
F1スペインGP:勢力図一変?前翼規制強化の影響見通し「ゲームチェンジャー」の声も
F1第9戦スペインGPは、2025年シーズンのターニングポイントとなるのだろうか。新たに導入されるフロントウイングの検査は、中盤戦に向けて勢力図を塗り替える可能性を秘めている。
昨年の論争から生まれた新規制
いわゆる“フレキシブルウイング”は、F1において新しくも古いトピックであり、昨シーズンを通じては、特にマクラーレンMCL38の合法性をめぐり、パドック内で激しい議論が交わされてきた。
空力的な負荷を受けた際にウイングが適度にたわむことで、高速域でのドラッグを軽減し、低速域と高速域との間で空力バランスを調整できるという性能上のメリットがあると考えられている。
しかしながら、この技術的グレーゾーンを付いたアプローチは、ルールの精神および公平性の観点から問題視され、FIAは今年1月、スペインGPからより厳しいフロントウイングの静的負荷テストを導入することを発表した。
静的負荷テストでは、ウイングに対して最大1000Nの下向きの荷重を2か所にかけ、そのたわみ量を測定する。
新たな規制では、フロントウイング外側の“たわみ許容値”が従来の15mmから10mmに、中央部は3mmから2mmに引き下げられる。これにより、非線形なたわみを意図的に発生させることが困難となり、高速域における空力的アドバンテージを得にくくなるとされている。
「ゲームチェンジャー」となる可能性
フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、すべてのチームがフロントウイングに何らかの修正を施す必要があると見ており、それによって車両間の相対的なパフォーマンスに、”形勢を一変させるような変化”が生じる可能性があると指摘している。
「今回のバルセロナは、パドックの誰にとっても要注目の一戦になるだろう」と、バスールは先週末のモナコGPで語った。
「少なくとも我々は、長い間この対応に取り組んできた。これは全てのチームにとって”ゲームチェンジャー”になり得る。この新たなレギュレーションが各チームに与える影響は未知数だ」
「バルセロナではこれに伴う作業に集中し、新しいフロントウイングのパフォーマンスを最大限に引き出すことを目指す」
ヴァスールの発言からは、全10チームが避けて通れない技術的課題であること、そしてフェラーリが早期からこの規制変更を見据えて準備を進めてきたことがうかがえる。
フェラーリが最も保守的
興味深いことに、メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは、規制強化により相対的に有利になる可能性があるチームの存在を示唆し、それはフェラーリとなる可能性があるとの見方を示した。
ウォルフは、「これが(勢力図に)どう影響するかについては、ハッキリしたことは分からず、注視する必要がある」としつつも、「おそらくフレキシブルウイングに関して最も保守的なアプローチを取っていたのはフェラーリだ」と分析し、「興味深い要素の一つになるだろう」と付け加えた。
慎重なレッドブル
一方で、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、この規制が持つ影響力の大きさを認めながらも、勢力図を変えるかどうかについては慎重な見方を示している。
「我々はこれから高速サーキットに戻ることになるが、そうした中でフロントウイングには実質的なレギュレーション変更が加わる。影響はゼロかもしれないが、すべてのチームに何らかの影響があることは間違いない」
「中立的に作用する可能性もあるが、それでも“影響”は確実に存在する。問題は、それが各チームにどう作用するかだ。重大な変更であるため当然、何らかの影響はでるだろう」
確実な影響、不確実な変化
3人のチーム代表の発言に共通するのは、新規制がもたらす影響の大きさを認識しつつも、その具体的な結果については予測が難しいという点だ。
ただし、全チームがフロントウイングに修正を加えることは確実と見られており、これまでの開発コンセプトや技術的哲学の違いが、スペインGP以降の競争力に直接影響を与える可能性がある。
一方で、仮に勢力図に変化が現れたとしても、それが新規制による影響なのかを即座に見極めるのは難しい。バルセロナでは例年、各チームが大幅なアップグレードを投入する傾向がある。
さらに、今季ここまで8戦中6勝を挙げ、コンストラクターズ選手権争いで独走するマクラーレンは、サーキット特性が勢力図に大きな影響を与える可能性があると見ており、高速コーナーを苦手とする自分たちは、相対的に競争力が低下する恐れがあると示唆している。
シーズンの三分の一を終えた時点で形成された、マクラーレンを筆頭とする現在の勢力図は、果たしてバルセロナで大きく変わるのか。スペインGPの金曜フリー走行から、目が離せない。