アルファタウリ代表フランツ・トストが角田裕毅の”成功”に3シーズンが必要と考える理由とは?
アルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表は角田裕毅について、天性の速さを示して日々改善しているとして将来的な「成功」を疑っていないが、F1に馴染んで才能の全てを遺憾なく発揮できるようになるためには3シーズンが必要だと考えている。
期待の日本人ルーキーはバーレーンでのプレシーズンテストと開幕戦で印象的なシーズンスタートを切ったものの、僚友ピエール・ガスリーが如何なる状況であれ着実にポイントを持ち帰ってくる一方、4レース連続ポイント圏外とチームに貢献できず、特に予選に苦しんでいた。
だが、第5戦モナコGPでのクラッシュを経て拠点を英国からイタリアへと移したタイミングで調子は上向き始め、アゼルバイジャンでは7位、シュタイアーマルクでは10位入賞を飾り、2日のオーストリアGP初日プラクティスでは5・6番手と、ホンダエンジンとしての2番手タイムを連取した。
確かに上昇気流に乗りつつあるものの、角田裕毅は依然としてF1での経験が圧倒的に不足しており、フランツ・トスト代表はまだまだ修行が必要だと考えている。
長年に渡ってドライバー・インキュベーション装置としてのファエンツァのチームを率いてきた65歳の指揮官は、例え3回のフリー走行を通してレイアウトを学んだとしても、風向きや風速、路面温度の変化など、都度の不確かなコンディションにも対応しなければならず、毎週末毎に異なるサーキットで初めて予選を戦わなければならないという点で「若手ドライバーがF1に参戦する事は本当に難しい」と語った。
「ポールリカールでユーキがクラッシュした際は、FP3でアンダーステアに見舞われたため(予選に向けて)フロントサスペンションに仕事をさせるべくフロントウイングを多めにしたんだ。その結果、彼はコーナーでのターンインの際に、クルマが予想以上に反応した事で縁石に乗り上げてクラッシュしてしまった。風向きが変わった事も災いした」
「若いドライバーにこうした事を教えることはできない。実際に何度も予選を走りながら学んでいくもので、だからこそ経験が非常に重要なんだ」
「ユーキは本当に良くなってきているし、歩んでいる方向は間違いなく正しい」
「彼はアプローチを変えたわけではない。もともと彼のアプローチは間違っていなかったが、ファエンツァに住み始めてエンジニアと過ごす時間が増えた事が大きい」
「彼は毎日、エンジニアたちと何時間も同じ時間を過ごしているため、クルマをメカニカル的に、空力的に、そしてパワーユニット的にと、様々な角度から理解することができるようになった」
「パワーユニットは単にパワーを供給するだけではなく、ブレーキングやMGU-Kなどにも関わってくる。若いドライバーはこれを学ばなければならないが、その方法は常に同じであるわけではない。サーキット毎、コーナー毎に異なるため、ルーキーが最初からその全てを頭に入れているなどという状況は期待できない」
「だから私はいつも、若いドライバーがこの複雑なF1を理解するには3年は必要だと言っているんだ」
「彼は素晴らしい天性のスピードを発揮し、日々、セッションごとに向上しており、私はユーキに本当に満足している。チームがシーズン後半には非常に素晴らしい結果を手にするだろうと私は楽観的だし、ユーキも将来的に成功するだろう」
なおキャラクター故か、角田裕毅はセルジオ・ペレスに助言やメッセージを貰うなど、先輩ドライバーの助けを借りて苦しい週末を乗り切ってきた。
フランツ・トストは「ペレスやマックスのような経験豊富なドライバーが若手にアドバイスをしてくれるのは本当に良いことだ。助けるためにどうすればよいのか、どの部分にアドバイスを与えれば良いかを彼らは的確に把握しているからね」と述べ感謝した。