レッドブル、メルセデスとの僅差に手応えも「マゼピン・モード」を警戒…跳馬は眼中にあらず
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、第6戦モナコGP初日でのメルセデスとギャップが予想以上に僅差であった事に驚きと手応えを感じているが、シルバーアローには「マゼピン・モード」があるとして、警戒を解こうとしない。
5月23日にモンテカルロ市街地コースで行われたフリー走行では、ピエール・ガスリーがトップを刻んだルイス・ハミルトンから0.8秒落ちの4番手、マックス・フェルスタッペンが同0.9秒落ちの6番手に並び、レースウィーク初日を締め括った。
フェルスタッペンが珍しくガスリーに先行を許したのには理由があった。セッション序盤にコースを周回していた際、路面に落ちていたデブリがマシンのエアボックスに混入。ラジエーターが破損し冷却水が漏れ出た事で、セッションの大半を失った。
再びコースに戻った時は、殆ど全てのマシンがロングランのためにコースを周回。トラフィックに阻まれ真っ当に予選シミュレーションを行う事が出来ず、トップタイムのハミルトンに対してコンマ9秒という大差がついたというわけだ。
とは言え、フェルスタッペンは午前のFP1でハミルトンに対して0.059秒差に迫る2番手タイムをマークしていた。ヘルムート・マルコは、フェルスタッペンとガスリーの潜在的なタイム差をコンマ5秒と見積もっており、リードドライバーのパフォーマンスを楽観視している。
前戦スペインGPの舞台、モンテカルロ市街地コースのセクター3は、モナコの行方を占う試金石として知られる。そこは、高い車体性能に定評のあるレッドブルが例年強さを見せつけるセクションだが、今年はメルセデスW10がライバルを圧倒。伝統のモンテカルロ戦はメルセデスの圧倒的優位が予想されていた。
「我々は、事前に予想していた以上にメルセデスに接近できている」とヘルムート・マルコ。独AutoBildのインタビューの中で、RB15の想定外のパフォーマンスに驚いた事を明かした。「最終的に、我々は彼らとのギャップをコンマ2秒程度に収められるはずだ。だが、メルセデスがいつ”マゼピンモード”を使用するかは誰にも分からない」
“マゼピンモード”なる言葉は存在しない。ヘルムート・マルコがメルセデスを皮肉るために生み出した造語だ。メルセデスはパワーユニットの出力を一時的に最大化する特別なエンジンマップ(概ね20馬力程のパワーアップが可能とみられている)を持っており、それは内々に「パーティーモード」と呼ばれている。
ロシア有数の大富豪ドミトリーを父に持つニキータ・マゼピンは、先日のバルセロナテスト2日目にメルセデスW10をドライブ。この日走行したレギュラードライバーを含む全12名を打ち下し、最速タイムを記録した。マルコはマゼピンがファステストを刻んだのは、ドライバーとしての能力が高いからではなく、メルセデスのマシンが速すぎるためだと考えていた。
マルコは「マゼピンは、望みさえすればメルセデスがどれだけの速さを絞り出せるのかを示したに過ぎない」と語り、メルセデスの圧倒的優位性を強調すると共に、「(平凡なF2ドライバーである)マゼピンがいきなりベストタイムを記録できるような状況はこのスポーツにとって良いことではない」と付け加えた。
ヘルムート・マルコに言わせれば、レッドブル・ホンダがモナコでフェラーリを恐れる必要はないようだ。「彼らが何をしていたのか私には分からないが、フェラーリはモナコでも信じられないようなタイヤのデグラデーションに苦戦してる」