メルセデスは何故、全ユニットではなくICEのみを交換してハミルトンを”10グリッド降格”に留めたのか?
パワーユニットに信頼性懸念を抱えるメルセデスは第16戦F1トルコGPで、ルイス・ハミルトン駆る44号車に新たなICE(内燃エンジン)とエキゾーストを搭載した。
フルコンポーネントの交換であれば最後尾スタートとなるが、年間の割り当て基数を超えたのは4基目となったICEのみで、ハミルトンには日曜のレースで10グリッド降格ペナルティが科せられる。
ICE、ターボチャージャー、MGU-K、MGU-Hを交換してイタリアGPで最後尾スタートとなったバルテリ・ボッタスとは異なり、メルセデスがハミルトンに関してICEのみの交換に留めたのは何故なのか? 2日目以降に追加で交換する計画なのだろうか?
メルセデスのエンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンはSky Sportsとのインタビューの中で、今回の交換の背景を次のように説明した。
「我々は信頼性に関するトラブル発生のリスクを考慮し、最終戦までの全レースをシミュレートしている。最も避けなければならないのは、レース中に故障してペナルティを受けるような状況だ」
「それにパワーユニットは寿命が近づくにつれて少しずつ馬力が落ちていくため、パフォーマンス面も考慮しなければならない」
パフォーマンスに影響するのはICEで、故障の可能性が最も高いのもICE。選手権争いへのダメージを最小限に抑えるためにもICEのみを交換した…という事のようで、ショブリンは「最後尾からスタートするより10グリッド降格を選んだ方が良い」と付け加えた。
とは言え、仮に予選トップタイムを記録すれば11番手スタートとなるものの、スタートタイヤはQ2最速タイムを刻んだコンパウンドとなるためレースにおける戦略的オプションが制限されてしまう恐れもある。
例えば予選結果が振るわないなど、2日目以降にICE以外のコンポーネントを交換して追加のペナルティを受ける可能性も考えられるが、ショブリンは「その可能性は低い」と語る。
「週末中にこうしたエレメントを変更しようとすると、かなり立ち入った作業になってしまう。我々はこの決定に満足している」
ショブリンは、追い抜きというものはコース特性だけでなくその週末のクルマの仕上がりやコンディションにも影響されるため、各開催地におけるオーバーテイクの容易性を判断するのは「かなり難しい」としながらも、イスタンブール・パークにおける過去の実績から「ルイスはここに多くのチャンスがあると感じていた」とも語った。
ハミルトンは2006年にイスタンブールで開催された23周のGP2レースで、一時は16番手を走行しながらも2位フィニッシュを飾っている。