
ホーナーからの約束―角田裕毅、単なるフェルスタッペンの”援護役”ではない?レッドブルは何を求め、何を求めないのか
チーム代表クリスチャン・ホーナーは、レッドブル・レーシングに昇格した角田裕毅に対し、どのような“期待”を寄せ、どのような“約束”を交わしたのか。鈴鹿日本GPでのデビュー戦を目前に控えた角田が、マックス・フェルスタッペンとの連携、チーム内での自身の役割、そしてリアム・ローソンとの関係について、率直な思いを語った。
「マックスにできる限り近づけ」ホーナーからの第一報
「最初に電話をくれたのがクリスチャン(ホーナー)でした。チームとして、そして自分に対する期待を伝えてくれました。『レッドブル・レーシングへようこそ』と歓迎してくれて、とても興奮している様子でした」
角田は4月1日、英BBC Radio 5 Liveのインタビューでこう語った。――トップチームからのオファーなどそうそうあるものではない――角田は昇格のオファーに「即答」した。そんな角田にホーナーが伝えたのは、明確なミッションだった。
「とにかく『マックスにできる限り近づけ』と言われました。レッドブルにとっては、最終的にマックス(フェルスタッペン)がドライバーズタイトルを獲得することが最優先です。彼はその実力をすでに証明していますから」
「今はチームとしてやや苦戦しているように見えるかもしれませんが、必ずマシンを改善してくるはずです」
フェルスタッペンは開幕2戦を終えた現時点で、ドライバーズ選手権において首位のランド・ノリス(マクラーレン)に8ポイント差の2位につけている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
予選前にガレージで会話を交わすマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とクリスチャン・ホーナー代表、2024年11月2日(土) F1サンパウロGP(インテルラゴス・サーキット)
必ずしもチームオーダーが発動されるわけではない
レッドブルは角田に対し、レース中の戦略を通したフェルスタッペンの援護役を望んでいるが、一方でホーナーは角田に興味深い約束をしたようだ。
「もし僕がマックスの前に立てる状況があれば、必ずしもポジションを交換し、マックスを勝たせるようなことは要求しないと約束してくれました。本当にフェアだと思います」と角田は明かした。
「もちろん、いきなりマックスに勝つことは簡単なことではありませんし、まずはクルマに慣れることが必要です。でも、今は本当に楽しみです」
鈴鹿での目標は「現実的にトップ10」
F1デビューから5シーズン目にして、ようやく掴んだレッドブルのシート。それが母国日本でのレースで実現することについて、角田は「現実味がない」と語るが、一方で鈴鹿での目標については”現実”を見据えている。
「もちろん、ポイント獲得や表彰台といったことを口にしたい気持ちはあります。でも同時に、現実的に考えると、限られたセッションでいきなり新しいクルマに乗るというのは、かなり難しいことだと思います」と角田は語る。
「なので今は、もしポイントを獲得できれば、トップ10に入れれば満足、といったところです」
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鈴鹿サーキットでの最終プラクティスを前にファンと写真を撮る角田裕毅(ビザ・キャッシュアップRBフォーミュラ1)、2024年4月6日(土) F1日本GP
フェルスタッペンとの関係性「心配していない」
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フェルスタッペンがローソンの降格に反対していたことを認めた。
角田は、フェルスタッペンとはまだ直接会話を交わしていないが、良好な関係を築ける自信があると主張した。
「かなり以前にも言ったことがあるのですが、彼はクルマの中と外では、少し振る舞いが違うと思いますし、これから築いていくことになるお互いの関係について特に心配はしていません」
「自分がやりたいことははっきりしていますし、彼のドライビングスタイルや考え方についても、ある程度わかっていると思います」
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ドライバーズパレードで観衆に手を振る角田裕毅(RBフォーミュラ1)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2024年4月7日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)
ローソンとの友情、揺れる思い
今回の昇格に伴って入れ替わりとなったローソンについても、角田は複雑な心境を語った。
ローソンに対して同情しているか?との問いに、「まだ話していません。でも、東京でのイベントなどで顔を合わせることになると思いますので、様子を見たいと思います。友情という意味では、関係が壊れたりしないといいなと思っています」と語った。
「正直に言うと、今年のはじめに少し失敗したかなと感じています。なので、おそらく以前のような関係性はもうなくなってしまったかもしれません。ジュニアカテゴリーで競い合っていたころのような友情とは、違ってきていると思います」
「ただ、それは自然なことだとも思っています。僕らは常にシートをめぐって争っていますし、それがF1という世界の現実です」
「一方で、彼が面白いヤツだということは分かっていますし、関係を良くしていく方法も自分なりに分かっているつもりなので、様子を見たいと思います。簡単なことではありませんが」
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パドックに立つリアム・ローソンと角田裕毅(共にRBフォーミュラ1)、2024年10月31日(木) F1サンパウロGP(インテルラゴス・サーキット)
ドライバーズタイトルを狙う”トップチーム”の中で、角田はどのような走りを見せ、どのように自身の立場を確立していくのか。母国鈴鹿での初陣が、その試金石となる。