エアロスクリーン全体像
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エアロスクリーン

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エアロスクリーン(英:Aeroscreen)は、インディカー・シリーズが2020年シーズンより導入したキャノピー型のコックピット保護デバイスの事で、飛散したデブリ等からドライバーの頭部を守るよう設計されている。

チタン製のフレームワークに積層ポリカーボネートスクリーンを組み合わせ、これを車体に固定する。設計を手掛けたのはレッドブル・レーシング・アドバンス・テクノロジー(RBAT)社。F1でドライバーの頭部保護が大きな議題となった際、レッドブルはエアロスクリーン型の装置を開発・提案していたが、最終的にメルセデスAMGのヘイロー案が採用された経緯がある。

3月15日(日)に行われる2020年シーズンの開幕セントピーターズバーグでレースデビューする。オーバル、ロード、ストリートの別なく、全てのトラックで全チームに使用が義務付けられている。

エアロスクリーンを搭載したインディカーマシン
© Getty Images for INDYCAR

構造と耐荷重

車体側との統合が重要であるため、開発はインディカー・シリーズの公式シャシー・マニュファクチャラーであるダラーラと共に行われた。重量27.8ポンド(約12.6kg)のチタンフレームは、オーストリアのPankl Racing Systems社が製造。耐荷重は3万4000ポンド(約15,422kg)で、F-16戦闘機2機分、インディカーマシン21台分に相当する。リム部分がカーボン補強されているため、コックピット全体の剛性は10%以上向上した。

フレームは3Dプリントされた5つのチタンパーツから構成され溶接後に機械加工される。溶接部はX線検査による強度チェックが行われ、最終的には三次元座標測定機で徹底した精度確認が行われる。着脱が容易なのも特徴で、15分未満でアッセンブリー全体を取り外しできるという。

エアロスクリーンの構造図
© Red Bull Advanced Technologies

エアロスクリーンのチタンフレーム部分
© Getty Images for INDYCAR

視界性とコックピット内気温の調整

スクリーン内部には反射防止コーティングが施され、曇り止め用に防曇鏡用ヒーターが搭載される。また、コックピット内の冷却機能がオプションとして用意されており、ウインドスクリーン前縁下部に設置された空気穴からエアフローが取り込まれる。量や方向はドライバーの好みに合わせてチームが独自に変更できる。

砂や埃、オイルなどによってスクリーンが汚れた場合に備えて、スクリーン外側には最大8枚のティアオフ(透明フィルム)が貼られる。必要に応じてピットストップの際にこれを剥がし、クリアな視界を確保する。

インディカーマシンに搭載されたエアロスクリーンのティアオフ
© Getty Images for INDYCAR

ロードコースとショートオーバル用として、給油バルブと反対側のウインドスクリーン後縁の横に予備用の吸気口が用意されており、これを使ってドライバーのヘルメットに空気を送ることも出来る。またフロントノーズ先端にも同じような追加のダクトが確保されており、こちらはドライバーの下半身用に利用できる。

開発の経緯

RBAT社が既にプロトタイプを開発済みであった事もあり、開発から実戦投入までの期間は僅か1年ほどであった。なおこの間のつなぎとして、インディカーは2019年4月に「高度前面保護デブリ・デフレクター(AFP)」を発表。5月11日のインディカーGPより実戦投入した。

エアロスクリーンの開発に際しては、2019年2月13日に初めてドライバーミーティングで提案され、同年4月3日よりRBATによるデザインプロセスがスタートした。

5月24日に本プロジェクトが公に発表されると、10月2日にIMSで初のテスト走行が行われた。その後11月にはバーバーとリッチモンド、そしてイタリアで実走試験が行われ、2020年2月11日と12日に行われたCOTAオープンテストで初めて全ドライバーがこれを試した。

COTAで初めてエアロスクリーンを体験した佐藤琢磨は「とても興味深い経験。凄く良かった。過去に経験した事のないドライブフィールで、コックピット内には空気が流れず、ずっと静かだったし、全体的に本当にポジティブ」と評価した

エアロスクリーン画像

エアロスクリーン前面引き
エアロスクリーン前面
インディカーマシンに搭載されたエアロスクリーン
エアロスクリーン全体像
© Getty Images for INDYCAR

2020年よりインディカー・シリーズに道入されるレッドブル・アドバンストテクノロジーズ社設計のエアロスクリーン
2020年よりインディカー・シリーズに道入されるレッドブル・アドバンストテクノロジーズ社設計のエアロスクリーン
2020年よりインディカー・シリーズに道入されるレッドブル・アドバンストテクノロジーズ社設計のエアロスクリーン
2020年よりインディカー・シリーズに道入されるレッドブル・アドバンストテクノロジーズ社設計のエアロスクリーン
© Red Bull Advanced Technologies