
100億円超か―20台のマクラーレン売却へ、故マンスール・オジェの驚愕コレクション
2021年に68歳で死去したマクラーレンの元共同オーナー、マンスール・オジェが所有していたマクラーレンの特別なロードカー20台が、売却されることになった。クラシックカー販売業者トム・ハートリー・ジュニアが、オジェの遺族から売却を委託された。
コレクションには、マクラーレンF1の最終製造車をはじめ、各モデルの最終シャシーのみが揃っており、いずれも極めて走行距離が少ないか未使用の状態で、マクラーレンによって整備が施されてきた。
想定される売却額は7,000万ドル(約100億円)を超えるとみられ、希少性の高さから、一括購入される可能性も高い。
歴史的価値を持つ「マンスール・オレンジ」の特注車
このコレクションの特徴は、すべての車両が特注色「マンスール・オレンジ」で塗装されている点にある。これは、オジェのために1台限りで製造されたマクラーレンF1(ゴードン・マレー設計)の最終個体に採用された色で、当初は「イケム」と呼ばれていたが、のちに正式に「マンスール・オレンジ」と改称された。
Courtesy Of Tom Hartley Jnr Ltd
マクラーレンの元共同オーナー、マンスール・オジェが所有していた「マンスール・オレンジ」が施されたマクラーレンF1、バーレーン・インターナショナル・サーキットにて
当該のマクラーレンF1は、走行距離が1,800km強と極めて少なく、同型車の希少性も相まって注目度が高い。実際、2021年には走行距離390km未満の1995年式マクラーレンF1が、カリフォルニア州ペブルビーチのオークションで2,040万ドル(約29億円)で落札されており、本コレクションが市場で高額評価される背景には、こうした過去の実績もある。
その他の車両も全てが各モデルの最終シャシーで構成されており、F1とP1 GTRを除いてはすべて未使用状態とされる。
オジェとマクラーレン―40年にわたる密接な関係
マンスール・オジェは、サウジアラビア系フランス人実業家として知られ、父から継いでTAG(テクニーク・ダバン・ギャルド)社のCEOに就任後、1979年にウィリアムズF1チームのスポンサーとしてモータースポーツに本格参入した。
1984年にはマクラーレンに出資し、TAG-ポルシェ製エンジンの開発資金を提供。これによりマクラーレンは2度のコンストラクターズタイトル、3度のドライバーズタイトルを獲得することとなった。
さらにオジェは、ロン・デニスと共にマクラーレン・オートモーティブの立ち上げにも関与し、同社の市販車部門における礎を築いた存在でもある。
「エンツォ・フェラーリのフェラーリ」との評価
Courtesy Of Tom Hartley Jnr Ltd
マクラーレンの元共同オーナー、マンスール・オジェが所有していたマクラーレンの特別なロードカー20台からなるコレクション、バーレーン・インターナショナル・サーキットにて (2)
マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンは、このコレクションについて次のように語っている。
「マンスールは、今のマクラーレンの礎を築いた人物だった。彼は情熱的なレーサーであり、自動車愛好家でもあった。これほどのコレクションは他に例がない」
一方、売却を担当するトム・ハートリー・ジュニアは、今回の任務の重みについて次のように述べている。
「マンスール・オジェのマクラーレン・コレクションを任されるのは、エンツォ・フェラーリのフェラーリやフェルディナント・ポルシェのポルシェを扱うようなものだ。このコレクションはマクラーレン史上、最も重要なロードカーたちばかりであり、単独の買い手に引き取ってもらえることを心から願っている」