シルバーストン・サーキットのピットレーンで行列を作るF1マシン、2025年F1イギリスGP
Courtesy Of McLaren

F1イギリスGP 決勝直前情報: タイヤ戦略考と天気、2件のペナ適用後のグリッド

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日本時間7月6日(日)23時にスタートを迎える2025年F1第12戦イギリスGP。ここでは、スターティング・グリッド、予選結果からの変動、そして予想されるタイヤ戦略や気象条件についてまとめる。

スターティンググリッド & 見所

アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とオリバー・ベアマン(ハース)に科されたペナルティにより、予選結果と決勝グリッドに変動が生じた。

アントネッリは、前戦オーストリアGPでのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)への衝突により3グリッド降格処分を受け、予選7番手から10番手に後退。一方、FP3で赤旗を無視したベアマンは、予選8番手ながら10グリッド降格により18番手からスタートする。

これにより、角田裕毅(レッドブル・レーシング)は11番グリッドに昇格。5戦ぶりの入賞に向けて上々の位置から決勝に挑む。

最大の注目は、Q3の最終アタックでポールをもぎ取ったフェルスタッペンと、そのすぐ後方に並ぶマクラーレン勢との戦いだ。

フェルスタッペンはダウンフォースを削ったセットアップを採用しており、直線スピードにおいて大きな優位性を誇る。そのため、後続勢がこれを交わすのは容易ではない。一方で、滑りやすいウェットコンディションに転じた場合には、逆に足元をすくわれるリスクともなり得る。また、この選択がデグラデーションにどのような影響を及ぼすかも注目される。

とは言え、予選トップ6のギャップは僅かコンマ2秒。ノリスと2列目を分け合う同郷イギリス出身のジョージ・ラッセル(メルセデス)、そして3列目に並ぶフェラーリ勢を含め、誰が勝つかは全く分からない。マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは「トップ6は極めて拮抗している。明日の展開は非常に読みにくい」と認めている。

以下は暫定スターティンググリッド。正式版との差異が発生した場合は更新される。なお、各ドライバーの予選結果からの変動も併せて記載する。

Pos No Driver Team Qualifying
1 1 M.フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1(-)
2 81 O.ピアストリ マクラーレン・メルセデス 2(-)
3 4 L.ノリス マクラーレン・メルセデス 3(-)
4 63 G.ラッセル メルセデス 4(-)
5 44 L.ハミルトン フェラーリ 5(-)
6 16 C.ルクレール フェラーリ 6(-)
7 14 F.アロンソ アストンマーチン・メルセデス 9(+2)
8 10 P.ガスリー アルピーヌ・ルノー 10(+2)
9 55 C.サインツ ウィリアムズ・メルセデス 11(+2)
10 12 A.K.アントネッリ メルセデス 7(-3)
11 22 角田裕毅 レッドブル・ホンダRBPT 12(+1)
12 6 I.ハジャー レーシングブルズ・ホンダRBPT 13(+1)
13 23 A.アルボン ウィリアムズ・メルセデス 14(+1)
14 31 E.オコン ハース・フェラーリ 15(+1)
15 30 L.ローソン レーシングブルズ・ホンダRBPT 16(+1)
16 5 G.ボルトレート ザウバー・フェラーリ 17(+1)
17 18 L.ストロール アストンマーチン・メルセデス 18(+1)
18 87 O.ベアマン ハース・フェラーリ 8(-10)
19 27 N.ヒュルケンベルグ ザウバー・フェラーリ 19(-)
20 43 F.コラピント アルピーヌ・ルノー 20(-)

レースの模様はDAZNフジテレビNEXTで完全生配信・生中継される。

タイヤ戦略:正解は1つではない

1周約85秒という全長が長いシルバーストンにおいてなお、今週末の予選では100分の1秒単位が結果を左右する接戦となった。各車のパフォーマンスが拮抗しているため、戦略がレースの勝敗を左右する可能性もある。とはいえ、戦略決定も一筋縄ではいかない。

気温が低く、タイヤのデグラデーション(摩耗)が抑えられているコンディションを踏まえ、ピレリのモータースポーツ部門責任者マリオ・イゾラは、「ミディアム→ハードの1ストップが最速」と予想。ピットインの推奨周回は「19〜25周目」と、かなりの幅を設けている。

例えば、予選Q3に進出しながらも、10グリッド降格により18番手スタートとなるベアマンのように、本来の実力に見合わないポジションからのスタートを強いられるドライバーにとっては、「ハード→ミディアムの“逆張り”1ストップ戦略」が有効となる可能性がある。第1スティントを長く引っ張ることで、上位勢のピットストップ後に空いたスペースを活用してタイムを稼ぎ、大幅なジャンプアップを図る戦略だ。

一方でイゾラは、「1ストップと2ストップの差はわずか2~3秒程度で、どちらを選ぶかは各マシンのパフォーマンスとタイヤの劣化次第」であるとも述べており、2ストップを選択するチームが現れても何ら不思議はないとの見解を示している。

2セットのミディアムを温存しているチームは存在しないため、2ストップ戦略を採る場合の選択肢は「ミディアム→ハード→ハード」あるいは「ミディアム→ハード→ソフト」が有力とされる。ただし、例えばトップ10圏内のフェルナンド・アロンソやカルロス・サインツはハードタイヤを1セットしか保持しておらず、前者を採用することはできない。

気になる天気:“変化する空”との戦いに?

日曜のシルバーストンは、雷を伴う晴れ時々雨との予報が出ており、降雨は避けられない見通しだ。ただし、午後にかけては天候が回復傾向にあるとされ、昨年同様にコンディションが目まぐるしく変化するレースとなる可能性がある。

決勝のスタート時刻である現地時間15時の降水確率は60%だが、その1時間後には20%まで急激に低下する予報となっており、スタート時はウェットでも、レース中にドライへと路面状況が推移していく展開が予想される。

こうした状況で鍵を握るのは、「どのタイミングでスリックタイヤへ切り替えるか」という判断だ。タイミングを見誤れば、大きなタイムロスやポジションダウンにつながるリスクがある一方で、的確な判断は大きなアドバンテージとなる。

また、たとえ路面がドライでも、日差しが雲に覆われれば注意が必要だ。タイヤの温度が上がらず、十分なグリップが得られなくなることで、グレイニング(表面剥離)が発生し、マシンのパフォーマンスが大きく損なわれる恐れがある。

不安定な空模様の中で迎える決勝。ドライバーの判断力とチームの戦略眼が、勝敗を大きく左右することになりそうだ。

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