ヨス・フェルスタッペンとマックス・フェルスタッペン、2020年F1バルセロナテストにて
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レッドブルの2021年型F1マシン「RB16B」とホンダ新型PUの見通し、フェルスタッペンのチームメイトに求められるもの

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2021年シーズン用のレッドブル・ホンダ「RB16B」と、「RA621H」の型式が与えられると予想されるホンダの新型F1パワーユニット、そしてマックス・フェルスタッペンのチームメイトに求められる資質について、父ヨスが見通しと見解を示した。

来季末限りでF1を去るホンダは、2022年用に開発を進めてきた新型PUを一年前倒しで投入する。レッドブルはこれを有望なチャンスと見ており、ポルティマオのアルガルベ・サーキットで開催されたポルトガルGPの週末には、来季用の新たなフロアを持ち込んでテストを行った。

107回の出走記録を持つ48歳の元F1ドライバーは、Ziggo Sportとのインタビューの中で「彼らは来年用のマシン開発のための風洞実験に慌ただしく取り組んでいる」と語りファクトリーで精力的に設計開発が進められている事を明かし、ポルトガルでのフロアテストについては「風洞で導き出されたデータを実際のトラックで検証するために行われた」と説明した。

更なるスピードの高まりが予想される2021年シーズンに向けて、F1は安全確保のためにダウンフォースを10%削減すべく、フロアの車体側後方の形状を変更して面積を減らす。見た目上は些細な違いであるが、パフォーマンスへの影響は大きく、車体全体のエアロダイナミクスを再設計する必要があるものと見られているだけに、今季中に実際のコース上でテストをしておく事は有益だ。

ヨス・フェルスタッペンはまた、宿敵を負かすために求められているのは「車体とエンジン双方の改良」であると語り、ホンダ第4期F1活動の最終作となる来季型のエンジンについては「既に今シーズン用のパワーユニットを上回る性能を発揮している」として、現行レギュレーションの最終年でもある2021年に向けて前向きな雰囲気を感じていると語った。

ただし、決して楽観視しているわけではなく慎重だ。ヨス・フェルスタッペンは「とは言え、ライバル達も同じように一生懸命に仕事に取り組んでいるため、どうなるかは実際に新車を見てみるまで分からないがね」とも述べた。

ポルトガルの翌戦としてイモラで開催された前戦エミリア・ロマーニャGPでフェルスタッペンは、右リアタイヤのバーストによって今シーズン4度目のリタイヤを喫した。ヨスは、このアクシデントについて不幸中の幸いだったと考えている。

「あれは完全に予想外の出来事だった。だが、安全な場所で起きたのが幸いだった。あれがもし4コーナー先で起こっていたとしたら、全く違う状況になっていたかもしれない。とは言え、酷い結果である事に間違いないが」

ランキングリーダーのルイス・ハミルトンはこの日、セバスチャン・ベッテルのマシンから脱落した翼端板の破片によってフロアを損傷し、1周あたりコンマ7秒程度を失っていた僚友バルテリ・ボッタスを退けて通算93勝目を上げた。

ランキング2位ボッタスとのポイント差は85、同3位のフェルスタッペンとの差は120にまで拡大し、ハミルトンは次戦トルコでミハエル・シューマッハに並ぶ7冠目を手にする可能性が高い。ヨス・フェルスタッペンは、マシンは順調に改善しているものの今シーズンのチャンスは皆無であるとして、来年のチャンピオンシップ争いに期待を抱いている。

「今シーズンはイタリアで3回、オーストリアで1回と、計4回のDNFを喫しており厳しい。シーズンの終わりも近づいている。前戦は接近できていたし、クルマも若干良くなっていたと思う。来年、レッドブルがもっと良いクルマを作り上げ、マックスがチャンピオンシップを懸けて戦えるチャンスがある事を祈っている」

ドライバーズにしろ、コンストラクターズにしろ、難攻不落のメルセデスを打ち負かして選手権を制覇するためには、競争力ある2人のドライバーが欠かせない。

ヨス・フェルスタッペンは、来季のフェルスタッペンの僚友候補がアレックス・アルボン、ニコ・ヒュルケンベルグ、セルジオ・ペレスの3名に絞られており、自身は息子と同じくヒュルケンベルグ推しである事を明かした上で、反対側のガレージに信頼の置ける速いドライバーが必要な理由を次のように説明した。

「現時点では十分とは言えず、マックスには強いチームメイトが必要だ。もしチームメイトに競争力があれば、前回のレース序盤の展開は異なるものになっていたかもしれない」

「もし彼のチームメイトがハミルトンの後ろにいて早い段階でピットインしたとすれば、戦況は異なるものになっていただろう」

イモラでのレース序盤は、ボッタス、フェルスタッペン、ハミルトンの並びで展開していた。この時のアルボンはシャルル・ルクレールの後方7番手を走行していたが、仮に4番手でハミルトンを追っていれば、アンダーカットを仕掛ける事でハミルトンにピットインを強いるカードを手にして、メルセデス陣営に揺さぶりをかける事ができたものと思われる。

ヨス・フェルスタッペンは更に「良いチームメイトがいれば、プラクティスにおいてもより良いデータを得ることができる。ドライバー毎に別のプログラムを試すことで、より多くの情報を得ることができるからね」と付け加えた。

アルボンは来季シート獲得のためにアルガルベとイモラの2戦で自身の才能を証明するようチーム側から命じられていたが、両レースで0ポイントゲームを演じる事となり厳しい状況に追い込まれている。

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはイモラでのレースを終えて、Motorsport-Totalとのインタビューの中で「候補者はマーケットに豊富にいるため焦ることはない」として、アルボンニ最終アブダビGPまでチャンスを与えると語ったが、実際のところは既にペレスとヒュルケンベルグの2択に絞り込まれていると見られる。