
アストンAMR26始動「最悪とも最高とも言える」ワークス化の苦悩とホンダへの信頼、わずか5周の船出を経てクラック語る
2026年3月に幕を開ける新たな時代のF1を見据えたバルセロナ・シェイクダウンの4日目、アストンマーティン「AMR26」がついにその姿を現した。ホンダ製パワーユニット(PU)を搭載し、鬼才エイドリアン・ニューウェイの思想が反映された注目のマシンは、セッション終了間際にわずか5周の走行を終えた。
走行距離は限られ、さらにコース上での停止による赤旗という波乱の初陣となった。それでも、チームのチーフ・トラックサイド・オフィサーを務めるマイク・クラックは、安堵と決意が入り混じった表情でこの瞬間を振り返った。
「最悪とも最高とも言えるシナリオ」への挑戦
アストンにとって2026年はチーム史上最大の転換点と言える。ワークス提携に基づくホンダ製PUの初搭載に加え、長年外部に依存してきたギアボックスを内製化し、シャシーとパワーユニットの双方で新たなレギュレーションに対応しなければならない。
さらに、F1史上最も偉大なデザイナーと評されるニューウェイの加入が、チームに新たな刺激と構造的な変化をもたらした。
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
本田技研工業株式会社の三部敏宏代表執行役社長とアストンマーチンF1のローレンス・ストロール会長、2023年5月24日の2026年パートナーシップ締結発表会見にて
この「特殊な状況」についてクラックは、「最悪のケースとも、最高のケースとも言える」と表現し、「ワークスチーム、ファクトリーチームへと生まれ変わるための途方もない挑戦だ」と強調する。
マシンの完成が遅れた事実は否定できない。だが、クラックは「F1は待ってくれない。少し出遅れはした。それでも、このテストに間に合わせた。それ自体は誇れることだ」と語り、現場のハードワークを称えた。
ホンダとの「新鮮な」パートナーシップ
日本のファンから大きな関心を集めるホンダとの連携について、クラックは前向きな印象を口にする。長年続いたメルセデスとの関係から新たなパートナーへと移行する過程は、まず互いを理解するところから始まったという。
「まだ始まったばかりの関係だ。お互いの名前を覚え、どう働き、何を期待し、誰が責任を持つのかを学んでいる段階だ。ただ、スタートとしては悪くなかった。お互いに笑顔もあった」
クラックはホンダの技術者たちを「真のレーサー」と評し、率直に意見を交わせる関係性を歓迎する。「彼らはとてもオープンで、議論を戦わせることができる。この関係を続けていくことが本当に楽しみだ」と、強い信頼を示した。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ガレージ内で待機するランス・ストロールのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年1月29日F1バルセロナ・シェイクダウン4日目(カタロニア・サーキット)
現場の矜持「安全に妥協はない」
初走行を担ったのはランス・ストロールだった。ガレージでは、オーナーのローレンス・ストロールやニューウェイ、そして最終日の出走を待つフェルナンド・アロンソらが、今か今かとコースインの時を待っていた。
「周囲からは『いつ準備ができるんだ?』という言葉ばかりが飛んできた」とクラックは苦笑する。だが、トラックサイドを統括する立場として、安易な判断は許されなかった。
「何よりもまず安全性と、一定の信頼性を備えていることを確認しなければならない。レギュレーションもマシンも非常に複雑だ。こうした状況で近道、つまり手抜きをすることは許されない」
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ガレージからコースに向かうランス・ストロールのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年1月29日F1バルセロナ・シェイクダウン4日目(カタロニア・サーキット)
最終日、アロンソに託される「本格テスト」
この日はインスタレーション走行、つまり初期チェックにとどまったが、最終日となる5日目は、2度のF1王者アロンソがステアリングを握り、ホンダ製PUとの統合を深めていく計画だ。
「明日は本格的に進めていく必要がある」とクラックは決意を新たにする。
「これからは周回を重ね、お互いの仕事の進め方を学び、ホンダとの統合を進め、1日を最大限に活かすことが重要だ。天候も良さそうだし、タイヤも十分にある。本当に楽しみにしている」
メルセデスを含む複数のチームが3日間の走行枠を消化し現地を後にする中、AMR26はようやく本格的なテストのスタートラインに立つ。