マイアミ・インターナショナル・オートドロームを周回する周冠宇(ザウバー)、2024年5月4日F1マイアミGP
Courtesy Of Sauber Motorsport AG

僅か「1km/h」が決定的な違いに…コロコロ変わるF1マイアミ序列の謎、要因は何処に?

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ダニエル・リカルドやランド・ノリスのパフォーマンスが顕著だが、2024年のF1マイアミGPは各チーム、ドライバーの競争力がセッション毎にコロコロと変わり一貫性がない。その理由は何処にあるのだろうか?

初日はスプリント予選でこの現状が如実に表れた。アップグレードされたマクラーレンを駆るノリスは最初の2つのラウンドでトップ通過を果たすもSQ3では9番手に留まり、リカルドはセンセーショナルな4番手を刻んだが、翌日のグランプリ予選ではQ1敗退を喫した。

また、アストンマーチンはFP1でランス・ストロールが5番手をマークし、続くスプリント予選では2台揃ってSQ3進出を果たしたものの、2日目には突然競争力を失い、グランプリ予選ではダブルQ2敗退に終わった。

失意の予選を終えたリカルドは、SQ3でのノリスに触れて「ラップの序盤からあちこちでリアをスライドさせ、かなり苦しんでいる様子があった」と振り返り、自身も同じように、アウトラップで慎重にタイヤを扱ったものの、計測ラップの最初からクルマが滑っていたと明かして「奇妙だ」と首を傾げた。

謎めいた不安定な状況が支配する中、最も上手く対処したのは、全セッションで最速を刻み、スプリントを制したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だが、それでも他のドライバー達と同じように悪戦苦闘を強いられ、全く楽しめなかったと言う。

「全てが上手くいくようなラップをまとめ上げるのが、とんでもなく難しい状況で、何らかの理由で1ラップを通してタイヤを機能させるのが本当に難しいんだ」とフェルスタッペンは説明する。

「例えばそうだね、時々、あちこちで僅かにクルマを失うような瞬間があって、一貫性がないおかげで、全てのラップで予想しながら走らなきゃならない」

「本当にイライラするというか、ドライブしていても全然楽しくないんだ。でも原因についてはハッキリとは言えない。前の周と同じように走っても、コーナーを抜けると突然、コンマ1秒を失うような状況だ」

ポールシッターとして予選後のプレスカンファレンスに出席するマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2024年5月4日(土) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ポールシッターとして予選後のプレスカンファレンスに出席するマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2024年5月4日(土) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

開幕6戦連続となるマイアミでのフェルスタッペンのポールタイムは昨年のポールタイムより遅かった。路面の不安定性が悪化しているのだろうか?

「いや、僕はそうは思わない。今週末はかなり暑い。ここはかなり滑りやすいコースだし、色んな要素が合わさってタイヤが上手く機能せず、酷くトリッキーになってるんじゃないかな」

2番手タイムを刻んだシャルル・ルクレール(フェラーリ)も「ラップをまとめ上げるのが本当に大変だ。特にセクター2でのタイヤがかなり不安定でね。それに、どうなるのか本当に予想がつかないコーナーもかなりある」とフェルスタッペンに同意した。

ノリスはフェルスタッペンやルクレールと同じように、いとも簡単にタイムを失ってしまうという点に関しては同じ意見を持っているが、その理由についてはある程度、確信を持っているようだ。

「コーナーに向かって1~2km/h余計にプッシュするかどうかが、限界ギリギリと限界を超えるかの分かれ目になっていて、これを超えてしまうと一気にかなりのタイムを失ってしまう」とノリスは語る。

「だからコーナーへのアプローチで、もうあと2mほどブレーキを遅らせられると思って次にそうしてみると、できない事に気づくんだ」

この繊細な状況を生み出している要因としてノリスは「路面がかなり暑いからだと思う。ターマックも一役買っているのかもね」と説明した。

スタートで先頭を走るマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2024年5月4日(土) F1マイアミGPスプリント(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

スタートで先頭を走るマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2024年5月4日(土) F1マイアミGPスプリント(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

昨年もそうだったが、今週末のマイアミの路面は酷く熱い。スプリントでは46.1~47.4℃、予選では51.0~48.7℃が記録され、初日も同じように熱く、サーマル・デグラデーションがドライバーを苦しめた。

また、マイアミ・インターナショナル・オートドロームの路面は堅牢性に欠け、レーシングライン上のみが時を経るごとに粗くなっていく傾向が強く、セルジオ・ペレス(レッドブル)は昨年、「ホイール一つでもラインを外れるとグリップが一気になくなってしまう」と指摘した。

今年は一層、路面が粗くなっている可能性が高い。路面表面の小石と小石との隙間が広がると、タイヤのゴムと路面との化学的結合力が減少する。昨年以上に路面がトリッキーだとしても驚きはない。

ミディアム制限のSQ2からソフト制限のSQ3にかけて全車のラップタイムが伸び悩んだように、3種類のコンパウンドの中でも特に一貫性がないのがソフトだ。

その反面、角田裕毅(RBフォーミュラ1)はスプリントでこのコンパウンドを履き、19周を通して一貫性あるペースを刻み続けた。

ピレリのC4コンパウンドは表面をオーバーヒートさせぬよう、アウトラップでかなり丁寧な扱いが必要となる。マイアミはレイアウト的にリアタイヤの表面が加熱しやすく、反面、タイヤの芯にまで熱を入れるのは難しい。

ユニークな路面、1時間のみのプラクティス故に最適化し切れていないセットアップやドライビング、熱いコンディションとC4タイヤ、これらの組み合わせに加えてもう1つ、風の影響を指摘する声もある。

カルロス・サインツ(フェラーリ)は「毎ラップの事だけど、風の影響でちょっとした冒険を強いられる」と述べ、ラップを通しては「滑りやすい所、タイヤがオーバーヒートしやすい所、そして風が吹き付けてくる場所」が混在しているが故に、「完璧でクリーンなラップを刻むのは殆ど不可能」であるとして、それが予選3番手に留まった理由だと説明した。

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