プッシュロッドのダブルウィシュボーン式サスペンションを備えるアストンマーチンの2022年型F1マシン「AMR22」
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

トランスファラブル・コンポーネント(TRC)

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トランスファラブル・コンポーネント(英:transferrable components、略:TRC)とは、F1レギュレーションで定義された他チーム(姉妹チームやカスタマーチームなど)に譲渡可能なパーツの事を指す。

F1は2022年より、パワーユニットを除くF1マシンの全コンポーネントを4種類に分類し、その各々に製造・管理に関する別個のルールを設けた。TRCは以前で言うところの「非リスティド・パーツ」で、TRCの他には以下の3種類がある。

該当するパーツであれば無制限に供給して良い、というわけではない。供給が許されるのは、供給側が当該年もしくはその前年に使用したものに限られる。つまり2年以上前のチャンピオンシップで使用したパーツを供給する事はできない。

また同一スペックでなければならない。例えばレッドブルがアルファタウリ用に特注のTRCを設計・製造するような事は認められない。ただし供給される側は、TRCのサブコンポーネントを交換したり変更する事ができる。

バーレーン・インターナショナル・サーキットのガレージでAT02の整備に取り組むアルファタウリ・ホンダのメカニック達、2021年3月26日F1バーレーンGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

バーレーン・インターナショナル・サーキットのガレージでAT02の整備に取り組むアルファタウリ・ホンダのメカニック達、2021年3月26日F1バーレーンGPにて

TRCに分類されるコンポーネントは以下の通り。

  • リア・インパクト構造
  • ギアボックス・キャリア
  • ギアボックス・カセット
  • クラッチ
  • クラッチ・アクチュエーション・システム
  • クラッチ・シャフト
  • ギアボックス内部及びオイルシステムやリバースギアなどの補助部品
  • インボード・フロント・サスペンション
  • フロント・サスペンション・メンバー
  • フロント・アップライト・アッセンブリー
  • フロント・アクスル(ホイールスペーサーとの接触面の内側)及びベアリング
  • インボード・リア・サスペンション
  • リア・サスペンション・メンバー
  • リア・アップライト・アッセンブリー(アクスル、ベアリング、ナット、リテンションシステムを除く)
  • リア・アクスル(ホイールスペーサーとの接触面の内側)及びベアリング
  • パワステ
  • OSC、SSC、LTCに該当しないその他燃料系パーツ
  • 油圧ポンプ及びアキュムレータ
  • 油圧マニホールド、センサー&コントロールバルブ
  • 油圧ポンプ、油圧マニホールド、ギアボックスまたはエンジン・アクチュエーター間の配管
  • オイル及びクーラントシステム内の二次熱交換器
  • ギアボックス及びサバイバルセルへのPU取り付け部
  • タービン及びウェイストゲート出口を除くエキゾースト・システム
  • 電気系統のハーネス全般

フェラーリと密接なテクニカル・パートナーシップを締結するハースはTRCを最大限に利用する事で空力開発にリソースを割く方針を貫いてきた。アルファタウリもシニアチームのレッドブルからTRCの供給を受ける。

他方、唯我独尊の”ノーBチーム”のアルピーヌには殆ど関係のない話かもしれない。