ピエール・ガスリー、八郷隆弘社長、フランツ・トスト、ブレンドン・ハートレー
Courtesy Of Honda

惨敗トロロッソ・ホンダ、初陣で厳しい現実も、前を向き次戦見据える / F1オーストラリアGP 総括

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レッドブル・トロロッソ・ホンダ(Red Bull Toro Rosso Honda)の初陣となった2018年F1開幕オーストラリアGPは、生まれたての日伊合同チームに厳しい現実を突きつけた。

レースに先立って開催された24日の公式予選、ブレンドン・ハートレーは0.029秒という僅差ながらもQ1敗退を喫し、ピエール・ガスリーは攻め過ぎた結果グラベルの餌食に。結果、16番グリッドと20番グリッド最後尾という険しい位置からレースに臨む事になった。

ただし、ハートレーと最終Q3進出を果たし8番グリッドとなったニコ・ヒュルケンベルグ(Renault)とのギャップはジャスト1秒。中団勢はほんの僅かの差が大きな違いを生む大接戦、マシン性能もさることながら、ミスによってチャンスを棒に振った部分が大きい。急激な改善傾向を示す路面状況は、事実上のルーキーである両ドライバーにとってより一層難しい状況を生み出した。

天候は曇り、気温24℃、路面温度39℃のドライコンディションの中、メルボルンのアルバート・パーク・サーキットで開催された開幕戦。レースは現地午後4時10分にスタートした。

エンジントラブルに涙を飲んだガスリー

トロロッソ・ホンダSTR13の2台、2018年F1オーストラリアGPアルバート・パーク・サーキットにて
© Getty Images / Red Bull Content Pool

最後尾スタートのガスリーは、オープニングラップでシャルル・ルクレール(Sauber)とセルゲイ・シロトキン(Williams)を抜き去り17番手にポジションを上げた。その後、マーカス・エリクソン(Sauber)がパワステのトラブルによってリタイヤした事で、6周目に16番手につけた。

悲劇が起きたのは13周目。シケインで縁石に乗り上げた直後、マシンのリアから白煙が上がりそのままピットイン、マシンを降りた。ホンダF1の田辺テクニカル・ディレクターによれば、MGU-Hのトラブルであるという。ホンダの熱エネルギー回生システムは何らかの理由によって故障、第2戦バーレーンGPに向け日本のさくらで詳しい解析が行われる。

エンジントラブルでリタイヤするまでのガスリーのペースはさほど悪いものではなかった。ハースやルノーとは明らかな差があったものの、5位フィニッシュしたマクラーレンやフォース・インディア勢と遜色ないペースを刻んでいた。

1周目に全てが終わったハートレー

2018年オーストラリアGP決勝レースを走るトロロッソ・ホンダのブレンドン・ハートレー
© Honda、28号車のブレンドン・ハートレー

16番グリッドスタートのハートレーは、ブラックアウト直後の1コーナーへのブレーキングの際、派手にタイヤをロックアップさせ開始早々に急遽ピットイン。曰く、キャリアの中で最も大きなフラットスポットという程に酷いものであったという。

1周走っただけのウルトラソフトからソフトへと履き替えたハートレー。この時点でハートレーのレースはほぼ終了となったが、追い打ちをかけるように今度はパンクに見舞われた。

本来であれば40周近くまで引っ張れっるはずのソフトが僅か21周で履き替えを強いられ、ライバル勢が軒並み1ストップであったにも関わらず2度のピットストップを余儀なくされた。ハートレーのレースはチェッカーフラッグ前に既に終わっていた。

にも関わらず、ガレージのクルー達のモチベーションは高かった。勝負が決した後の2回目のピットストップの時でさえ、マクラーレン勢やルノー勢よりも速い22.296秒というタイムでタイヤ交換を終えてみせた。

見えてきた?トロロッソ・ホンダの実力

アルバート・パーク・サーキットは半分が市街地、半分がパーマネントコースという些か特殊なトラックである事もあり、これだけ接近しているミッドフィールドの勢力図を初戦のみで正確に描く事は不可能だ。

だが、強いて言えば見た目のリザルト程実際のトロロッソ・ホンダのパフォーマンスは悪くない。ショートラン、ロングラン共にウィリアムズやザウバーを超えるだけのポテンシャルは感じられる。だが、やむを得ない事ではあるもののドライバーはまだまだ学習途中であり、車体もエンジンチェンジに伴う間に合わせの状態に過ぎない。

