付けとなるデータがない」として、今回の提案を「推測と意見に基づいた“政治的な駆け引き”」と批判している。

この修正案が導入されるには、PUメーカーによる「スーパーマジョリティ(特別多数)」の賛同が必要となる。