各チームは”前翼新規定”にどう対処した?―2025年F1スペインGPアップグレード一覧

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新たなフロントウイング剛性検査が導入された2025年F1第9戦スペインGPの週末に向けて、計7チームがこれに対応するウイングを含むさまざまなアップグレードを持ち込んだ。

アルピーヌ、メルセデス、マクラーレンの3チームは、いずれもエミリア・ロマーニャGPのFP1で新規定対応型のウイングをテスト済みとみられ、今大会では新しいウイングの投入はなかった。マクラーレンに関しては、空力アップグレード自体を一切導入していない。

対応方法はチームごとに異なる。たとえばマクラーレンはウイング形状に手を加えず、上部のエレメント間に追加のステーを設けて剛性を高める構造的改良を実施。一方、レッドブルやフェラーリはウイングの形状全体を見直し、性能向上も同時に図るアップグレードを行った。

レッドブルRB21:フロントウイング全面刷新

レッドブル・レーシングRB21に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

レッドブル・レーシングRB21に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

レッドブルは、フロントウイングの第1・2エレメントの断面形状を改良。加えて、フラップおよびその先端部、外側のアジャスターに至るまで変更を加えた。

その目的についてレッドブルは、改定された技術規定への対応であるとした上で、「フロントウイングの形状を見直し、最小限の重量増で剛性を高めた上で、求められる荷重特性を追求する形で改良を重ねた」と説明している。

フェラーリSF-25:規制対応と合わせて空力性能を改善

スクーデリア・フェラーリSF-25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

スクーデリア・フェラーリSF-25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

フェラーリは前後ウイングの両方にアップデートを実施。フロントウイングについては検査要件への対処と合わせ、エレメント全体の負荷分布を調整。翼端板および外側のチップロールも変更した。

リアウイングは2024年型のハイダウンフォース仕様をベースに、先端部とロール形状を再設計。カタロニア・サーキットの特性に適した、局所的な空力性能の向上を狙ったものとなっている。

メルセデスW16:フロアとリアウイングの空力改善

メルセデスW16に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

メルセデスW16に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

メルセデスは、フロアエッジやフロアフェンスの形状変更、さらにリアウイングの再設計を通じて空力効率の向上を図った。

フロアには整流フィンを追加してダウンフォース生成を強化。リアウイングは反りを強めることで、ダウンフォースを維持しつつ空気抵抗(ドラッグ)とのバランスを最適化した設計となっている。

アストンマーチンAMR25:先端部のディテールを調整

アストンマーチンAMR25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

アストンマーチンAMR25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

アストンマーチンは、フロントウイングのエレメントと翼端板との間にある先端部のディテールを変更。これには、外側の気流をスムーズに流すことで、その部分のダウンフォースを強化する狙いがある。

レーシング・ブルズVCARB02:中央部に焦点を当てた改良

レーシング・ブルズVCARB 02に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

レーシング・ブルズVCARB 02に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

レーシング・ブルズは検査要件への対応と並行して、ウイング中央部の荷重を外側部に対して相対的に増加させた。この変更に合わせて、下面の高さが引き上げられた新設計のノーズを採用し、アンダーフロアへの空気流入を改善。翼端板との接合部にも手を加えた。

ウィリアムズFW47:冷却性能と空力効率を改善

ウィリアムズFW47に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

ウィリアムズFW47に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

ウィリアムズは、フロントウイングの後方フラップおよび翼端板の形状を見直し、新たな規定に対応するとともに、フロントブレーキダクトおよびフロア前方への気流を調整。冷却性能と空力効率の向上を狙った。

また、バルセロナ特有の高いブレーキ負荷に対応するため、リアブレーキダクトの排気形状も変更。最大冷却構成となる新型ルーバーパネルも投入した。

サウバーC45:アンダーフロア構造を改良

ザウバーC45に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

ザウバーC45に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

サウバーは、フロントウイングのメインプレーンと翼端板の接合部を改良し、ウイング外側の空力性能と効率の改善を図った。

あわせて、フロアフェンス、フロアエッジ、ディフューザーといった床下構造にもアップデートを施し、エンジンカバーも変更。これにより、アンダーフロアでの気流の一貫性と空力的バランスの向上を狙った。

ハースVF-25:最小限の形状変更で新規定に適合

ハースVF-25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)copyright Formula1 Data

ハースVF-25に投入された空力アップグレード箇所、2025年5月30日F1スペインGP初日(カタロニア・サーキット)

ハースは、フロントウイング全体の構造を見直し、新たな剛性基準への適合を主眼に設計変更を実施。幾何学的な変更は最小限にとどめた。

チーム代表の小松礼雄は、ハースは従来からウイングの柔軟性をそれほど活用していなかったと説明している。

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