ニューウェイ告白、アストン・ホンダAMR26は「4か月遅れ」その裏にあった”CoreWeave風洞”

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バルセロナで行われた2026年最初の非公開テストにおいて、その際立った空力的処理が注目を集めたアストンマーティン・ホンダの2026年型F1マシン「AMR26」だが、その裏側では、開発スケジュールが極限まで圧縮された厳しい状況が続いていたことが明らかになった。

チームのマネージング・テクニカル・パートナーであり、現在はチーム代表も兼任するエイドリアン・ニューウェイは、2026年に向けた開発プロジェクトが、ライバル勢に対して「約4か月の遅れ」を抱えた状態でスタートしていたと説明した。

AMR26が初めてコース上に姿を現したのは、バルセロナテスト最終日前日の残り約1時間というタイミングだった。ライバル勢がすでに数千キロに及ぶ走行距離を積み重ねる中で、アストンは大幅な遅れを伴うシェイクダウンを余儀なくされた。

ガレージ内で待機するランス・ストロールのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年1月29日F1バルセロナ・シェイクダウン4日目(カタロニア・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ガレージ内で待機するランス・ストロールのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年1月29日F1バルセロナ・シェイクダウン4日目(カタロニア・サーキット)

空白の4ヵ月…開発遅延の真相

パドックでは、ニューウェイの徹底した作り込みへのこだわりが開発の遅れを招いたのではないかとの見方も出ていた。だが本人によれば、問題は設計/開発哲学以前に、開発そのもののスタートが大幅に遅れていた点にあったという。

2026年型マシンに関する風洞試験は2025年1月1日に解禁されていたが、アストンが実際にモデルを風洞に投入できたのは4月中旬だった。ニューウェイ自身は3月1日にはチームに合流していたものの、AMRテクノロジー・キャンパス内に新設された風洞施設の稼働を待つ必要があった。

英国シルバーストンのファクトリー内で本格稼働を開始したアストンマーチンF1チームの最新鋭の風洞 (2)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

英国シルバーストンのファクトリー内で本格稼働を開始したアストンマーチンF1チームの最新鋭の風洞

バルセロナテスト後に公開されたチームとのインタビューで、ニューウェイは「正直なところ、開発のスタートから出遅れていた。ここ10か月は本当にタイトなスケジュールで、多忙を極めていた」と明かし、「約4ヶ月間の遅れを取った」と説明した。

さらに、「ほとんど、あるいはすべてのライバルは、昨年1月初めの段階で、すでに風洞にモデルを入れていただろう」と述べ、「我々のクルマが形になったのは本当に土壇場だった。それが、バルセロナでのシェイクダウンに間に合わせるため必死だった理由だ」と付け加えた。

実際、走行距離を見ても出遅れの影響は明白だ。バルセロナテストでは、メルセデスが500周、距離にして2329kmを走破し、新規参戦のアウディを含む8チームが1000km以上を記録した。一方でアストンは、最終日を含めても合計65周にとどまり、新規参戦のキャデラックをも下回る走行距離に終わっている。

「AI×最新鋭風洞」で4か月の差を埋められるか

こうした劣勢を挽回する切り札の一つとして期待されるのが、昨年4月に稼働を開始した最新の風洞施設「CoreWeave風洞」だ。ニューウェイはこれを「F1用途としては、おそらく世界最高レベル」と評価する。

チームのスポンサー名を冠するこの風洞は、アストンの要望に沿ってゼロベースで建設されたもので、米国に本拠を置くAIクラウド企業CoreWeave社の計算資源やAI解析技術が組み込まれている。気流を可視化するPIV(粒子画像流速測定)などの高度な計測技術とAIを組み合わせることで、CFD(数値流体力学)をはじめとする他の解析手法との整合性を飛躍的に高めているという。

ニューウェイは「空力はF1における最大のパフォーマンス差別化要因だ。そのための主要な研究ツールが風洞であり、極めて重要な存在だ。我々はいま、その恩恵を受け始めている」と強調する。

アストンマーティン・ホンダは、明らかに出遅れた。ニューウェイの言う「約4ヶ月間の出遅れ」は、F1の開発競争において致命的ともいえる。だが、ニューウェイの言葉に悲観は感じられない。

稀代のF1デザイナーは、最新のデジタル技術と風洞を武器に、この約4か月のハンデをいかにして埋めていくのだろうか。また、ニューウェイの空力哲学は、新たな風洞の力を得て、さらに具現化の度合いを深めることになるだろうか。注目したい。