
速さの先を見据えた”未完成”、ニューウェイが明かすAMR26「三つの設計思想」
バルセロナ・シェイクダウンで関係者の視線を釘付けにした、アストンマーティン・ホンダの2026年型F1マシン「AMR26」。空力の第一人者であるエイドリアン・ニューウェイが、約10か月に及ぶ激動の開発期間を経て、新世代マシンに込めた設計思想を明かした。
バルセロナに姿を現したAMR26は、その独特な空力処理とタイトなパッケージングによって、見る者すべてに強いインパクトを与えた。だが、ニューウェイが目指したのは、見た目のアグレッシブさでも、目先の完成度でもない。
進化を前提とした”未完成”設計
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
インタビューに応じるアストンマーティンF1チームのマネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイ、2025年F1モナコGP
ニューウェイは、バルセロナテスト後に公開されたチームとのインタビューで、AMR26の設計において「開発のポテンシャル」を重視したと明かした。「我々は、開発の伸びしろが多いクルマを作ろうとした」
「限られたウインドウの中で最適化されていたとしても、開発の余地が少ないクルマは避けたかった。そこで、基礎的な設計に注力し、ウイングやボディワークといったシーズン中に変更できる要素に、意図的に開発の余地を残した」
ニューウェイによれば、先月末のバルセロナ・シェイクダウン仕様、開幕戦オーストラリアGP仕様、そして最終戦アブダビGP仕様のAMR26は、それぞれ大きく異なるものになる見通しだという。
「すべてが噛み合う」ことを重視したドライバビリティ
もう一つの重要なテーマが、ドライバーが安定して性能を引き出せるかどうかだ。
2022年から2025年にかけてのグラウンドエフェクトカーは、多くのドライバーが扱いづらさを訴えてきた。アストンのマシンもその例外ではなく、総じてドライビングが難しい傾向にあった。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
フェルナンド・アロンソが駆るアストンマーティンAMR25、2025年8月29日(金) F1オランダGP(ザントフォールト・サーキット)
ニューウェイによれば、AMR26は空力、メカニカル、車両運動性能を「個別」ではなく「全体」として成立させることを念頭に設計されている。そして、この思想はドライバビリティに対する意識にも色濃く表れている。
「この新しい技術レギュレーションの下で我々は、ランス(ストロール)とフェルナンド(アロンソ)が、安定して性能を引き出せるクルマを作ろうと取り組んでいる」
限界性能だけでなく、再現性の高いパフォーマンスを設計要件に据えた点は、AMR26の大きな特徴のひとつと言えそうだ。
極限まで詰めたパッケージングと“正解なき挑戦”
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーティン・ホンダにおけるエイドリアン・ニューウェイの処女作「AMR26」、2026年1月29日F1バルセロナ・シェイクダウン4日目(カタロニア・サーキット)
さらに技術的に注目されるのが、アストンとしては前例のない、非常にタイトなパッケージングだ。特にリア周りの処理は、ニューウェイがこれまで手がけてきたマシンを想起させるほど、極限まで詰められている。
「これほどタイトな構成は、アストンマーティンでは初めてだと思う」とニューウェイは笑う。その実現のため、メカニカルデザイナーには極めて高い要求が突きつけられた。
「彼らの仕事は楽にはならず、むしろその逆だったが、見事に応えてくれた」
もっとも、ニューウェイ自身は、この方向性が正解だと断定することはしない。「完全に新しいレギュレーションでは、誰も正解を知らない」からだ。だからこそ彼は、AMR26を完成形ではなく、進化の起点として位置づけている。
「常にオープンマインドでいることが重要だ」
ニューウェイは、こう締めくくった。