アルファロメオ・レーシングのフレデリック・バスール代表
Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1は史上最悪の危機を迎えているのか?新型コロナの影響で収入減とコスト増も覚悟するアルファロメオ

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アルファロメオ・レーシングのフレデリック・バスール代表は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がF1に与える影響を楽観視していない。フランス出身の51歳は現時点でさえ、少なくとも2割程度の収入減を覚悟するだけでなく、レース数が減る見通しであるにも関わらずコスト増を懸念している。

新型肺炎の検査を受けたマクラーレンのチームスタッフが陽性反応を示した事で、今シーズンの開幕を担うはずであったオーストラリアGPが中止となり、その後は雪崩を打ったかのごとく延期という名の中止発表が続いた。現時点では開幕の見通しは立っておらず、延期が発表されたレースの代替開催日も目処が立っていない。

バスール代表はF1アゼルバイジャンGPの中止発表前に行われた仏Auto Hebdoとのインタビューの中で、チームとして今季は15%〜20%程度の収益減を見込んでいる事を明らかにした上で、サマーブレイクの前倒しに伴うコスト増に懸念を示した。

「トリプルヘッダーに対応するために新しくスタッフを雇う必要がある上に、フロントウイングやフラットボトムなど、生産が非常に困難なパーツを大量に投入しなければならない。無論使わないかもしれないが、念のために用意しなくてはならない」

F1は大幅な売上低下が見込まれる現状への打開策としてトリプルヘッダー、つまり新たに3週連続でのグランプリの強行開催を目論んでいる。

F1の収益の大部分は現地プロモーターからの開催権料とテレビ局からの放映権料に頼っており、これら総収益の7割弱がコンストラクター選手権の賞金としてチームに流れ落ちる。今シーズンは22戦が予定されていたため、1レースが中止に追い込まれる毎に単純計算で5%の売上が失われる事になる。

レース開催数を可能な限り確保するために、F1はファクトリーの強制シャットダウンを含むサマーブレイクを3月・4月へと前倒しすることで、中止されたグランプリの代替開催日を8月中に設定し、2Dayイベントでのトリプルヘッダーの開催を目論んでいる。

更にF1のチェイス・ケアリーCEOは23日に、今季最終戦として位置づけられているアブダビGP後のレース開催の可能性に言及。中止されたレースが12月に押し込まれる可能性も出てきた。ただし、バスール代表が指摘する通り、無理矢理にトリプルヘッダーを開催することはチームにとって両刃の剣と言える。

不用意にレース開催数を増やせばコスト超過となり得るし、レース数が少なければ収益を失うことになる。ただし現行のF1スポーティングレギュレーション(第5条4項)が変更されない限り、シーズン成立のためには最低8戦を開催する必要がある事は確かだ。

「リスクを抑えるために、(オーストラリアへ出向いた)レースチーム全員が隔離されているし、スイス人を含めた残りの350人の従業員もまた隔離状態にある」とバスール代表。スイス・ヒンウィルに位置するチームの現在の様子をこう説明する。

「スタッフ全員がリモートワークで仕事を進めるのは困難であったため、夏休みを14日から21日に拡大すると共に前倒しした件については良いことだと考えている。ヒンウィルのファクトリーは3月23日から4月13日まで閉鎖される」

バスール代表は30年以上のキャリアの中で、1990年の湾岸戦争、2001年のアメリカ同時多発テロ事件、2003年のSARS、2008年のサブプライム危機など、これまでに幾度となく困難な状況への対処を経験してきたツワモノだが、COVID-19に関しては過去の経験則が役に立たないと考えている。

「F1とモータースポーツは史上最悪の危機を迎えているのか?」と問われたバスール代表は、新型コロナウイルスの影響範囲は全世界的であり、現段階ではパンデミックによる最終的なダメージの程度を予想できる者などいないと述べ、強い危機感を示した。