FIA、静観の構え…マクラーレンとメルセデスの合法性を問うF1ウイング論争 ”ひとまず終結”へ
マクラーレンとメルセデスのフロントウイングの合法性についてレッドブルとフェラーリは明確な指針と対応を求めたが、国際自動車連盟(FIA)は少なくとも2024年シーズン中は技術指令(TD)を発行するなどの対処はせず、静観する構えだ。
今季最悪の週末に終わったモンツァでのイタリアGPを経てレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、「何故、この6~8ヶ月の間に、支配的なクルマから運転不能なクルマに変わってしまったのか理解できない」と不満を漏らした。
選手権争いのライバルであるマクラーレンとランド・ノリスが着実にポイントを積み上げた一方、レッドブルは予選でもレースでもまったく歯が立たず、マックス・フェルスタッペンは6位、セルジオ・ペレスは8位に終わり、6戦連続で優勝を逃した。
開発を投じてなおレッドブルがバランスの問題に苦しみ停滞する傍ら、ライバルチームはマシン開発を成功させている。マクラーレンは昨年4月下旬のアゼルバイジャンGPでのアップグレードを皮切りに、開発で一度も躓くことはなく、今年7月初旬のオーストリアGPでも更なる進化を遂げた。
モンツァでの惨敗を経てホーナーは、「フロントウイングの使い方がかなり違う。マクラーレンとメルセデスのウイングの角度を見ると、グリッドの他のチームとは大きく異なっている」と述べ、パフォーマンスの違いの鍵はフロントウイングにあると指摘した。
また、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはモンツァで「マクラーレンとメルセデスのフロントウイングを分析する必要がある」と語った。
フェラーリのフレデリック・バスール代表はこの件に関して公の場でのコメントを控えつつも、FIAのシングルシーター部門を率いるニコラス・トンバジスと協議する意向を明らかにした。
モンツァでは、走行中に湾曲するウイングのオンボード映像が注目された。マクラーレンやメルセデスのウイングには、翼端板との接合部分のリア側に隙間が設けられるなど、幾つかの顕著な特徴がある。
大雑把に言えば、フレキシブルウイングは走行速度の違いによってその形状を変えるもので、単に高速時のドラッグを低減するだけでなく、高速走行時と低速走行時の双方での適切なマシンバランスを可能とし得るものだ。
レッドブルは現在、バランス調整に苦戦している。ある部分を改善すると、別の部分が悪化してしまうというような状況で、終わりの見えない”もぐらたたきゲーム”に苦しんでいる。
レッドブルが水面下で圧力をかけてきたことを受けFIAは、現行のウイング剛性テストが適切であるかを判断するための情報収集の一環として、特殊なカメラをスパで導入した。これは国際映像で使用される通常のテレビカメラとは別にノーズに取り付けられ、金曜フリー走行でのみ搭載された。
スパとザントフォールト、そしてモンツァでの週末を経てFIAは、技術規則に基づいてフロントウイングの検査を多方面から行っていることを強調した上で、「すべてのフロントウイングは現時点で2024年のレギュレーションに準拠している」と述べた。
また、様々なレベルのダウンフォースが要求されるコースで調査を続ける必要があるとして、少なくともシンガポールGPまでカメラ調査を継続すると説明するとともに、「短期的な対策の予定はないが、中長期的な視野に立って状況を評価している」と付け加えた。
FIAの声明に先立ちホーナーは、ライバルチームのウイングが合法であると判断された場合、レッドブルも同じ方向性で開発を進める意向を明らかにしている。