英国モータースポーツ連盟、F1チームの経営破綻を危惧…リバティメディアに財政支援を要請
一部の業界を除き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による経営への悪化が懸念されているが、これはF1チームとて例外ではない。英国のモータースポーツ連盟(Motorsport UK)はチームの経営破綻を危惧しており、F1の商業権を持つリバティ・メディアに支援を訴えている。
イギリスはモータースポーツ発祥の地として知られ、グリッドに並ぶ10チームのうちの6チーム(レッドブル、メルセデス、マクラーレン、ルノー、レーシングポイント、ウィリアムズ)が拠点を置く。モータースポーツが地域経済に与える影響は少なくない。
2020年シーズンのF1世界選手権は史上最多となる全22戦が予定されていたものの、新型肺炎の世界的流行の煽りを受け、現時点で8レースが延期または中止され、単純計算で4割ほどの売上が飛んだ状態にある。
この損失をできるだけ抑えるためには、延期開催によってF1の収益の大部分を占める開催権料とテレビ放映権料を確保する事が必要不可欠であり、F1とチームは8月中に3連戦(トリプルヘッダー)を開催すべく競技規約を改定したが、今のところ開催の見通しは立っていない。
英国モータースポーツ連盟のデビッド・リチャーズ会長は、パンデミックの影響を過小評価しておらず、小規模資本のプライベーターに経営破綻の可能性があることは明らかだとして、かつてF1を牛耳っていたバーニー・エクレストンを引き合いに出し、必要に応じて資金面で下支えするよう要請した。
「多くはF1側の出方にかかっている。この状況はグリッド最後尾チームにとって災害だ。F1は彼らを失うわけにはいかない」とデビッド・リチャーズ。アイルランド放送協会が運営する「RTÉ.ie」が3月25日に伝えた。
「厳しい時期、バーニーは小規模チームの面倒を見るようにしていた。リバティもその常識を理解してくれることを期待している」
「メルセデスやルノーなどの大手メーカーは大丈夫だろうが、例えばウィリアムズやレーシングポイントにとっては簡単な事ではないだろう。経営が破綻する危険性があるのは明らかだ」
スイスに本拠を置くアルファロメオ・レーシングも危機感を募らせる。フレデリック・バスール代表は先日、モナコまでの7戦が中止された事を受け、今季は15%〜20%程度の収益減を見込んでいる事を明かし、更にはトリプルヘッダーへの対応コストに懸念を示した。先行きは明るくない。
デビッド・リチャーズはまた「1週間前に中止を決断する事も出来たはず」と述べ、オーストラリアGPの際のリバティ・メディアの決断の遅さを批判した。メルボルンでのグランプリは、開幕前日にマクラーレンのチームスタッフが陽性反応を示し、フリー走行開始2時間前になってようやく中止が発表された。
デビッド・リチャーズはラリーのコ・ドライバーと活躍した後、1984年にモータースポーツ関連の事業を手掛けるプロドライブを共同設立。カルロス・サインツやトマ・マキネンらを起用して世界ラリー選手権(WRC)を6度制覇し、その後はベネトン・フォーミュラやBARホンダのチーム代表を務めた経験を持つ。