固い握手を交わす八郷ホンダ社長とフランツ・トスト代表、2018年F1オーストラリアGP決勝にて
© Honda、固い握手を交わす八郷社長とフランツ・トスト代表

気になるのはリザルトよりもMGU-Hのトラブルだ。昨年再三に渡ってホンダを苦しめてきた鬼門であるだけに、早期の原因究明と対策が求められる。ましてや今年は年間3基までに交換が制限されている。初戦で故障など許されない。決勝当日はホンダの八郷隆弘社長も現地入り。トップの目の前でのエンジントラブルであるだけに、ホンダのスタッフ達の心境が思いやられる。

先を見据えるトスト代表とガスリー

不遇なトラブルによってレースを終えたガスリーは落胆を隠さなかったものの「最初のレースでのトラブルだけに、チームの誰もががっかりしてるはず。でも、バーレーンGPで挽回するためにも前を向き、今回の問題から学ばないとね」と前向きな姿勢をみせた。

ガスリーと同じ様にトストもまた「残念な週末。だが引きずっているわけにはいかない。バーレーンで好結果を残すためには、やるべきことが山のようにある」と述べ、チーム全体に建設的な態度を促した。

トロロッソ・ホンダの見所はシーズンを通して何処まで追い上げられるかに尽きる。ホンダもトロ・ロッソも早期の成果を目指してはおらず、シーズン終盤に中団勢のトップに躍り出る事を目標に計画を立てている。次戦は4月6日(金)~8日(日)、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される。果たしてどれだけ改善できるだろうか?

チーム首脳陣のコメント

田辺 豊治ホンダF1現場責任者

ガスリー選手がMGU-Hの問題により、14周目でリタイアする形になった事は非常に残念です。これからさくらのファクトリーで詳細を分析し、第2戦に向けて再発防止のための対策を打ちたいと考えています。

ハートレー選手についてはスタート直後にタイヤにフラットスポットを作ったため、ピットインせざるを得ませんでした。粘り強い走りを続けてくれましたが、残念ながら前を走るマシンを捉えるには至りませんでした。

非常に厳しいシーズン幕開けになってしまいましたが、前を向いて戦うしかありません。休むことなく、チームと一緒に次戦に向けた準備を進めます。

フランツ・トストチーム代表

バルセロナでのテストが成功裏に終わった事もあり、メルボルンでの開幕戦では良い結果を期待していたが、さまざまな要因が重なり残念な結果となってしまった。タイヤの性能評価したり、適切なセットアップを探るためにはドライコンディションで走行しておきたいところだったが、土曜のFP3は生憎の雨となってしまい、我々の助けにならなかった。

予選ではブレンドンが良い仕事をしてくれたが、ピエールはターン3でのミスがありグリッド後方からのスタートとなってしまった。決勝では、ピエールが好スタートを決めポジションを上げたが、不運にもパワーユニットの問題でリタイアする事になった。ブレンドンは最初のブレーキングでフロントタイヤをロックさせフラットスポットを作ってしまったため、タイヤを交換するためにピットインさせる必要があった。その後は最後尾を走るだけのレースとなってしまった。

残念な週末となったが、これを引きずっているわけにはいかない。バーレーンで好結果を残すためには、やるべきことが山のようにある。

ドライバーコメント

ブレンドン・ハートレー決勝: 15位, グリッド: 16位

今日は良いレースだったとは言えない。スタート直後のターン1でブレーキをロックさせてしまい、タイヤにフラットスポットを作ってしまった。ピットインする以外に選択肢はなかったよ。あれは多分僕がこれまでに経験した中で一番酷いフラットスポットだったと思う。

その後の第二スティントではタイヤがパンクしてしまい、ポイント争いへの戦いは終わってしまった。この影響でマシン後部に少しダメージを負ってしまい、ずっと単独走行する形になってしまった。今日はポイントが得られる日ではなかったんだろうね。

ピエール・ガスリー決勝: リタイヤ, グリッド: 20位

僕にとっては最高のシーズン開幕戦とならなかった。ターン12で急にエンジンが止まり、その後また始動したもののスロー走行しかできず、シフトアップできなくなったんだ。なんとかピットへ戻ったけど、マシンを停めるように言われた。テストの時は何も問題がなかっただけに残念だよ。

最初のレースでトラブルが出てしまったんだから、チームの誰もががっかりしているはずさ。でもバーレーンGPで挽回するためにも前を向き今回の問題から学ばないとね。

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