オーバーテイク少なく予選で全てが決してしまうF1…2020年まで改善の見込み薄
F1のモータースポーツ部門を統括するロス・ブラウンは、オーバーテイクが難しく予選で全てが決まってしまう昨今の悪しきトレンドは、2020年まで改善の見込みがほぼない事を明らかにした。近年のフォーミュラ1は、コース上での迫力ある追い抜きシーンが減少している。
追い抜き改善策、功を奏さず…
オーバーテイクを容易にすべく、F1は3月25日に行われた開幕オーストラリアGPに3番目のDRSゾーンを追加。だがその効果は限定的で、DRSを使用したオーバーテイクは昨年と同じ僅か3回に留まった。コース上での純粋な追い抜きは計15回、その内の10回は追い抜きが容易いオープニングラップにカウントされており、2周目以降は僅か5回しか記録されなかった。
レースを終えたマックス・フェルスタッペン(Red Bull)は「モナコGPのような感じだった。(前の車より)1から1.5秒速く走れたとしても抜けないだろうね。僕が視聴者だったとしたらテレビを消しただろうね」と語り、追い抜けない今のF1に皮肉を述べた。
対策チーム発足も、抜本的解決は2021年以降
この問題の解決に向けて、F1は専門のワーキンググループを立ち上げ、風洞施設とCFD(計算流体力学)を用いたエアロダイナミクスの研究を行っている。オーバーテイク増加のためには前走マシンに接近する事が必要となるが、現代のF1マシンはダウンフォースが著しく増加、後方に向かってタービュランス(乱流)が発生するため、近づく事すらままならない。
ブラウンは継続的にこの問題に対処していくことを明言しているが、問題解決のためにはマシンデザインの大きな変化が必要であり、それが実現するのはレギュレーションの兼ね合いから早くとも2021年以降となるとの認識を示した。
「問題解決のためには構造的なアプローチが必要であり、それが可能となるまでは殆ど何もできない。我々は2021年シーズンにドライバー達がガチンコ勝負できるようなマシンを走らせる、という目標をFIAやF1チームの面々と共有している」
オーバーテイクが減少している大きな原因は、昨年改定されたレギュレーションにある。ワイド・アンド・ローのマシンデザインが導入された事でダウンフォースが増加、コーナーリング中のタービュランスが増え先行マシンに追従するのが難しくなった。幅が広くなったタイヤはブレーキング力を増加させ、ディフェンスしやすい状況を生み出した。
過去最高のオーバーテイク数を記録するIndycar
F1がオーバーテイク問題に悩む一方で、ファンのエンゲージメントを軸に据える米インディカー・シリーズでは、今年の開幕セントピーターズバーグで1レース中に366回ものオーバーテイクが記録された。その要因は全車共通のエアロパッケージの導入。追い抜きの阻害要因となる乱流を抑制、総ダウンフォース量を2割近く下げるマシンデザインを導入することでこれを成し遂げた。
2017年にF1で記録されたオーバーテイク回数はシーズン全体で435回、1レース辺りに換算すると僅かに22回程しかない。