アストンマーチンF1チームのグループCEO兼チーム代表を務めるアンディ・カウエルとフェルナンド・アロンソ、2025年2月18日F1シーズンローンチイベント
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

名将カウエルが語るホンダとの提携と成功の鍵―2026年F1新時代への展望

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F1のエンジンおよび車体レギュレーションが刷新される2026年に向け、各チームの準備が本格化する中、アストンマーチンの新チーム代表に就任したアンディ・カウエルの手腕に注目しない関係者はいないだろう。

カウエルは、現行のV6ハイブリッドターボエンジンが導入された2014年のF1大改革において、”奇跡のエンジン”と称されたメルセデス製パワーユニットを開発し、その後のメルセデスの圧倒的な成功を支えた技術者だ。しかし、今回は技術者としてではなく、チーム全体を率いるチーム代表としての挑戦となる。

メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズのマネージング・ディレクターを務めるアンディ・カウエルCourtesy Of Daimler AG

メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズのマネージング・ディレクターを務めるアンディ・カウエル

2014年と2026年の違い

「レギュレーションが変わる時、それは競争力を高めるチャンスでもある。いわばリセットのようなものだ」

独Motorsport-Totalによるとカウエルはそう語ったが、同時に2014年と2026年の改革を同列に語るのは早計だと警鐘を鳴らした。

「2013年から2014年の変化は極めて劇的だった。自然吸気エンジンから、MGU-HとMGU-Kを備えた直噴ターボエンジンへと完全に切り替わったためだ。適応できなければ、戦うことすらできなかった」

一方で、2026年の変更は「進化」であり、「革命」ではないと指摘する。

「今回はMGU-Hが廃止されるが、その影響でターボラグが大きくなる。加えて、より大容量のバッテリー、強力な電動モーター、燃料流量制限の厳格化が導入される。しかし、基本的には現在のハイブリッド技術の延長線上にある」

そのため、カウエルは「2014年ほどの劇的な変化にはならないかもしれない」としつつも、「もしかすると私はこの変化を過小評価しているかもしれない」と慎重な姿勢を見せる。

「エンジン規則の変更に加え、空力とタイヤ規則の変更もあるため、予測以上にグリッド全体のパフォーマンス差が生まれる可能性もある」

ホンダとの提携とその可能性

アラムコの製品・顧客担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるヤッセール・マフティ、アストンマーチンF1チームのエグゼクティブチェアマンを務めるローレンス・ストロール、HRC(ホンダ)の渡辺康治代表取締役社長、バルボリンのジャマル・ミュアシャーCEO、2024年9月3日 (1)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

アラムコの製品・顧客担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるヤッセール・マフティ、アストンマーチンF1チームのエグゼクティブチェアマンを務めるローレンス・ストロール、HRC(ホンダ)の渡辺康治代表取締役社長、バルボリンのジャマル・ミュアシャーCEO、2024年9月3日

2026年からアストンはホンダのワークスエンジンを搭載することが決定している。ホンダは近年、レッドブルとの提携により数多くの勝利とタイトルを獲得しており、その競争力はすでに証明済みだ。カウエルはホンダの実力を高く評価している。

「ホンダの実力は疑いようがない。過去数年の勝利とタイトルの数を見れば、それは明らかだ。実際、最近ではメルセデスを超える勝利数を記録している。敬意を表したい」とカウエルは語った。

すでにカウエルは、栃木県さくら市にあるHRC Sakuraを訪れ、「彼らの情熱、創造力、そして優れた設備に感銘を受けた」という。自身がエンジン技術に精通しているからこそ、「ホンダの立場を理解し、シルバーストンのエンジニアチームとさくらのファクトリーとのスムーズな連携を築くことが自分の役割の一つ」と強調する。

カウエルは、自身の役割を「ブリッジビルダー(橋渡し役)」と定義し、エンジニアリング部門と他部門の連携を強化することに重点を置く。

「私は現在、レーシングカー開発の全体像を学び続けている。パワーユニット開発の経験があるからこそ、異なる視点を持つチーム同士をつなぐことができる」とカウエルは語る。

ガレージ内でランス・ストロールと話をするアストンマーチンF1チームのグループCEO兼チーム代表を務めるアンディ・カウエル、2025年2月26日F1プレシーズンテストCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ガレージ内でランス・ストロールと話をするアストンマーチンF1チームのグループCEO兼チーム代表を務めるアンディ・カウエル、2025年2月26日F1プレシーズンテスト

アストンが2026年以降、ホンダと共に成功するためには何が必要なのだろうか?カウエルの答えは明快だ。

「各システムを最大限に効率化することが重要だ。効率を極限まで追求すれば、結果としてストップウォッチが答えを出してくれる。それが、我々をチームとして、そして組織として突き動かす原動力になる」

F1の歴史において、技術革新とレギュレーション変更は常にチーム間の勢力図を変えてきた。カウエルが指揮するアストンとホンダのタッグは、2026年の新時代においてどのような成果を生み出すのだろうか。

アストンマーチンAMR25をドライブするフェルナンド・アロンソ、2025年2月27日F1プレシーズンテストCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンAMR25をドライブするフェルナンド・アロンソ、2025年2月27日F1プレシーズンテスト