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クラッシュテスト

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クラッシュテスト(FIA Crash Test)とは、F1マシンの安全性を確保するための衝突試験のこと。FIA国際自動車連盟の指針に基づき、衝撃吸収構造体やサバイバルセルが、ルールで規定された衝撃吸収性能を備えているかどうかについて、FIA技術代表(テクニカルデリゲート)立会いの下での検査が義務付けられている。

F1に参戦するすべてのコンストラクターは、必要とされる安全基準をクリアするための厳格な衝撃テストに合格しなければならず、クリアできなければレースはおろか、プレシーズンテストに参加することすらできない。一発合格できずに何度かトライする事も珍しくはない。

1985年当時のFIA会長、故ジャン=マリー・バレストルによって導入された。イタリア・ミラノ県ボッラーテ、英国ベッドフォードシャー州クランフィールドなど、クラッシュテストのための専門施設が世界に3箇所設けられている。

シーズン中にサバイバルセルや衝撃吸収構造体に大きな変更を加えた場合は、変更された箇所に対して再度、静的および動的テストを行う必要がある。

クラッシュテストの内容

クラッシュテストは動的衝突テスト、静的荷重テストおよび横転テストの3つで構成される。動的衝撃テストでは、テストシャシーに75Kgのドライバーダミーを乗せて合計780kgとし、フロント(前部)サイド(側方)リア(後部)の3面すべてに衝突を加えてテストする。

衝突箇所 衝突速度
フロント
(マシン前方)
秒速15m
(時速54km)
サイド
(マシン側方)
秒速10m以上
(時速36km以上)
リア
(マシン後方)
秒速11m以上
(時速39.6km以上)

また上記と合わせて、事故発生時にハンドルがドライバーの頭部に衝突という想定のもとで、ステアリング・コラムに対する動的衝撃テストも実施される。これはステアリングを地面に固定して8kgの半球形物体を秒速7m以上で衝突させるというもので、衝撃によって頭部に衝突しないように変形する事が求められるものの、ホイールのクイック・リリース機構はクラッシュ後も通常通りに機能しなければならない。

F1マシンの巡航速度と比較するとかなり低速だが、合否の判断基準は「衝突後に衝撃吸収体が150mm変形した時点での最大減速度が10Gを超えない」あるいは、「ダミー人形の胸にかかるGが衝突から3ミリ秒以内に60Gを超えない」などといった形で規定されているため、安全性確保の面で問題はない。