
アントネッリ「感情が先走った」―フロントロウを逃して得た教訓、若き才能が直面する”己が傾向との闘い”
2025年F1第18戦シンガポールGP予選。チームメイトのジョージ・ラッセルがポールポジションを獲得した一方、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリは4番手に終わった。わずか0.379秒の差だったが、本人にとっては大きな後悔が残る結果となった。
「感情が先走ってしまった」──予選後、アントネッリは自らの走りをそう振り返った。F1キャリア1年目、19歳の若きイタリア人ドライバーは、プレッシャーの中で自制心を保つことの難しさを痛感していた。
Q1からの波乱─ギリギリの通過劇
アントネッリの予選は序盤から波乱含みだった。高温多湿の過酷な環境を特徴とするマリーナベイ市街地コースでは、わずかなミスも許されない。
Q1では最初のアタックを中止せざるを得ず、一時はQ1敗退の危機に陥った。だが残り1周のチャンスで5番手タイムを記録し、なんとかQ2進出を果たした。
Q2でも試練は続いた。1回目のアタックはターン1〜2のトラックリミット違反により抹消された。ただ、2回目のラップではラッセルとほぼ互角のペースを発揮。3番手で通過し、フロントロウへの期待が高まった。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
マリーナベイ市街地コースを周回するアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年10月4日(土) F1シンガポールGP
Q3の落とし穴─「プッシュし過ぎた」代償
ところがQ3で状況は一変する。米専門メディア『ESPN』によると、アントネッリは自身の走りを「やや力み過ぎだった」と分析した。
「Q1とQ2はすごく調子が良かったんだけど、Q3では感情が先走ってしまい、少し肩に力が入った走りをしてしまった。少なくともフロントロウを狙えるチャンスがあると感じていたからね」
最終アタックではターン7への進入で攻めすぎた結果、タイムをロス。それを取り戻そうと焦るあまりリズムを崩し、最終的にQ2より0.112秒も遅いタイムで終えることになった。
「オーバードライブし始めて、プッシュし過ぎた結果、速度を保ちすぎた状態でコーナーに入ってしまった。あれは限界を超えていた」「すべてを正確にこなすことよりも、タイムを求めすぎてしまって、あまりにも多くのミスを犯してしまった」
データ分析でも、ほとんどのコーナーではQ2より速かったという。「すでに十分速かったのに、いくつかのコーナーでプッシュしすぎてしまい、結局すべてを台無しにしてしまった。本当に残念だ。もっと上のポテンシャルがあったのに」と悔しさをにじませた。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
ポールポジションを獲得してパルクフェルメでガッツポーズを取るジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年10月4日(土) F1シンガポールGP予選(マリーナベイ市街地コース)
若きドライバーの自己分析「興奮しすぎる傾向」
予選後のインタビューで、アントネッリは自身の課題を率直に語った。
「僕は目の前に大きなチャンスがあると、少し興奮しすぎて集中を欠いてしまう傾向があるんだ。もう少し自制して、どのコーナーで攻めるべきか、そして抑えるべきかを見極める必要があると思う」
こうした冷静な自己分析ができることは、若手ドライバーとして成長していくうえで極めて重要だ。「今日は本当にいい教訓になったと思う」と前向きに捉えるその姿勢にも、アントネッリの精神的な成熟と将来性が見て取れる。
復調の兆し─イタリアGP後の変化
6月のカナダGPで自身初のF1表彰台を獲得して以降、アントネッリは中盤戦で一時低迷していた。だがイタリアGP後に行われたチームミーティングが「目を覚ますきっかけになった」といい、前戦アゼルバイジャンGPでは4位入賞を果たすなど、復調の兆しを見せている。
今回の予選では結果こそ4番手に終わったが、速さそのものは証明できた。決勝レースでは、この「教訓」を生かした走りが期待される。感情をコントロールし、冷静に攻めどころを見極めることができれば、表彰台も十分に射程圏内だろう。
若きイタリア人ドライバーの成長は、まだ始まったばかりだ。
2025年F1シンガポールGP予選では、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポールポジションを獲得。2番手にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3番手にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が続く結果となった。
決勝レースは日本時間10月5日(日)21時にフォーメーションラップが開始され、1周4940mのマリーナベイ市街地コースを62周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。