メルセデス一強時代を刑期に例えるレッドブル、ホンダ提携以前の苦闘と想定外の2023年前半戦を振り返る
2014年から2020年まで続いたメルセデス一強支配についてレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は、刑期に例えてその長さを強調し、それでも自らが掲げた目標を決して見失わなかったと語った。
レッドブルはセバスチャン・ベッテルと共に2010~2013年の4年に渡って覇権を握ったが、V6ハイブリッド・ターボの導入を機にシルバーアロー王朝が到来。以降は7年に渡ってメルセデスがWタイトルを総なめにした。
ポッドキャスト「Unlapped」に出演したホーナーは「7年というのは長い…長い時間だった。犯罪を犯しても、そんなに長くは罰せられないというのに!」とかつての苦闘を振り返った。
「競争力あるポジションに戻れるようになるまで待たなければならなかった。メルセデスが勝つ姿を見続けなければならなかった」
ただ、この耐え忍ぶ事を余儀なくされた時代はレッドブルにとって、後の優位性の礎を築く上で重要だったとホーナーは指摘する。
「刺激とショックを受けたという点で非常に重要だった。連勝していた最中に、突然、チャンスがなくなったのだ」
「レースをしても成功する見込みがなかった。あれは多くの点においてチームにとって試練だった。大勢の人々にとって、当時、チームを去るのは本当に容易だっただろうと思う」
「実質的にハンディキャップを背負っていたため、勝つには恐ろしい程に研ぎ澄まさなければならなかった。当時の我々の勝利の多くは日和見的なものか、あるいはエンジンパワーが重要な役割を果たさないサーキットでのものだった」
ターニングポイントは日本のエンジンメーカーとのワークス契約だった。
ホンダはマクラーレンと決別した後、トロ・ロッソにパワーユニット一式を単独供給。翌年にレッドブルと契約を結び、撤退最終年の2021年、ルイス・ハミルトン(メルセデス)との歴史的激戦を制してマックス・フェルスタッペンがドライバーズタイトルを勝ち取った。
「だが、決して目標を見失うことはなかったし、自分たちが得意とするサーキットで毎年、勝利を収めてきた」とホーナーは語る。
「そして競争力のあるパワーユニットを手に入れた事で、メルセデスと互角に戦えるようになった」
「2021年はおそらく、F1史上最も壮絶なシーズンだったと思うが、我々はこの挑戦に向けて準備を整えていく事ができた」
フェルスタッペンは翌年に2度目のタイトルを獲得。レッドブルは9年ぶりにコンストラクターズ王座に返り咲き、今季は開幕12戦で全勝と、最強最速のRB19を以てダブルタイトル2連覇をほぼ確実なものとしている。
この展開はホーナーにとって予想だにしない驚きだった。
最終戦の最終ラップでチャンピオンシップを制した2021年と2023年を比較してホーナーは「2021年よりも今の方がよく眠れるよ! (2021年)以前には1本も白髪がなかったというのに、あのシーズンで老けてしまった」
「スプリントを含めた全てのレースで無敗のままサマーブレイクを迎えるなんて、夢にも思っていなかった」
「2月(のプレシーズンテスト)の段階で自分達のマシンが良い事は分かっていたが、フェラーリは昨年を上回るだろうと予想していたし、メルセデスがこれに加わってくるものだと思っていた」
「ライバルと比べた競争力の差は、全くの驚きだった」