メルセデスAMGのトト・ウォルフ代表、2020年F1バーレーンGPにてcopyright Daimler AG

F1:ホンダPU継承計画に再び暗雲? エンジン性能調整に関する提案は「侮辱」とメルセデス、フェラーリに噛み付く

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F1第15戦バーレーンGPの週末、スクーデリア・フェラーリがF1パワーユニット(PU)の開発凍結を支持する立場に回った事で、ホンダの後任PU策に奔走していたレッドブルとアルファタウリに光明が差す事となったが、その翌日にメルセデスが「侮辱」という表現でライバルメーカーに噛み付いた。

来年6月までに2022年のエンジン供給契約がない場合でかつF1への参戦を継続する場合、レッドブルとアルファタウリは好むと好まざるとにかかわらず、ルノーかフェラーリのいずれかのエンジン供給を受けなくてはならないが、競争力を維持したい英国ミルトンキーンズのチームは、カスタマーの立場に戻る事を良しとしていない。

レッドブルはホンダのF1撤退後の最優先事項として、日本のエンジンメーカーが作り上げたPUの継続使用を掲げている。実現のためには2022年以降のエンジン開発凍結が必要となるが、ライバルメーカーが反対の立場を示した事で暗雲が漂っていた。

しかしながら、F1と国際自動車連盟(FIA)を交えて行われた会合の中で、次世代エンジンの導入が2025年へと1年前倒しされる方向が固まった事でフェラーリが賛成に転じ、レッドブルが求める2022年以降の開発凍結の道筋が見えてきた。

フェラーリのマッティア・ビノット代表は、凍結のためには”コンバージェンス・システム”、つまり性能差を収束させるような仕組みが必要だとの認識を示しているが、英Autosportによるとメルセデスのトト・ウォルフ代表は次のように述べ、こうした規制の導入は「終わりの始まり」であり、F1のDNAを破壊するものであるとして強く非難した。

「パワーユニットの性能は最大出力だけではなく、ドライバビリティ、重量、冷却といった様々な要素の集合として測られるものだ。誰にとっても適合するようなシンプルなフォーミュラなどあり得ないし、それはメルセデスが支持できる事ではない」

メルセデスは何もエンジン開発凍結そのものに反対しているわけではない。ウォルフ代表は、E10燃料(バイオ燃料を10%含む)の導入計画を取り下げる事で凍結計画を受け入れる用意があるとしている。

ただその一方で「F1は実力主義の世界」であるとして、如何なる収束メカニズムであれ性能調整を目的とするシステムには反対すると強調し、更には、パフォーマンス・ハンディキャップが導入されたドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)を引き合いに出して、性能調整はスポーツをパフォーマンス外の非競争的要素を巡るだけの争いの場に変質させてしまうとの危惧を表明した。

メルセデスはシリーズ発足当初からDTMに参戦していたものの、2018年末を以て撤退した。

ウォルフ代表が不満をあらわにするもう1つの理由は、F1エンジン開発を巡る過去の経緯にあるようだ。ウォルフ代表はライバル達が自分達の都合に合わせてコロコロ主張を変えすぎだとでも言いたげだ。

「現行レギュレーションが導入された時、かつて我々はトークンシステムを使っていたが、遅れを取り返すためにトークンの廃止を望む何名かの同僚がいたため、我々はこれに合意した」とウォルフ代表は続ける。

「そして今、彼らはコンバージェンス・システムを口にし始めた。ここ数年における彼らのエンジンのパフォーマンスの向上ぶりを見ると、正直に言ってこれはちょっとした侮辱だ」

「2018年のフェラーリ製エンジンは明らかに最もパワフルなエンジンだったし、2019年のエンジンに至っては圧倒的に抜きん出たものだった。だからこそ我々はエンジン開発の面で限界に挑戦し続けたんだ。そして今年ようやくキャッチアップが期待できるエンジンを実戦投入するに至った」

「だからこそ私は、開発という行為がもたらすものに信頼を置いている自動車メーカーが、性能バランスを取るメカニズムを求めている事が理解できないのだ」

​「公然とそんな屈辱を受け入れる者などいないはずだ」

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