決勝レーススタート前のアルバート・パーク・サーキットのグリッドの様子、2019年F1オーストラリアGPcopyright Pirelli & C. S.p.A.

更なるカレンダー再編必至か…オーストラリアGPが示したF1グランプリ開催延期あるいは中止のフラグ

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舞台となるアルバート・パーク・サーキットが通常よりも多くの準備期間を要する仮設トラックである事、そして、物流上の問題が生じるフライアウェイ戦であった事がF1オーストラリアGPの延期の背景の一つである事は確かだが、最大の理由はこれら2点ではなかった。

メルボルンでのレースは例年、シーズンの開幕戦として親しまれてきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で2021年のF1カレンダーは改定され、オーストラリアGPは11月21日に延期となり、代わりに3月28日のバーレーンGPがシーズン開幕戦の大役を担う事となった。

昨年のF1は混乱の中にあって17ラウンドを消化した。だが、アジアやアメリカといったヨーロッパ以外の”フライアウェイ”は全面的に中止となり、オーストリアやイギリスでは2週連続で同一会場にてイベントが行われた。

F1の収益は大きな打撃を受け、マクラーレンやウィリアムズの株式売却に象徴されるように、分配金やスポンサーシップマネーの減少によって小規模チームの財政が悪化した。そのためF1は今年、多くのホスティングマネーが見込めるアゼルバイジャンやシンガポールなどの海外戦を復活させ、史上最多となる23戦の開催に全力を傾けているが状況は芳しくない。

ワクチン開発のニュースが紙面を賑わすもののウイルスが弱毒化したわけでもなく、COVID-19の世界的流行は変異種の発生により第2段階へと突入し、世界的な収束の見通しは立っていない。今季のF1世界選手権もまた昨年同様に再編の繰り返しとなる可能性があるが、オーストラリアGPの延期は中止あるいは延期を示唆する一つのフラグの存在を明らかにした。

オーストラリア・ビクトリア州のマーティン・パクラ観光スポーツ大臣は延期の理由として、14日間の自己隔離期間を挙げた。豪州政府は昨年3月以降、国外からの渡航者全員に対して到着空港の所在都市のホテル等での14日間の自己隔離を義務付け、更には1週間あたりの入国上限人数を設けるなど水際対策に全力を注いでいる。

テニスの全豪オープンは2月8日(月)に開幕を迎える予定であり、必ずしも大規模スポーツイベントの全てが危機に晒されているわけではないが、マーティン・パクラ大臣は「テニスは(選手並びにスタッフに対する14日間の検疫が)可能であったが、F1ではそれは不可能だった」と説明した。

「(テニスに関しては)ビクトリア州政府、英連邦、テニス・オーストラリア、ATP、WTAとの話し合いにおいて、14日間の検疫が第一条件であることを明確にした。その上で彼らはこれを実施できる準備を整えた」

数が抑えられているとは言え、F1では1200人を超える国際色豊かなスタッフとチーム関係者が一斉にホスト国に訪れる事になる。

これ程の数の人間が2週間に渡って自己隔離を行うには滞在先の問題が発生する。更には決勝レースの概ね3週間前には現地入りしなければならない事を意味するため、この間に状況が悪化し開催が不可能となれば徒労でしかない。各国で定められる自己隔離期間は14日間が相場だ。

F1チームの大部分は新型肺炎の感染率が最も高い国の一つであるイギリスに拠点を置いている。英国での感染者は累計300万人以上に達し、感染症の流行によって死亡者がどの程度増加したかを示す昨年の超過死亡数は8万5000人を超え、過去75年における最大を記録した。こうした状況も今後のカレンダーに影響を及ぼし得る。

開催1ヶ月前になっても渡航者に対する自己隔離措置が解除される見込みがない場合、かなりの確率でそのグランプリは延期あるいは中止を強いられると見て良いだろう。

日本政府は昨日13日(水)、外国人の入国を全面停止とする方針を明らかにした。これが夏明けまで中断なく継続される事はないであろうものの、10月10日の鈴鹿F1日本グランプリが予定通りに開催される保証は何処にもない。

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