レッドブル、ATR例外条項を使ってF1開発縛りを巧妙に回避か…第2進化を果たしたRB19のサイドポッド
CFD(流体解析)及び風洞でのテスト時間が最も厳しく制限されているにも関わらず、レッドブルはF1第12戦ハンガリーGPに意欲的なサイドポッドを持ち込んだ。これは空力テスト規制(ATR)の例外条項を利用した「実に賢いやり方」との指摘がある。
2021年の予算超過を経て10%減のペナルティを受けた事で、レッドブルの風洞・CFDの使用可能時間は、昨季のコンストラクターズタイトル獲得に伴う減少分と合わせてランキング7位のチームの63%しか許されていない。
にも関わらず、英国ミルトンキーンズのチームは第12戦にして早くも今季2度目となるメジャーアップグレードを持ち込んだ。興味深いことにサイドポッドが大幅に変更されるのはアゼルバイジャンに続き今シーズン2回目だ。
今回の改良は以前の進化形だ。いずれのアップグレードも吸気ダクトの縦幅をより狭く、横幅をより広げるものとなっている。
内部にラジエーターや熱交換器を格納するサイドポッドの変更はすなわち、冷却システムの変更を意味する事から、エンジニアリングに詳しいF1ジャーナリストのサム・コリンズは、レッドブルが空力テスト規制(ATR)の例外条項に目をつけたと考えている。
公式「F1 TV」の中でコリンズは「レッドブルがここでアップグレードを投じたのは本当に興味深い。彼らはルールブックを読んでいる。これが重要なポイントだ」と説明した。
「サイドポッドのダクトの変更と同時に彼らは、内部のあらゆるものを変更した。クーラー類、ラジエーター、熱交換器、パワーユニット(PU)の冷却に関連するあらゆるものが変更された」
「この点に関するレギュレーションは本当に興味深い。なぜなら、これらのパーツを変更したり、新しいラジエーターを開発したり、ボディワークの下のダクトを開発したりする場合、風洞・CFDテストの割り当てから除外されるんだ」
「つまり絶対的な自由があるという事だ。望むだけ幾らでも開発に時間を費やす事ができる」
実はレギュレーションには幾つかの例外条項が設けられており、空力測定を行わない事を条件に、熱交換器の開発のみを目的とした風洞試験などについてはATRから除外されるルールが存在する。
このルールの目的に合致しないアプローチであれば「抜け穴を突いたやり方」との非難の声が挙がる事だろうが、コリンズはレッドブルのやり方を「実に賢い」と評した。
「風洞を使ってのラジエーターやラジエーター・ダクトの開発は、パワーユニットの冷却に関連している限り許されている」とコリンズは語る。
「幾つかの制限はある。空力の測定は許されないため、それがどれだけダウンフォースを発生させるかを測定することはできないが、サイドポッドを通過する流れや温度を測定することはできる」
「それにサイドポッド全体に渡って気圧を測定できるため、彼らは新しいサイドポッドがどのように機能するかについて多くを学ぶ事ができる」
「このような方法を取ることで彼らはこの劇的なアップグレードを導入する事ができたんだ」
とは言え、サイドポッドダクトの先端周辺やアンダーカットなど、幾つかの部分についてはATRの範囲内となるため、コリンズは「彼らが風洞配分を(全く)利用していないわけではない」とも語った。
また、第二次世界大戦中にイギリスのデ・ハビランド・エアクラフト社が開発した軍用機「デ・ハビランド・モスキート」のデザインとの類似性が認められるとも述べ、レッドブルのエンジニアリングチームの見識の高さを指摘した。
予選ではアップグレードの効果らしきものは感じられなかったが、レースではフェルスタッペンが後続に33.731秒もの大差をつけトップチェッカーを受けた。
今回のRB19のアップグレードについてコリンズは、最適化を進めた場合、コンマ2秒以上のゲインをレッドブルにもたらすと予想している。