ドイツ国旗と国際自動車連盟(FIA)の旗copyright Alfa Romeo Racing

FIA、グロージャンの事故調査計画の概要を説明…最終結果の公表は来年1月末

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F1バーレーンGPで発生したロマン・グロージャン(ハースF1チーム)のクラッシュに関して、国際自動車連盟(FIA)による本格的な調査と分析が始まった。調査結果の公表は6~8週間後と予想され、来年1月末近くになるものと見られる。

11月29日にバーレーン国際サーキットで開催されたレースの1周目では、ハースVF-20が鉄製ガードレールに激突。車体は真っ二つに分断され、グロージャンはマシン共々大きな炎に巻かれたが、脱出する際に両手の甲に火傷を負ったのみで事なきを得て、3泊4日の入院を終えて12月2日(水)午前に退院した

FIAの医療チームに肩を借りて救急車に向かうハースのロマン・グロージャン、2020年F1バーレーンGP決勝レースにて
FIAの医療チームに肩を借りて救急車に向かうハースのロマン・グロージャン / © Haas

これほどの規模はF1では数十年来であったものの死亡事故に至る事はなく、強靭なモノコックやヘイローを始めとする車体側のドライバー保護装置、強化耐火性レーシングスーツやヘルメットなど、FIAが推し進めてきた様々な安全対策の進歩がグロージャンの命を救った事は明らかだった。

世界中のサーキットで年平均30件程度の重大事故の調査を手掛けているFIAの安全部門は今後、プロモーター、ハースF1チーム、グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)など、関係者全員の協力を得て本件の調査を進めていく事になる。

FIA発表の事故調査計画によると、調査対象はヘルメット、HANS、セーフティハーネス、防護服、サバイバルセル、ヘッドレスト、車内消火システム、ヘイローなど、あらゆる安全装置に及ぶ。また、衝突時のエネルギー及び衝突軌道に対するセーフティーバリアの安全性能や、トラックマーシャル・医療チームの役割も評価される。

調査の中心となるのはデータ収集だが、例えばドライバーに向けられたハイスピードカメラは毎秒400フレームで撮影されており超スローモーション解析が可能であるなど、F1マシンには他のどの選手権よりも多くのデータ収集機器が設置されている。

車内の事故データレコーダーや、ドライバーの頭部の動きを測定するために耳の穴の中に収まるように成形された耳内加速度計からもデータが収集される。これらによって衝突時の速度や衝撃が正確に判明する事になるが、速報値では53G、時速221kmでバリアに衝突した事が明らかにされている。

FIAは調査結果の公表に6~8週間かかるとしており、来年1月末頃になる見通しだ。

収集された情報は、カートからF1、ラリー、クロスカントリーまで、世界中の事故データを蓄積しているFIAワールド・アクシデント・データベース(WADB)へと送られる。これによりFIAの研究者は、個々の事故事例を研究することができ、また、統計データを総合的に検討することで、頻発する危険因子を特定し、研究プロジェクトの優先順位をつけることが可能となる。

データの分析作業は、ジャン・トッドFIA会長が議長を務めるFIAシリアス・アクシデント研究グループ(SASG)で行われる。

この研究グループにはFIA安全部門のスタッフやスポーツ部門の責任者の他、シングルシーター、ラリー、ツーリングカー、カート、ドリフト、ドラッグレース、ヒルクライムを含むFIAの各スポーツコミッションの会長、医師、エンジニア、研究者、関係者を含む学際的なメンバーなど、モータースポーツのあらゆる分野の代表者が参加しており、事故は技術面、運用面、医学面から分析され、対策が講じられる事になる。

SASGはFIAリサーチ・ワーキング・グループ(RWG)と連携し、FIAが実施している新しい安全装置や事故調査に関する進行中の研究をピアレビューする。RWGはモータースポーツ業界に関する様々な技術者と、安全面を担当する医療専門家で構成されている。

重大事故や死亡事故に関する調査はRWGでの検討を経て、パトリック・ヘッド卿が議長を務めるFIA安全委員会の臨時会議に送られる。その後最終的な調査結果が、世界モータースポーツ評議会(WMSC)に提出される。場合によってはFIAドライバーズコミッションにも提出される。メンバーには発言権と調査プロセスへの貢献の機会が与えられている。

FIAセーフティ・ディレクターのアダム・ベイカーは次のように述べ、グロージャンの事故を教訓として安全性の更なる向上を図るために、事故そのものの厳密かつ正確な把握のために全力を注いでいくと誓った。

「我々はこの調査を非常に重大なものと捉えており、あらゆる重大事故同様に、この事故のあらゆる側面を分析すべく関係者達と協力していく所存だ。改善策を提案する前に、何が起こったのかを正確に把握するための厳格なプロセスが必要だが、F1では多くのデータを蓄積しているため、これが助けになってくれるだろう」