ピットストップ

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ピットストップとは、レース中にピットインしてタイヤ交換や燃料補給などを行うこと。ピットストップ中もレースは継続されているため、コンマ数秒が勝敗を決するモータースポーツでは、如何に迅速にピット作業を終えるかが重要となる。英:Pit Stop。

ピットストップ歴代最速記録は脅威の1.82秒

インテルラゴス・サーキットで開催された2019年のF1ブラジルGPで、レッドブル・ホンダが打ち立てた世界記録は驚異の1.82秒。ミルトンキーンズのチームは同じ年のドイツGPで1.88秒でレコードを塗り替えていたが、自らが保持する記録を更に100分の6秒縮めてみせた。

ブラジルGP決勝21周目、ルイス・ハミルトンのアンダーカット妨害のためにピットへと入ったマックス・フェルスタッペン。クルー達は僅か1.82秒という静止時間内に、4輪全てのソフトタイヤを取り外し、これを新品ソフトへと付け替えた。フェルスタッペンはこのレースで今シーズン3勝目を達成した。

強豪レッドブル・レーシングは伝統的にピットワークに定評がある。4つのタイヤ全てを交換し終えるまでの時間が僅か2秒以下。この水準のタイムが偶然や努力だけで達成できるわけもなく、ピットストップに関わるあらゆる要素が高度に最適化された結果と言える。

ピットストップ賞

F1は2015年に「DHL最速ピットストップ賞(英:DHL Fastest Pit Stop Award)」なる賞を新たに設立した。本アワードではグランプリ毎にピットストップ時間での順位を決して、年間を通してのランキングを集計。チーム別の選手権を開催するものだ。レッドブルは2018年と2019年にニ連覇を達成している。

コンストラクター シャシー 最速ピットストップ数 ポイント
2015 フェラーリ SF15-T 7
2016 ウィリアムズ FW38 14
2017 メルセデス W08 EQ Power+ 6 472
2018 レッドブル RB14 5 466
2019 レッドブル RB15 9 504

無重力空間でのピットストップ作業

レッドブル・レーシングは過去に、世界で最も標高の高い場所にあるマーシミク峠や、湖面海抜が世界で最も低い死海脇の公道にショーカーを持ち込み走らせるなど、様々な挑戦を行ってきたが、2019年に「ZERO GRAVITY PIT STOP」と銘打った無重力状態でのピットストップ作業にチャレンジ。世界初の挑戦を無事に成功させた。

無重力状態でのピットストップ作業に挑戦するレッドブル・レーシングのプロジェクト「ZERO GRAVITY PIT STOP」に参加した10名のクルーとイリューシン76
© Getty Images / Red Bull Content Pool

無重力状態でのピットストップ作業に挑戦するレッドブル・レーシングのプロジェクト「ZERO GRAVITY PIT STOP」での実際の交換シーン
© Getty Images / Red Bull Content Pool

宇宙飛行士の訓練用の大型ジェット「イリューシン76」に2005年型F1マシン「RB1」を持ち込み、高度33,000フィート(約10km)でのピットストップ作業に挑戦。プランニングには6週間が費やされた。

ロシアで宇宙開発全般を担当している国営企業のロスコスモスの支援のもと、プロジェクトメンバー達はモスクワ郊外のスターシティにあるユーリ・A・ガガーリン宇宙飛行士訓練センターで、1週間に渡る宇宙飛行士用の短期集中コースを受講した。

実際のフライトでは、45度の角度で上昇した後に弾道飛行で約22秒間の無重力状態を作り出し、放物線を描くように何度も上昇と下降を繰り返す方法が取られた。撮影ディレクターを任されたアンドレアス・ブランズは、撮影とテストのために、合計7回のフライトを実施した事を明かしている。

史上初:無重力状態でのピットストップ作業