ランド・ノリスのピットストップ作業を行うマクラーレンのクルー、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レース
Courtesy Of McLaren

FIA、マクラーレンの再審請求を却下…その理由とは?F1カナダGPのノリスに対する懲罰を巡り

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国際自動車連盟(FIA)のスチュワードは、「スポーツマンシップに反する行為」があったとしてF1第9戦カナダGPでランド・ノリスに科された5秒ペナルティに対するマクラーレンの再審請求を却下した。

ノリスはジル・ビルヌーブ・サーキットでのレース中、ダブルスタックを成功させるために、前を走行していた僚友オスカー・ピアストリとギャップを広げるべく、セーフティーカー先導下で故意に低速走行したと見なされペナルティを受けた。

これによりノリスは9位フィニッシュながらも13位に降格。マクラーレンはF1第10戦オーストリアGP予選を経て、この決定に対して再審請求権を行使した。

レッドブル・リンクでの決勝レース当日の現地9時30分、当事者であるマクラーレンに加えて、ノリスの行為により潜在的にポジションを失った可能性のあるウィリアムズのほか、レッドブルやアストンマーチン、アルピーヌの代表者が参加する形で公聴会が行われた。

再審請求は「競技中に利用できなかった重要かつ関連する新たな証拠」が事後に見つかった場合、スチュワードの決定に対して再審理を請求する事ができるというもので、その期限は競技終了後14日に定められている。

公聴会ではマクラーレンが提出した証拠が再審請求の条件を満たしているかどうかが検討された。提出された証拠は以下の4つだ。

  1. 疑わしきは罰せず、というチームマネジャー会議(2023年6月30日)における同意のメモ
  2. ダブルスタックは容認されるとの理解に至ったとするチームマネージャー会議(2019年カナダ)における議論
  3. 他車に悪影響を及ぼしたとされるギャップを作りながらも罰せられなかったとされる8つの事例
  4. ノリスの行為の結果としてアルボンは順位を失っていないとする提出書面

これら4つの証拠が再審請求の4条件を満たしているかどうかについてのスチュワードの判断は以下を参照されたい。分かりやすいように表にした。満たしている場合は◯、そうではない場合は✕。いずれも関連性という点で条件を満たしていないと見なされた。

証拠 重要 新規 入手 関連
1
2
3
4

1および2についてスチュワードは、議論や非公式な合意などはレギュレーションではないため拘束力はないと主張した。

過去の事例に関する3については、本件とは異なり「スポーツマンシップに反する行為」と見なされなかった事例であり、関連性がないと主張した。

4に関しては、ノリスの行為により生じたギャップがアルボンのレース結果に及ぼす「代償」を予測することは不可能だと指摘した。

これを受けてマクラーレンは声明の中で 「FIAとスチュワードの決定を尊重する」「受け入れる」とする一方で「我々は再審請求権が認められるに十分な、新しく、重要で、関連性のある証拠を提出したと考えている」と主張し、「我々が望んだ結果ではないが、スチュワードの協力に感謝する」と付け加えた。

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