ダニエル・リカルド、苦悩の3年半を経て掴んだ渇望の勝利「辛い事もあったけど結局は俺、F1が好きなんだなぁって」
「レース後、何度かインタビューを受けたけど、何だかインタビュー毎に違う事を言っていたような気がする」
レッドブル在籍時の2018年のモナコGP以来、3年半ぶりに表彰台の頂点に立ったダニエル・リカルドはその高揚感と興奮から、内なる想いと感情の整理がついていなかった。
混戦模様のモンツァで1-2フィニッシュを果たすチームがあると予想していた人は殆どいなかった事だろう。それもマクラーレンともなれば尚更だろう。
オープニングラップで旧友マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)を交わしたリカルドは見事トップチェッカーを受け、2012年のブラジルGP(ジェンソン・バトン)以来となる勝利をマクラーレンにもたらした。
フェルスタッペン中心のチーム作りへと舵を切った古巣を離れて早3年。ルノーを経てマクラーレンに新天地を求めたは良いものの、MCL35Mは自身のドライビングスタイルと相性が悪く、メカニカルコンポーネントの開発が凍結されているためにクルマを自分好みの方向に振ることも難しく、リカルドは移籍組の中で誰よりもタフなシーズンを過ごしてきた。
この勝利はどれほど重要な意味を持つのか? レース後会見の中でこう問われたリカルドは「全てさ」と答えた。
「最後に優勝してから3年半が経つけど、自分自身の幸せをF1だけに求めないようにしてきたんだ。レースに勝つ事だけを自分の幸せの基準にしてしまったらそれはもうかなり惨めだろうからね」
「今はまさに、この瞬間の高揚感を感じているけど…数日後にこのインタビューを見返したら『俺、そんな事言ったっけ?』って思うんじゃないかな」
「正直に言うと、今はまだ浮かれてるんだ。でもそれはそれで構わない。はしゃぎ過ぎかな」
隣に座っていたバルテリ・ボッタスは一言「それはシャンパンのせいだね」と静かにツッコんだ。リカルドは「(笑)それも少しはあるだろうね!」と応える。
「今シーズンは落ち込む事もあったけど、心の底では信頼や信念を失ったりはしていなかった」
「ここに至るまでの道中では誰もが皆そうなんだろうと思うけど、勿論、自分自身を信じていた。厳しい状況が続いていたのは確かだけどね」
「F1というのは厄介なスポーツで、白か黒かがハッキリしないし、時には答えを見つけるのに苦労する事もあるけど、結局はコース上での仕事に真摯に向き合わなきゃならないんだと思ってる」
「毎日、何かを得よう、学ぼうって心がけていた」
「確かに今年は好きになれない日もあったけど、それは何も今年に限ったことじゃないし。今年はそんな日が多かったような気もするけど、腹立たしく思ったりはしちゃいないんだ」
「心の底ではフラストレーションを感じたり、ガックリうなだれる事もあったとは思うけど、引きずらないようにしていた」
「時にはF1に愛想を尽かす事もあるけど、結局は自分がどれだけF1を愛し、そして望んでいるのかに気づくんだ。それが今週末の一番の収穫かな」
「それに、表彰台を懸けて戦えるチャンスがある事が分かった。願っていた場所に到達出来た時に完全に自分自身を取り戻せるんじゃないかと思う」